11.鯉
「ドラゴンの死体が見つかった。既に絶えていたようだ。もう骨ばかりらしい」
肩を落とす。
龍を、見たかった。龍は、死んでいた。
龍とて死ぬのだな。当たり前だが、そう思った。
「鯉は、いるだろうか」
「鯉とはなんだ」
「川や沼に潜む魚だ。これぐらいの」
「そんなら、いる」
イワンに従い、鯉を探す。
投網で、すぐに捕まえてくれた。
「これだろう、鯉」
「ううむ」
鯉にしては、少しでかい。
顔も違う。第一、形が細い。
鯉ではない気がするが、良かろう。
異国の地だ、鯉とする。
「なぜこいつを?」
「こいつがいずれ龍になる。少し、見たくなった」
「いや、ならんぞ」
「なる」
「ならん」
意見の相違。
が、異国の地だ。成るものも成らんことがあろう。
郷に入れば郷に従うが道理。成らんものとする。
「スープにしましょう」
マラーニャの作る吸い物は、絶品であった。
少し辛い。唐辛子だ。素直な味が際立つ。
大蒜が利いている、香草も良い。鯉の身は淡白だが、これがまた汁に合う。
鯉はこんなに美味くなかった気がするが、異国の地だ。鯉とする。
「マラーニャは料理の天才だ」
「うふふ」
マラーニャを褒める。頬を少し赤らめた。
イワンの顔も赤くなった。誇らしいのだろう。
せむぉおおりゅは相変わらず髪を引っ張る。困る。
龍は死んだ。拘る理由もなくなった。
塩も貰った。茸も教えて貰った。料理も馳走になった。
これ以上居ては、恩が大きすぎて返せなくなる。
明日、旅立とう。




