【欠けたピースは戻らない】②
「あーあー」
俺は、あくびをしながら起き上がった。
用意をしながら、家を出る。
二人の決断を今の俺だったら、応援していたかもしれない。
でもね、11歳の俺は応援なんか出来なかったんだよ。
母親の七回忌にやってきていた、30歳の俺、宮村俊之は、父親が不倫をしていた話と母親にモラハラしていた事実を聞かされていた。
母は、俺が11歳の夏に22歳の男と不倫をしていた。
それを、本気の恋だと言った。
俺は、どちらも愛していた。
あの日から、うまく笑えないし…
あの日から、性に対する嫌悪が抜けないし…
あの日から、人を好きにもなれていないままだった。
「お母さんはね、大変やったんよ。俊ちゃんをあんなお父さんでも離したらアカンって、不倫されてても11年間耐えたんよ」
だったら、一生耐えておけばよかったんだ。
俺は、叔母さんの言葉にイライラしていた。
「モラハラやったんもんな!」
「そうそう、セックスは強要してな!」
「俊ちゃんの事は、我関せずでな!」
「自分は、他所に女作ってな」
父は、二年前に死んだ。
俺は、やっぱり母親も父親も許せなかった。
七回忌が終わった。
母親の親戚連中は、父親の悪口を言っていた。
「じゃあ、俊ちゃん。次、またね」
「はい」
叔母さんが、変わりにやってくれて助かるよ。
俺は、あの人達の死んだ後のことまで面倒みたくなかった。
「お疲れ、トッシー」
俺は、今こいつと住んでいた。
瀬野昌也。
「ああ!!」
「どうやった?」
「相変わらずの父親罵り合戦」
「へー。糞だな」
「だろ?」
昌也は、俺と同じだった。
「モラハラって言われたのか?また」
「ああ」
「糞だな!」
「だろ?」
「だったら、産むなよな」
「わかる!俺もそう思ってた」
「大人の都合で、振り回される子供の身にもなれよな」
「だよな!」
俺は、気づけば同性愛に走っていた。
父親の面影を探していたのかも知れない。
母親は、繰り返し父親の文句を友達に言っていた。
いそいそと若い男に会いに行ってたのも知ってる。
父親と離婚して、そいつに行った時に気持ち悪いと思った。
父親は、酷いと言いながら…
テメーも、女を捨てれてなかっただけじゃねーかよ。
「男に飢えてる母親が、とにかくキモかったわ」
昌也は、煙草に火をつけて吐き捨てるようにそう言った。
「わかる。母として女としてってあいつ俺に言ったくせに!あいつは、ずっと女としてだった。」
「まず、母としてをとるなら不倫しねーからな!」
「だよな!俺を平気で置いてあいつデート行ってたから」
「マジで!死んでくれてよかったわ!」
「だよな」
俺は、昌也を抱き締めていた。
「だったら、俺らを産むなよな」
「わかる!」
「結婚してから、お父さんが変わったからとか言ってたけどさ!じゃあ、お前は変わんなかったのかって思ったよ」
「だよな」
「あいつだって、手抜きしてたんだよ。酷い言葉も吐いたんだよ。気づいてねーだけなんだよ。人間って、断片的にしか記憶ないだろ?」
「わかる、わかる」
「俺さ、漫画や小説とかで人間をクズ的に見せる演出嫌いなんだよな!最初から、悪いやつはいないんだよ。周りや環境がそうさせたんだよ。だから、父親だってあいつが変えたんだよ。我慢してたなんて、あいつは言ったんだよ。俺がいるから、我慢してたって!当たり前だろ?俺が、産んでくれって言ったんじゃねーんだよ。あいつが、俺を産んだんだよ。だったら、殺してくれた方がよかったよ。」
「わかるよ、昌也」
俺は、泣いてる昌也をギュッと抱き締めた。
酷い奴もいるのは、わかってる。
でも、少しは我慢して欲しかった。
別れるのは、物心つく前にして欲しかった。
父と母を認識する年齢で離婚された、俺と昌也にとって…。
欠けたピースは、大きな存在でしかなかったんだ。
大人は、簡単に振り回す。
俺達の心を簡単に壊す。
何を考えてるか、気づいてないくせに…。




