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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
【蛹は、蝶の夢を見る】TVで流れてる映像作品
16/135

⑨

南条は、朝早く目覚めた。


寝ながら、朝倉を見ていた。


髪の毛を優しく撫でる。


朝倉の苦しみが、理解できる。


【頼む、衛の子種をくれないか?】


優秀な兄が、何度も俺なんかに頭を下げた。


本当にダメなのか?


一緒についていったけど、兄に子供を宿せる力はなかった。


【衛、助けて欲しい。私は、子供が欲しい。】


子供が、欲しい。


子供が、欲しい。


それを繰り返す度に、兄は消えてしまいそうだった。


【彼女と別れるぐらいなら死んだ方がマシだ。】


俺には、あの人が素晴らしい人に思えなかったけれど、兄にとってあの人しかいなかったのだ。


次がない事を知っていた兄は、追い詰められていった。


あの人に手を上げるようになった。


【衛、私は彼女を傷つける。殴ってしまった。】


震える手で、俺の手を握りしめた。


兄だけが、悪いわけじゃない。


兄は、自分の傷を彼女に見せただけに過ぎなかった。


それを、他人は悪だと言った。


兄の痛みを悪だと言った。


俺は、小太郎の頬の涙を撫でる。


検査なんかしなければ、苦しまなかっただろう


結婚なんてしなければ、幸せだっただろう?


兄は、あの人が自分と別れる前に自らを罰した。


そして、あの人は喪主を勤めた。


あの人は、兄の一周忌にお腹を大きくして現れた。


殺してやりたかった。


小太郎の気持ちがわかる。


屈辱以外のなにものでもなかった。


兄が生きていたら、目の前で喉をかっ切ったはずだ。


それ程の痛みを、俺は味わった。


兄の話をいつも聞いていた俺にとっては、胸を捻り潰される程の激痛だった。


小太郎は、もうすぐ起きそうだった。


.

.

.

.

.



「うーん」


朝倉は、久々に眠れたようだった。


「おはよう、小太郎」


隣で、南条が自分を見つめていた。


アレから、南条と何度も…


急に、恥ずかしくなった。


「大丈夫か?照れてるか?」


毛布で、顔を隠す僕の手を握ってくる。


「恥ずかしいよ」


「もう、恥ずかしい事はしたよ」


南条は、そう言って頭を撫でてくれる。


「ハハハ、そうだよね」


「小太郎は、もう蝶だよ」


「えっ?」


「昨日、俺に言ったの忘れた?」


「何を言ったのかな?」


「蛹は、蝶にはなれなかったって」


「あー。それ言ったんだ。」


「言ったよ。俺に」


そう言って、南条は笑った。


「僕は、なれたの?」


「ああ、蝶だよ。俺の、蝶」


南条は、そう言っておでこをくっつける。


南条の言葉、一つ一つに胸が踊っているのを感じる。


「それなら、嬉しい」


朝倉は、南条に抱きついた。


「よかったな」


そう言って南条は、朝倉の頭を撫でる。


「僕の人生は、何だったのかな?」


朝倉は、俺の頬を撫でながら言った。


「どうして、そんな事を言うんだ?」


「僕は、子供を産めないから。不必要なんだよ。男を好きになるなんて、いけないんだよ。」


「いけなくないよ。子供が産める産めないなんて、俺には必要な事じゃない。だって、俺にとって重要なのは小太郎と一緒にいる事だから…。縛られなくていいんだよ。子供を作れない事に。苦しまなくていい。小太郎は、蝶になって俺の周りを飛んでくれるだけでいい。その羽根をもぎ取る事は、俺が許さない」


そう言って、南条は朝倉の手を強く握りしめる。


そして、涙を流す。


「キスする前に、歯磨きしなきゃね?」


南条の唇に、指をあてる。


「そうだな」


南条は、朝倉に笑いかけて立ち上がった。


並んで、歯磨きをした。


「いいかな?」


南条は、そう言ってキスをした。


「衛」


「大好きだよ、小太郎」


そう言って頭を撫でて、また、引き寄せた。


朝倉は、嬉しかった。


南条の胸の中に、顔を埋めてる自分が好きになれる。


蛹は、蝶の夢を見ていた。


僕は、やっと蝶になれる居場所を見つけた。


「小太郎、俺を見て」


「うん」


「これからも、ずっと傍にいてくれるか?」


「僕は、衛が嫌だって言うまでいるよ。どれだけだっているよ」


南条は、いつまでも朝倉を抱き締め続けていた。




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