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学生魔導士の騒動録~その力は誰のために~  作者: Dr.醤油煎餅
第二章
79/115

競技会八日目(午後の部その7)

 太陽は休憩を取ると、日出と日輪を黒帯で作った着ぐるみ部隊に輸送させる。一先ず、自分の本拠地の方へ飛んで戻る。


「終わったよー」

「うわっ、服が」

「ボロボロだな」

「ぷっ、だっせぇ」

「珍しい格好だな」

「誰も俺本体を心配してくれない」


 太陽はわざとらしく目元を抑えて悲しがる。

 陽斗は太陽の演技よりも気になった事があったので、質問した。


「それより、この2Pカラーみたいな奴は何なんだ?」

「2Pカラーってひでぇな」

「どっちもプレイアブルキャラだよ」

「どういうことだ?」

「………えっと、人格がどっちにもあるって事、かな?」

「そういうこと」


 純二が正解を引き当てた。陽斗はまだ疑問に思っている様だ。


「で、どういうことだ?」

「えーと、太陽は二重人格で、片方の人格を人型に移して自立行動できる分身を生み出しているって事だね、多分」

「そういうことー」

「まぁ、俺は、自由に引き出せるわけじゃないんだけどな」

「そうなのか?」

「アイス一本でも釣れる、お安い奴だけどね」


 裏事情をバラされて、黒い太陽は微妙な顔をする。


「今更だけど、何て呼べばいいんだ?」

「さぁ、名前は知らねぇし」

「自分の名前も知らんのか?」

「ついてねぇんだ、仕方ねぇだろ」

「じゃあ、お前は今からパッチワークマンだ」

「急だな、いきなりすぎるだろ……」

「変な名前だな」

「いや、似合って似合ってる」

「まぁ、良い。呼びにくいなら略せ」


 パッチワークマンと名付けられた黒い太陽は興味なさそうに名前の件を流す。


「よし、あだ名はパッチにしようぜ」

「裏切りそうだな」

「じゃあ、ワークにするわ」

「何でもいい」


 陽斗はパッチワークマンの何かを気に入ったのか、早速、あだ名を考える。和やかに話していると、辰馬が現実に戻してきた。


「駄弁ってても良いけど試合終了まで時間はそれなりにあるし、動くか?」

「正直、弟たちとやり合ってて疲れた。今は休みたい」

「……俺も正直ここから出ていって上手く動ける気はしないな」

「俺も待機に賛成」


 そこから試合終了までは周囲を警戒しながらも、特に何かが動くことなく終了のホイッスルが鳴って終わった。そこから演習場の管理事務所兼選手休息所に戻る。


「じゃっ、約束通り」

「おう、約束通り、借りてくぜ」


 黒白の太陽達でハイタッチすると、黒い方が消えて、白い方に飲み込まれた。その瞬間、太陽の体がビクンと跳ねたかと思うと途端に急停止した。


「た、太陽?」

「ん、大丈夫か?」


 数瞬、止まっていると、太陽はそのまま何事もなかったかのように歩いてトイレの中に入っていった。陽斗たちは様子のおかしい太陽を心配して追いかけようとするが、


「俺らは先に戻ろうぜ」

「あ、ああ」

「………うん、分かった」


 辰馬に止められてトイレに入った太陽を置いて、マイクロバスに乗り込んで待つことにした。三人が待っていると、マスクが黒い太陽――、パッチワークマンが入ってきた。


「………でてきてたのか?」

「いや、主導権が変わっただけだ」

「えーと、裏の人格が出てきたって事か?」

「お前らの基準で言えばそうだな」

「謎が多い奴だな、お前はいったい誰なんだよ」

「さぁ、あってたら答えてやるよ」


 ワークは最後尾の端に座って寝始める。続いて治療の終わった選手が包帯をしてマイクロバスに入ってくる。陽斗たちは詰めて座るべきだと考えて太陽を端にして最後尾に四人並ぶ。

