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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
シークレット作品②
126/135

【温度】⑯

帰宅した花香ー


カチャ…


自分の部屋に入って、クローゼットからキャリーバッグを取り出した。


服をつめていこうとしたら、カチャ…。


「お帰り、花香」


「何で?仕事は…。」


孝輔が、現れて驚いた顔を向ける。


「心配で、リビングで待ってたんだよ。そしたら、ここから音がしたから」


孝輔は、花香に近づいてきた。


「どこ行ってた?」


「カラオケ」


「一人で?」


「そうよ」


孝輔は、キャリーバッグに服を入れる花香の手首を掴んだ。


「何してるの?」


「離婚するんでしょ?だから、出て行くの」


「何で?したくないんだろ?」


「したくなったの。はい、これ書いて」


花香は、離婚届を差し出した。


ビリビリと破られてしまった。


「何で?」


「離婚しないよ、花香」


「何で?」


「好きな人出来たの?」


「好きな人がいるのは、孝輔でしょ?中目桜さん。子供が欲しいんでしょ?私じゃなくて彼女と一緒になりなよ」


「だから、なに?」


だから、なにってどういう意味なのかわからない花香


「別れたかったんだよね」


花香は、立ち上がった。


孝輔との間に、流れる温度が違うのがわかる。


体温の違いと同じぐらいにハッキリと感じる。


「離婚届、もう一回とりに行くから」


孝輔は、花香の腕を掴んで壁に押し付けた。


「なに?」


「離婚なんかしないから」


「何で?」


「花香、浮気してきた?」


「してない。してるのは、孝輔でしょ?」


一輝と彪伍と泉の匂いがついているのを花香もわかっていた。


「花香は、誰にも渡さない」


そう言って、耳元に息をかけられる。


「やめて、出ていくから」


「そんな事言って、花香。力入ってないよ。期待してるだろ?」


孝輔はズルい…。


付き合って半年で結婚をした、結婚してから毎日のように花香は孝輔に抱かれた。


弱いとこも、好きなとこも、全部、全部、わかられてる。


「花香、これ好きだよね」


全部、知られてる身体…


まだ、孝輔を愛してる気持ちをバレてる。


「愛してるよ、花香」


愛してると言えば、花香が自分の所有物(おもちゃ)でいるのをわかっている。


「花香、愛してる」


「やめて」


それ以上言わないで…。


「愛してるよ、花香」


そう言って、花香の唇に舌をねじ込んできた。


愛してるって言われる度に、花香は【離さない、渡さない】と言われてるように聞こえていた。


「花香が一番だよ」


なにを言っているのだろうか?


「離婚したいんでしょ?」


「しないよ、花香」


孝輔は、花香の弱い場所を刺激する。


「やめて、孝輔」


「花香は、俺だけのもの」


目の前の壁が、涙で滲んでく


さっきの楽しい時間が、頭を流れた。


目を閉じると泉にされたキスが浮かんだ。


同じ温度だった。


花香に触(ふ)れたいだけのキス


花香を縛り付けない言葉…。


花香を人間(ひと)として扱ってくれた。


泉からは、欲を感じなかった。


孝輔のように、子供だって望まない。


泉には、息をしてるだけでいいんだよって言われた気がしていた。


「愛してるよ、花香」


愛なんて言葉を使えば、花香が自分の元から離れないのを知ってる


「ズルい…」


「愛してる、花香」


身体に与える刺激と一緒に「愛してる」と言う。


身体中に植え付けて、花香を離さないつもりのようだった。


また、人形(おもちゃ)にされるんだ。


同居人でもよかった。


孝輔が、少しでも愛してくれるなら…。


花香は、離婚なんて考えてなかった。


二人で生きていくつもりだった。


こんな風に、愛のない行為をされたくなかった。


なのに、どうして…。


別れたいと言ったのに、どうして縛り付けるの。


孝輔は、花香を渡したくないから何度も何度も花香にし続けた。


花香は、人形(おもちゃ)だった。


いずれ、壊れたら捨てられるならまだ、身体が動くうちに捨てて欲しいよ。


いずれ、飽きて捨てられるなら、まだ、心が誰かを求めたいと思ううちに捨てて欲しいよ。


パタンと、孝輔が出て行った。


花香は、下着姿にされていた。


丸まって泣き続ける花香…


どうして、どうして、どうして、どうして…


孝輔が、花香の何に執着しているのかわからなかった。


「赤ちゃん欲しいんでしょ?孝輔」


花香は、下腹部に手を置いて泣いた。


妊娠などしない惨めな身体に、何故孝輔はそれを繰り返したかわからなかった。


もう、赤ちゃんが出来ない事に苦しめられたくないのに…。


わかってくれない、孝輔の気持ちが理解出来なかった。


引かない熱に、包まれながら泣き続けるしか出来なかった。



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