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夏のホラー2022『ラジオ』

ドキドキお化け屋敷

作者: 佐藤そら

 高校の文化祭、幼馴染みの沙織のクラスは『お化け屋敷』をするらしい。

 そして、どうやらそこで使うらしい“女の子の指”を、紙粘土で作っている。

 美術が得意な沙織は、生々しい指に色付けをしていた。

 

「それ、気味悪いな」

 

「え、これ? スゴイでしょ? ちょーリアルにできた」

 

 沙織はご機嫌だった。

 

「これね、指を探している女の子に、返してあげるのよ?」

 

「そういう設定?」

 

「設定とか言わないでよ。あんたも、最近親密なあの子と来なさいよね? キャーとか言って怖がる彼女にいいとこ見せんのよ!」

 

「親密って……」

 

「夏美ちゃんだっけ? 付き合ってるんでしょ?」

 

「まさか」

 

「えー、うそ! いくじなし! あんた顔は割とイイから、夏美ちゃん幽霊の女の子に嫉妬されちゃうかもよ? 気を付けてねー!」

 


 俺は、『お化け屋敷』にあまり気が進まなかった。

 別にこういうのが苦手なわけじゃない。

 ただ、こういう設定は、何かを呼び寄せて、どこかで現実になってしまう気がするからだ。

 

 確かに『お化け屋敷』は、つり橋効果が期待できる。

 彼女と急接近できるチャンスでもある。

 そういう意味では、うってつけのスポットかもしれない。

 

 でも、沙織はそれでいいのかよ。

 お前は、嫉妬しないのかよ。

 俺が、他の誰かと付き合って……。

 

 沙織はできあがった“女の子の指”を見つめて微笑んでいる。

 こいつに、何かを期待した俺がバカなのかもしれない。

 

 

 

 文化祭当日、俺は夏美と沙織のクラスの前まで行くと、教室から泣きながら飛び出してくる女子達とすれ違った。

 

「ねぇ、ここ、そんなに怖いの……?」

 

 俺の横で、夏美が不安そうな顔をする。

 

「大丈夫だって。所詮、高校生の『お化け屋敷』だぜ?」

 

 

 入口で、俺達は“女の子の指”を手渡された。

 沙織が作っていた“アレ”だ。

 

 中に入ると、そこには薄暗い空間が広がっていた。

 

 水が滴る音がする。

 

「キャーー!!」

 

 夏美が、俺の腕にしがみついた。

 

「ど、どうした!?」

 

「今、背中に、上から水が……」

 

「水……?」

 

 近くには骨の折れたボロボロの子供の傘が転がっていた。

 そうか、この少女は、雨の日に亡くなったのか。

 

 順路を進んで行くと、突然、左右から複数の人の手が飛び出して来た。

 

「キャーー!!」

 

 彼女が、再び叫ぶ。

 俺は、彼女のその声にも驚き、二重にドキドキした。

 どおりで、恋か恐怖か分からないわけだ。

 心臓の音が自分の耳に届きそうだ。

 飛び出して来た複数の手は、俺達の持つ“女の子の指”を欲しがっているようだった。

 

 俺は、彼女を連れて足早に進む。

 踏切の音が聴こえて来た。

 床には、血のついた人形と帽子が転がっている。

 ここが、事故現場……。

 

 近くには花が手向けられており、小さなカゴが置かれている。

 そのカゴに、“女の子の指”を入れた。

 すると、閉まっていた踏切が開いた。

 ゴールは近い。

 

 ゴツン。

 急いだ俺の足が、何かを蹴った。

 

 足元でラジオが流れ始めた。

 俺が蹴ったものは、ラジカセだった。

 

 踏切音を仕込んでいたラジカセを、俺は蹴ってしまったのだろうか?

 蹴った衝撃で、どうやらラジオがついてしまったようだ。

 

 そのラジオは、ジジジっと音が歪み、ノイズ音が走った。

 そして、よく聴くとノイズ音の中に、かすかな女の声が聴こえた。

 

「ちょうだい……、指……、ちょうだい……」

 

 へっ……?

 

 俺は、彼女の手を掴むと、出口まで一気に走り切った。

 教室を飛び出し、俺は夏美に尋ねた。

 

「なぁ、あのラジオ、なんか変な声聴こえなかったか?」

 

「変な声?」

 

「いや、その、勘違いかもしれないけど……」

 

 夏美は首をかしげた。

 あれは、俺にだけ聴こえていたのだろうか?

 ふいに、俺は彼女の背中に目がいった。

 

 そして、ゾッとした。

 彼女の背中には、血がついていたのだ……。

夏のホラー2022!

『茜空に舞う』

『彼とラジオとわたしの日常』

『おばけトンネル』


他にも違うタイプのホラーを書いてみましたので、気が向いたらそちらも覗いてくださいませ。

評価、感想等お待ちしております(^^)

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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルがかわいいのに、がっつりホラー。 主人公達がおばけ屋敷を出てこれて良かったです。 読ませていただきありがとうございました!
[一言] お化け屋敷の設定が怖すぎる((((;゜Д゜)))) 企画としてはかなり面白そうですけどね(;´∀`) ラジオから声が聞こえても録音かな?って思っちゃうかも笑
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