【温度】⑳
お風呂から上がり彪伍と話をしてすぐに寝てしまった一輝
「彪伍、ありがとう」
「まだ、いていいんだよ。」
「嫌、ちゃんと話し合いをしてくるから」
「それ終わったら、一輝、帰ってきてよ。」
そう言って、彪伍は一輝に鍵を渡した。
「わかった」
「気をつけて」
「ありがとう」
一輝は、歩いて帰る。
時刻は、八時を過ぎていた。
一輝は、市役所に向かって歩きだす。
花香と泉ー
あの後、話してすぐに寝てしまった。
「花香、帰ってきてよ」
泉は、花香に鍵を差し出した。
「うん、わかった」
「もう、傷つけられないで。断って、花香」
「わかってる」
泉は、花香の髪を撫でる。
花香は、泉の家を出て市役所に向かって歩き出した。
バス停で、一輝と会った。
「一輝」
「花香」
「酷い顔だよ。泣いた?」
「そっちだって」
「音声、取り込んだから送ろうか?」
「うん、送って」
「離婚してもらえるように、頼んでくる」
「私も、そうする」
「土下座してでも、別れてもらう」
「私も同じだよ」
「花香」
「うん?」
「もし、別れてくれなかったら、俺と逃げよう?もしそうなるなら、この先は、彪伍を巻き込みたくない。」
「わかった。私も、泉を巻き込みたくない。」
「じゃあ、約束」
「約束」
二人は、指切りをした。
バスに乗って、市役所で離婚届を取った二人、また戻ってきた。
「じゃあ、頑張って!花香」
「一輝も頑張ってね」
ニコっと笑い合って、二人は家に帰った。
帰宅した一輝ー
「どこ行ってたのよ!一輝」
「桜、お願いします。別れて下さい」
一輝は、玄関で土下座する。
「嫌よ、何よ。それ…」
「お願いします」
一輝は、桜に音声を聞かせる。
「だから、何?」
「桜、お願いだよ。」
「嫌よ、私妊娠したの」
そう言って、検査薬を差し出した桜。
「俺じゃないだろ?」
「何言ってるの、一輝の子供だから…。」
そう言われて、固まる一輝…。
帰宅した花香ー
「どこ行ってたんだよ。」
「お願い、孝輔。私と離婚して下さい。」
花香も、玄関で土下座した。
「嫌だよ。何で、俺が花香と離婚するんだよ」
「お願いします。」
花香は、音声を再生した。
「だから、何だよ。桜に、子供出来たんだよ」
「それなら!」
「花香は、俺にとって必要だよ。母さんがさ、倒れたんだ。」
「えっ?」
「麻痺残るから、介護が必要らしい。子供いないから、花香が見て欲しいってさ」
そう言われて、花香は固まっていた。
一輝は、涙が止まらなかった。
「じゃあ、バイト行ってくるね」
桜は、ニコニコ笑いながら家を出た。
扉が閉まった瞬間、一輝はリビングに行って、離婚届を書いて指輪とスマホを置いた。
ボストンバックに、服をつめる。
通帳を持った。
一輝は、そのまま家を飛び出していた。
花香も、また泣いていた。
「じゃあ、俺。仕事行くわ。明日、母さんに会いに行こうな」
孝輔は、家を出た。
花香は、リビングに行って離婚届を書いて指輪とスマホを置いた。
部屋に入って、ボストンバックに少量の服をつめて通帳を持った。
花香は、家を飛び出した。
バス停で再会した一輝と花香ー
「花香、逃げよう」
「一輝、うん」
二人は、バスに乗り込んだ。
駅について、一輝は、コインロッカーから服を取った。
そして、電車に乗る二人。
「最後の駅まで行こうか」
「うん」
彪伍の番号をメモして履歴を消してきた一輝。
泉の番号をメモして履歴を消してきた花香。
「あのさ」
「うん」
「いつか、また。彪伍や泉ちゃんに会えるかな?」
「会えるよ、絶対」
花香は、一輝に笑いかけた。
終着駅までやってきた二人ー
「お金は、今日おろしたら。もう、おろさない方がいい。だから、いくらおろす?」
「どうしたらいい?」
一輝は、コショコショと花香に伝えた。
「わかった…」
花香と一輝は、二人で逃げた。
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「彪伍、やっぱり暑いね」
「いいじゃん、泉」
あれから、四年が経って旅行にやってきた二人…。
泉と彪伍は、2日後に二人から手紙と鍵が届き、失ったのを知った。それから、一年は廃人のような生活を送っていた。
泣いて、泣いて、それでも、前に進むしかなかった。
「ここ、引っ越してきたいね」
「いいよなー。空気うまい」
ドンッ…
「すみません」
その香りに、彪伍は腕を掴んでいた。
「いっちゃん」
サングラスをかけた人が、自分を見つめる。
「彪伍…」
一輝だった。
「何で、ここにいるの?」
一輝と花香は、3ヶ月事にいろんな場所を転々としていた。
「今は、この街にきたばっかり」
泉も近づいてきた。
「花ちゃんは?」
「いるよ」
「会わせてよ」
「うん」
一輝は、二人を連れて行く。
「花香はね、そこにいる」
一輝の指差した方に、花香が居た。
「花ちゃん」
車椅子に乗っていた。
「何で?車椅子」
「泉、彪伍君。久しぶり」
「花ちゃん、どうしたの足…」
「それね、三日後に見つかったんだ。それで、逃げたんだ。それで、逃げた先で、また似た人を見つけて追われてるって思ってまた逃げたら、二人で車にひかれて…。俺の方は、軽傷だった。だけど、花香は、足が動かなくなっちゃって」
「そんな…」
「それでも、逃げなくちゃならないから…。3ヶ月ごとに別の街に行ってて。」
そう言って、一輝は泣いていた。
「花ちゃん、私もついてくよ」
泉は、花香に会いたくて仕方がなかった。
「僕も、ついていきたい」
彪伍も、一輝に会いたくて仕方がなかった。
「でも、3ヶ月経ったら、またここから離れるよ」
「二人を巻き込みたくない」
「巻き込んでよ。私は、いっちゃんと花香といたいよ。」
「僕もだよ!一輝と花ちゃんといれるなら何もいらないよ」
そう言って、彪伍は一輝を泉は花香を抱き締める。
悪意も欲もない。
同じ体温が広がっていく。
あの日感じた、幸せな温度が四人を包み込む。
「一緒に暮らそう」
花香は、泉を抱き締めた。
「一緒に生きよう」
一輝は、彪伍を抱き締めた。
男とか女とか関係ない…。
ただ、息をしてるだけでいいと言ってくれた人
同じ体温の人
縛り付けようとしない人
ただ、傍にいたいって気持ち。
ただ、助けたいって気持ち。
悪意も欲もない人。
この温度に包まれているだけで、一輝も花香も生きていていいのだと思えた。
ずっと、生きていきたかった人。
運命が繋いでくれたのは、とても暖かく優しい縁だった…。
夕日に照らされて笑い合う四人のシルエットが浮かんだ。
END




