実話 幼少期の法事
これは幼かった頃の私が体験したものらしく──らしくというのは家族に後から聞かされたものなので──今も親戚中で語られている不思議な話だ。
その日、当時3才くらいの私は家族と外出した。
親戚の法事があったのだ。
父は風邪で寝込んでいて、祖父母、叔母、母でお寺へ向かった。
墓地でお参りをしていると私の姿が見えなくなったらしい。
家族が探すと、お寺の隣にある小さな公園で1人ブランコをこいでいた。
「黒い着物のおばちゃんが遊んでくれてた」
法事の参加者は公園には行っておらず、他にお墓参りしている人も見当たらない。
だが町中のお寺である。
近所の誰かしらが子供と遊んでくれていたのだろうと、家族は私を連れて帰路についた。
そこから私がずっと何かに怯えていたのだという。
聞いても答えず、こわいこわいと言うばかり。
知らない場所に来て、見慣れない風景に不安を感じているのだろうと家族は気にしなかった。
帰りに家族と親戚で日本料理屋に寄り、夕飯をとることになった。
そこでも私はしきりにこわいこわいと母に抱きついたまま離れなかったのだそうだ。
その店の壁には鬼の面や妖怪を模したらしき土産物などが飾ってあり、それを怖がっていると皆は思ったらしい。
それから家に帰ると、今度は普段寝ている2階の部屋、父が寝込んでいる部屋に絶対に行きたくないと泣きわめいたらしい。
今日はずっとどうしたのと母が聞くと、私はこう答えたのだそうだ。
「だってお寺から黒い着物のおばちゃんがずっと付いてくるんだ。車に乗ってるときは、車の外に座って(車外に浮かんでいて)いて、食べ物屋さんでも部屋のすみっこに立ってずっとこっちを見てた。家についたら、そのおばちゃんが玄関から2階に向かって階段をひゅーって飛んでいったんだよ」
すごく真っ白い顔だったと私は怖がり、階段に近づくだけで絶叫するように大泣きし、その晩は1階で母と寝ることになった。
翌日、そういったものは見えなくなっていたらしい。
法事でお墓参りをしたのは、親戚のおばさんの三回忌か七回忌だったのだ。
父は小さい頃にそのおばさんにとても可愛がられていたらしい。
わざわざうちまで来たのは、風邪で法事を欠席した父の顔を見に来たのではないか。
と、親族の間では、そういうことになっている。
以前、動画サイトの怪談に提供したこともあるエピソードです。




