⑨
「恵美子、ごめん。俺、どうやら酔って。さっきの人としてしまったらしいんだ。ごめん」
「ううん。私も、さっきの人とキスしちゃったの。ごめんね」
見つめ合う慎太郎と恵美子。
「告白された。身体だけでいいと言われてる。どうして、いいかわからない。俺は…。」
「慎太郎は、どうしたいの?」
「答えてあげたいとは、思ってる。あの日の恵美子と重なって。少しでもいいから、答えてあげたいって思った。」
「相変わらず優しいね。慎太郎は…。」
「恵美子もだろ?」
「彼女の必死な姿を見たら、答えてあげたいって思ってしまった。最後のチャンスにしがみついた私に似ていたから…。」
「そっか!わかった。」
慎太郎は、恵美子に笑いかける。
「恵美子、俺…。恵美子といたい。でも、期待するのは辛い。初めて、逃げられる場所が欲しいと思った。ごめん。」
「私も、初めて逃げられる場所が欲しいと思った。ごめんね。」
「ごめん。」
「離婚は、もう少し考えてみる?」
「そうだな。でも、その人と向き合いなよ。俺も、向き合うから…。」
「うん」
手を握りあった慎太郎と恵美子
「もう少し恵美子といたい。だから、ゆっくり考えて欲しい。離婚は、もう少しゆっくり…」
「うん、わかってる」
慎太郎と恵美子は、涙が止まらない。
二人は、手を握り締めて泣き続ける。
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かわって、友里亜
家に帰ってから、恵美子にキスをした唇を撫でている。
休みの日だった。
たまたま、あの公園の前を通った。
初めてだった、こんな一瞬で人を好きになる事なんてなかった。
この人を守ってあげたいと思った。
さっき、車に乗った恵美子さんにキスをした。
もっとしたいぐらい、いい匂いがしたし、唇が柔らかかった。
もっと、触れたい。
身体だけでもいい。
彼女が欲しい。
【明日、映画みませんか?】
彼女からのメッセージに顔がにやける。
【どんな映画ですか?】
【鴨池はやての映画です。】
鴨池はやて…。私は、検索する。
【心だけが繋がらないですか?】
【それです。行きませんか?】
【喜んで(*^ー^)】
顔文字ぐらいいるかと思って送った。
恵美子さんと付き合えたら、未来は幸せなのがわかる。
彼女と一緒に過ごせるなら何もいらない。
それぐらいに、一瞬で恋におちた。
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かわって、慶太。
家に帰ってから、慎太郎との昨夜の出来事を思い出していた。
誘惑したのは、自分からだといえあんなに優しく抱かれるとは思わなかった。
最初にお店にやってきた瞬間から、トキメキを感じていた。
慎太郎さんと付き合えたら、どんなに幸せだろうと思った。
どのタイミングで恋におちたかなんて、自分でもわからなかった。
ただ、彼と一緒にいたい。
別れ際に交換した連絡先からメッセージが届いた。
【明日、会えますか?】
【はい、勿論です。】
【ラーメン食べに行きませんか?】
【はい、行きます】
慎太郎からのメッセージに、嬉しさが込み上げてくる。
嬉しくて、堪らない。
ニヤニヤが止まらない。
ベッドに寝転がって、慎太郎さんのメッセージを見返して笑ってしまう。
【迎えに行きますね】
【はい】
嬉しくて、スマホを抱き締めてしまった。
慎太郎さんが、触れた熱が嬉しかった。
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かわって、慎太郎と恵美子ー 夜
別々のベッドに寝転がる。
いつから、子供について話さなくなっただろうかと考える。
二人とも、スマホを見つめている。
「恵美子、おやすみ」
「おやすみ、慎太郎」
スマホを二人とも、ベッドサイドテーブルに置いた。
このテーブルを挟んで、二人は別々のベッドにいる。
愛してるとか大切だとか、そんな言葉じゃ説明がつけれない。
愛情の延長線上の果てに続いていくような関係。
好きや嫌いとかでもない。
とにかく、慎太郎と恵美子にとってお互いはなくてはならない存在だった。
ご飯を食べていても同じタイミングで醤油を取るし、テレビを見ていても同じタイミングで笑うし、同じドラマが好きだし、その日に食べたいものも同じで、味覚も同じで…。
この関係は、何と言えばいいのかはわからなかった。
とにかく、全てが同じ存在なのだ。
なのに、何故か子宝には恵まれなかった。
それでも、一緒にいたい気持ちは持ち合わせているけれど…
手を握る以外の触れ合いをせずに、生きていくのは難しい。
でも、期待をする限りは二人ともはそうなれないと思っていた。




