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学生魔導士の騒動録~その力は誰のために~  作者: Dr.醤油煎餅
第二章
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ルナマギア特別開発室-研究記録その1-

 太陽は競技会から帰った翌日には国防軍の軍事施設に来ていた。今の彼は魔導技術を扱う会社の契約社員として軍事施設に招待された技術団の一人として集団に同行している。別に太陽は彼らを率いている訳ではないので技術団の一人が代表して警備員に話し掛けて施設の中に入る。


「株式会社ルナマギアの研究開発部魔導機構開発課の飛山です。日野中佐の申しつけで来ました」


 技術団の代表が警備員に目的を告げ、紹介状を渡し、確認と手続きを取る事でようやく中に通される。ジュラルミンケースを乗せた台車を押して案内された演習場へ向かう。

 太陽達は資材搬入用エレベーターで地下へ向かう。地下施設は緊急時は周辺住民の避難用シェルターになるが、平時は魔導師の訓練場として使われている。今は訓練している兵士はいないが、訓練用のマットや鉄骨が纏められているのが見える。


「おはようございます」

「ご苦労様です」


 技術団のリーダーに挨拶してきたのは彼らを此処まで呼んだ日野(ひの)正久(まさひさ)中佐だった。彼の所属は国防陸軍第十八師団第二魔装連隊になっている。魔装とは魔法を使う又は利用して動く人間や部隊の事を指す。しかし、彼は魔導師じゃない、少なくとも国防軍の入隊試験でその素質は見いだされる事はなかった。

 そんな彼がなぜ魔導技術の会社を呼んだのかというと、誰にでも使える魔導技術というモノを作り上げその試作品を太陽達が持ってきたからである。というより、彼が現在の地位についた時から太陽達は彼らのバックアップを行ってきた。


「それで今回の装備品はどのような感じですか?」

「はい、わが社の研究、その集大成とも言うべき作品となっています。まだ開発し始めの段階ですので、今後もアップデートは重ねていく次第です」

「成程」


 日野中佐は計測器の準備と設営をやっている太陽の方に近づいてきた。


「やぁ、お疲れ」

「どうも」

「で、実際の所どうなんだ?」

「負担がデカすぎでした。安全弁は付けてますが、第二の人間で何とか一時間ってところですね。霊子をブーストできる機構を考えてみます」

「俺達の向上と技術の向上が課題か」

「どっちも頑張りますか」

「期待してるよ」


 太陽に声をかけ終わった日野中佐は近づいてきた自分の部下たちに声をかけに行く。太陽は設営を続け、今回の実験品の準備を進める。

 暫くしてやることも無くなって来たので、椅子を用意してぼんやりとする。他の技術者たちも開始時刻まで時間があるので太陽の周りに集まって隙に話題を話し始める。話題の中心となるのは魔導技術関連の事で霊子信号はこうした方が良い結果が出るとか、ハード面での改良点とかを上げてそれについての解決策なんかを話し合っている。

 試験開始時刻間際となり太陽達は一ヵ所に集められ整列する。その場にいた軍人も揃って整列した。前には上官と思しき人間が立って目的と注意事項を話し始めた。


「今回の実験の目的は外部委託型魔法構築器の実践的使用に向けての取り組みの最終工程と言える。以前から行っている様に諸君らが手にするものは武器でありまだ未確定の事が多い代物だ。最深の注意を払って取り扱ってもらいたい」


 上官からのありきたりな注意の後は、研究員からの実験の簡単な内容が話される。それを聞き終わると、早速、全体が準備に入る。被験者となる軍人はプロテクターを装着後、実験品を受け取っていき等間隔で並んでいく。下腹あたりに全員が実験品を押し当てると帯状のモノが腰に巻き付いて実験品がバックルの位置に来る。その事を確認できた人間から順に金属製の幾何学的に描かれた蟻の模様が入ったカードが渡されていく。


「それではそれをバックル内に入れて下さい」


 軍人たちは指示された通りにカードをバックルの中に入れていく。最後まで入れるとカチッと音がする。


「では、右側側面のボタンを押してください」


 研究員の指示が入ったので全員が右の側面についていたボタンを押す。すると、バックルから流動する物体が噴出し、軍人たちの全身を包むと直ぐに変形、硬化して黒い虫の顔の様な造形のフルフェイスヘルメットに、黒い防護服の上から手足に黒い装甲が足されて、胸部と背面には動きを阻害しない程度にアーマーが着いている。装備品としては今までのモノとは変わらない様に見える。個々人に合わせてサイズは調製されているようでピッチピチだったり、ダボダボになっている人間はいない。

 ここで日野中佐が号令をかける。


「これから運動力調査をやっていくから五人一組を組んでくれ」


 日野中佐の指示に従って五人組が三班できる。その間、僅か五秒。


「第一班は重量挙げ、第二班は短距離走、第三班は跳躍力を計っていく。その後はローテーションを回していく。では、各員持ち場につき、計測開始!」


 日野中佐の号令がかかると全員が言われた通りに動く。太陽は短距離走の計測要因だ。前日には彼らの腕力、速力、跳躍力のデータは計測済みなので此処と数値がどう解離していくかが今回の実験の肝である。計測は三回。一気に五人走るので太陽も腕を三本増やす。


「第一走、始め!」


 前世紀よりも強化されたコンクリの床が壊れると同時に先程までスタート地点にいた奴等がゴールから十メートルは先にいた。太陽は計測できた記録を手元のタブレットに打ち込んでいく。

 また、スタートに軍人たちが戻ってくると、太陽も計測準備を始める。


「第二走、始め!」


 今度はかなり加減したようだが、それでも上がった身体能力に感覚が付いてこないのか困惑している様子だった。第三走も似たような結果で終わった。冗談みたいな結果だったが。

 その後も太陽は記録を取り続ける。五十メートル走でタイムを取っていたが、全員が三秒以内のタイムを出していた。他の計測でも人外の記録を全員が出していた。そして体の性能がおかしい事に気付いて被験者たちは身体の調子を確かめる。

 日野中佐が号令をかけて整列させる。


「では、右側のボタンを長押ししてください」


 技術者が指示を出すと被験者達は指示通りにそのボタンを長押しする。一分ほどで武装が弾けて生身の被験者たちが現れる。被験者たちはそれに驚くと同時に、意図が切れた操り人形の様に倒れ込む。全員息が荒く、大変疲れていそうだった。それを見越してか研究員たちは倒れ込んだ被験者たちを安静にできる所に移動させていく。首元を冷やして、水分補給をさせる。軽食も用意してあるので、余裕のあるものはソレをほおばっていく。


「疲労、大。立つのも難しそうですね」

「鍛えている軍人を疲労で倒せるか」

「身体的には疲弊はしてないでしょうが、霊子の使い過ぎでその分の負担が体に来ている感じ、かな? 詳しい事はここでは調べられません」

「これの前にも実験したのだろ、どうだった?」

「平均男性の平均が十五分装着ですね。因みに、今回は30分位です」

「俺達でやったら一時間ってところか」

「もう直ぐ、その時間ですね」

「分かった。準備しててくれ」


 技術者たちはバックルを弄って外していく。外した際に帯は消えていった。

 全ての回収が終わると、国防軍の医療班がやってきて倒れてる軍人たちを医療棟の方へ運んでいく。

 そこから研究者たちはデータを纏めていると、日野中佐がやって来た。


「時間だ。続きに移ろう」


 実験の続きが始まる。


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