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001 婚約の申し込み

「うーん。スライス侯爵家の次男坊か」

「あら。次男なの? 最近、質が落ちてきたわね」


 私の父、ロジエ伯爵が婚約の申し込みについての書状を片手に唸り声をあげると、その隣で母は落胆して溜め息を吐きました。

 しかし妹のカーティアだけは椅子から飛び上がって喜んでいます。


「まぁ。素敵! 彼はとても見目麗しい青年だと聞いておりますわ!」

「そうか?――カーティアは何と気立てのよい娘なのだ。よし。会いに行ってみるか! カーティア。何色のドレスがいいか?」

「えっとぉ~。仕立て屋を呼んで、布から選びたいわ!」

「よし。明日にでも仕立て屋を呼ぼう!」

「楽しみだわぁ~」

 



 さてさて。この会話を耳にするのは何度目でしょうか。

 これは、いつもと変わらぬ夕食での会話です。

 婚約を申し込む書状が届き、両親が品定めをし、妹は喜んでドレスをねだります。


 これは幾度となく目にした光景です。

 それは、何度も婚約が成立していない、という意味も含まれています。




 両親と妹が退室した後、テーブルに残された書状を手に取り、弟のアルドは私の目の前に苛立ちながら書状を突きつけました。


「ベル姉様っ。またじゃないですか!? ほら、これはベル姉様への婚約の申込書ですよ!?」

「そうね。また、だわ」


 これは私、ベルティーナ=ロジエへの婚約の申し込み書なのです。


 ◇◇


 幼少期、妹は病弱でした。

 走れば発作が起きてしまい、苦しむ妹を何度も見てきました。

 その度に、私は妹の回復を祈り続けてました。


 でもそれは幼少の頃の話です。

 今は完治して走り放題、我が儘放題です。


 それでも私は構いませんでした。

 と言えば少し嘘になります。

 私だって妹は可愛いと思っています。

 けれど、両親は妹しか可愛がりませんでした。

 

 だから、学生時代は学業にのめり込みました。

 そして優秀な成績を修め、常に首席であり続けました。


 その甲斐あってか、有り難いことに、平凡な見た目であっても、私には婚約の申し込みが幾つも舞い込んで来ました。


 学生時代、私に婚約の話が来ても両親は、「まだ早い」と首を縦に振りませんでした。


 しかし私が学園を卒業すると、両親は、「そろそろ婚約の話を受けようじゃないか」と急にやる気を見せましたが、それは十六歳を迎えた妹の為でした。


 両親は私に来る縁談を妹に回し、婚約を結ぼうとしていたのです。


 しかも、妹は何を間違えたのか、病弱でドジっ子であることを前面に押し出して相手へとアプローチするのです。


 幼少期に誰もが手を差し伸べ慈しまれた記憶が妹をそうしてしまうのでしょうか。

 私には理解できませんが、見た目は並みでも学業の成績が良いからと婚約を申し込んできた相手に対して、それは確実に間違ったアプローチの仕方です。


 そんな相手を馬鹿にしたような態度では上手くいく筈もなく、縁談はさっぱりまとまらず、かれこれ二年が過ぎようとしていました。


 もう何人と婚約を進めようとしたのか、数すら分かりません。妹のクローゼットを開けば、婚約しようとした分だけのドレスがあるかもしれませんが、興味はありません。


 取り敢えず、何処かの変わった嗜好の殿方が妹の魅力に気付いてお嫁にもらってくれないかと微かに祈っていましたが、この国の令息達はそれなりに優秀なご様子です。




 因みに、先日のスライス侯爵家との縁談ですが。


「どぉしてまた駄目だったのよぉ!?」

「相手に見る目が無かっただけさ」

「そうよ。ベルの方がいいだなんて。同い年のカーティアを連れていって差し上げたのに失礼しちゃうわ」


 まぁ、ですわよね。

 スライス侯爵家子息様とは面識がありますが、見た目だけではなく、彼は中身もちゃんとした方でしたから。 

 この様な事に巻き込んでしまい申し訳なく思います。

 

 私は今年で二十一歳になります。

 そろそろ妹がお相手を決めていただかないと、婚期を逃してしまいそうです。


 ですが、最近の私の一番の悩みは、今年学園へ通い始めた弟のアルドが、カーティアについて不満を持ち始めたことでした。


「ベル姉様っ。もう学園に行きたくありません。ティア姉様の弟だと思われるのが、恥ずかしくてなりません」





続きが気になった方、面白そうと思った方は、ブクマ・評価等、よろしくお願いします(*^_^*)

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