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書斎
おれの親父は
自宅の団地の
部屋の一室に
膨大な量の
蔵書を
所有している
親父はかねてから
その本を入れる
専用の部屋を
欲しがっていた
また親父は
普段から
原稿を書いていたので
書斎も一部屋
欲しがっていた
その親父の
思いも虚しく
蔵書を入れる部屋も
原稿を書くための
書斎も
おカネが無かったため
叶わぬ夢で
終わってしまいそうだ
おれの場合は
かつては親父の蔵書に
負けないぐらいの
膨大な音楽CDを
所有していたが
ネットオーディオが
台頭してからは
CDで音楽を聴く必要性も
無くなったので
大半のコレクションを
手放してしまった
おれも郵便配達の
仕事をしていた頃は
専用の書斎をつくり
その環境で
執筆作業をすることを
夢想していた
しかし今となっては
スマホとブルートゥースの
キーボードが
一台あれば
自宅に書斎なんか無くても
どこでも執筆作業が
出来るようになり
おれはそれだけで充分
満足になれた
親父の夢は
ことごとく叶わなかったが
おれの場合
形を変えて
叶えられた
今度はおれが
書いたモノが
書籍化されて
それがバンバン売れることを
夢見ている
それもまた
かつて親父が
夢見たことだった




