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学生魔導士の騒動録~その力は誰のために~  作者: Dr.醤油煎餅
第二章
80/115

競技会八日目(夕方の部)

 寝室で少し寝たワークは太陽の私服に着替えて、外に出る。

 通気性の良い長袖の黒いジャージを着て、軽くお菓子を買いに行く。


「んっ」


 何かしらの異変を感じ取ったワークはエレベーターではなく、階段を使って下に降りていく。一応、ここら辺は軍施設内なので民間企業のコンビニとかは特殊な事情じゃない限りはいらない。一応、学生向けにプレハブ小屋の商店が出店している。

 ワークはそこに向かい、大容量のお菓子を籠に詰めて太陽の財布を使って会計を済ませる。商店を出ていくと、白い幼女が引っ付いてきた。


「おじさん!」

「……朝華か、鬱陶しいから離れろ」

「良いじゃん、私もお菓子欲しい!」

「ダメだ。久しぶりの自由な時間だからな、こういう時はなるべく豪勢に贅沢するって決めてるんだ」

「お菓子欲しい」

「話聞けよ」


 あんまりにも朝華が鬱陶しいのでお菓子を分ける事にした。合わせて飲み物も購入する。

 座れる所を探していると、朝華が作業者前に案内しようとするが、悪寒を感じたワークは宿泊所の共有スペースにいく事にする。


「ほい、加減して食えよ」

「は~い」

「太るからな」

「はい」


 ワークはチョコやスナックを摘まみながら情報端末で直近のニュースを確認する。現在は競技会で起こった暴力騒動で色々騒ぎになっている様だった。ネットの反応では魔導師が狙われたことに注目されており。悪魔への天罰なり、ミュータントへの正義の鉄槌だとかの誹謗中傷が回っているが。軍施設内で高校生が狙われた事に対して憂慮する声も上がっている。


「どうしたの、おじさん」

「ん~、あいつも大変だなぁと思ってな」

「他人事っぽい?」

「まぁ、半分他人事だし」


 ニュースからの不快感が顔に出ていたワークが朝華に突っ込まれる。それを適当に誤魔化しつつ、お菓子を摘まむ。ワークは面倒ごとの予感がして逃げていたが、かなり目立つ場所に目立つ人間と一緒にいるというのに周りの人間は騒ぎにもしていない。遠巻きに見る事もない。二人はそれを不気味と思う事もなく当たり前のモノとして受け止めていた。


「ふぐっ」

「………」

「ひっはらないれ」

「いや、柔くて気持ちいいから」

「やめれ~」


 ワークはニュースに飽きたので、お菓子を齧っていた朝華の頬を摘まんで伸ばして遊んでいる。事案になりそうではあるが、本人達は楽しそうである。そんな二人に割って入ってきた人間がいた。


「朝華、おじさん、お客様ですよ」

「あん?」

「おう?」


 朝日だ。長身で明るい髪色の彼女の後ろには強面で老け顔の高校生が立っていた。


「あーらら、見つかちった」

「………ぅ」

「ソッチのお兄さんは初めましてだね。付き合いの長さがどうなるかは分かんないけどよろしくぅ」


 普段の礼儀正しい太陽とは思えない程に砕けた感じになっている。加えて、今は出ている右目の周りは酷い火傷の跡と刃物でズタズタにしたような傷がついている。老け顔の大悟の後ろには吹雪と冬華が立っていて普段とかけ離れた太陽の姿に言葉を失っている。


「んで、朝日よ。この老け顔とちび介達は何者なんだ?」

「………兄さんの学校の先輩ですよ」

「ははは、それはそれは、表の奴が世話になっているようで」

「……話は既に妹の方から聞いている。で、その様子から考えるに貴様は月隠太陽の二つ目の人格といった所か」

「厳密には違うけど、その通りだ」


 大悟とワークは真っすぐに互いの目を見て話す。互いが互いを油断できない相手と認めているからだ。


「で、何の用だ? 今日に関してはアンタらの要望通りの結果を出した以上は責められるいわれはないぞ」

「その件に関しては無茶な願いだったのに達成してくれたことには感謝する」

「太陽にも伝えておくよ」

「結論から言うと、君達兄妹の力を十二家の為に役立てたい協力を要請する」

「既に十二家の一つと交流を持ち、協力を行っている以上これ以上の協力をする気はない」

「………そうか。具体的にどこに協力しているかを聞かせてくれ」

「それは言えない」

「分かった。話はこれで終わりにする。ココでの話は忘れてくれ」

「ああ了解だ」

「では、失礼する」


 大悟は朝日は置いて、他は連れて帰っていった。


「良いんですか、兄さんに話を通しておかなくても」


 大悟たちが見えなくなった段階で朝日はお菓子を摘まんで話し掛ける。


「構わないだろ。それに名前を出されても両方が困るだけだし」

「成程」


 太陽達のバックにいるのは十二家のナンバー2の家柄であり、無暗にその名を出せば両方に迷惑をかける。であれば、口止めされていると言っておけばそれで十分だろう。他家の事情に深入りしないのは十二家共通する暗黙の了解だ。それを踏み越えて調査するほどの旨味はないと悟ったから、大悟はあそこでは何も追及はしないと決めたのだろう。


「どうせ、俺らの素性を遡ろうとするだろうから対策しておくか」


✿  ✿  ✿


 朝日達から離れた後に大悟と冬華達からも離れ、吹雪は人気のない場所で電話をかけていた。


『はい、お嬢様。どんなご用件で?』

「お父様から言いつけられていた勧誘の報告です。対象は既に他家と親交があるようです。詮索は不能と判断したので中止いたします」

『そうですか、それは残念でしたね。雪次郎様には私の方から伝えておきますのでお嬢様は引き続き、干支戦にご注力下さい』


 そう言われると吹雪は電話を切り、伊月高のテントへと戻っていった。

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