 試合結果が完全に伊月高に対して封殺された形になるので、車内は気まずい空気に包まれている。と言っても、全員が口に出す事もなく戦った相手には敬意を表して挨拶ぐらいするが、そこからの会話はなくそれぞれ纏まって座った。疲れていることも原因かもしれないが。

 暫くしてマイクロバスが出発した。移動中も疲れをいやすように静かな移動であった。


*  *  *


 太陽はマイクロバスから降車後は真っすぐと自室へ向かった。辰馬はそれに気付いて他二人に太陽の後を追うように言って自分は報告の為に伊月高のテントへ向かう。


「お疲れ様です」

「あっ、うん、お疲れ、さま」


 吹雪が片言で労いの言葉をかけてきた。そんな彼女をフォローする為に第五が前に出て話を始める。


「東海、聞きたい事がある。座ってくれないか?」

「はい、承知致しました」


 テント内にいた一人がお茶を持ってきてくれたのでそれを飲み干しのどを潤す。開いた紙コップにはまたお茶が注がれた。

 辰馬の対面には大悟、吹雪、冬華が並んで座って壁際には生徒会役員が立ち見している。


「先ずは、お疲れ様、そして急な予定変更だったのにこちらの要望通りの結果を出してくれたことに、感謝する」

「いえ、裏方でしたが自分は元々出場予定だったので」

「そうか、それでも感謝は伝えたい。ありがとう」


 大悟は辰馬の正面で堂々と頭を下げた。


「それで、話は変わるが幾つか質問させてほしい」

「分かりました。答えられる範囲で応えましょう」


 目つきの変わった大悟に正面から応える辰馬。普通の一年生ならビビり散らしている所だろう。


「先ず、月隠は何処にいる?」

「宿泊所に戻りました。他二人も疲れたそうなので、先に帰しました」

「次に月隠達が使っていた魔法、あれはなんだ?」

「具体的に例を示していただかないと、説明のしようがないですね」

「………黒い何かを操る魔法と、災害の様な気象を発現させる方法だ」

「後者に関しては自分には解答権がありませんのでお答えできません。ですので、前者についてお答えさせていただきます。」


 そう言って辰馬は自分の掌に黒い粒子を発生させる。


「これは霊子を強く濃縮した状態です。極限まで硬く濃縮したこれは霊子の存在する精神世界を抜けてこっちの現実の次元に実体化してきた存在です。元は霊子ですのでこうして操作もできます」


 辰馬は黒い粒子を動かして実演してみせる。


「これは現実世界に存在はしていますがその正体が何なのかは分かりません。伝手で超音波試験とか行いましたが、詳細な事は何も分かりませんでした」

「完全に正体不明の物質か」

「分かっていることは、使用者の意思を反映して性質も変化するみたいです」


 丸く固めた黒帯を投げ渡し。初めはスライム並みに柔らかかったが、段々と硬度が増していき、鉄球並みに硬くなっていく。


「成程」

「それに能力にも個人差があったりします」

「動物だったり、現代兵器だったりか」

「自分の身体から離れた場所で活動させる場合は、強い感情を利用すると長持ちするそうなので、強い感情を反映した形にするのが一番だそうです」

「じゃあ、あれらは強い感情を反映されて生み出されたのか」

「そうですね。常態的に強い力を発揮できるのは恐怖の感情と言われています。なので、それぞれにとって怖い物を現出させると長時間かつ強い力で活動させられるそうです」

「感情が反映されたモンスターか。それは無制限に出せるモノなのか?」

「どうでしょうね。自分もアイツから今年で……三年? は学んでいますが、精々50メートル位を形作った物の移動が限界ですね」

「それは、どうしてだ?」

「体力と霊子が足りないからですね。使い続けるとスタミナ切れで動けなくなりますからね」

「そうなると、月隠は大丈夫なのか?」

「アイツは元々の身体も強いですが、特殊な魔法で肉体の強化もできますのでそもそも自分達とは戦闘時の性能が違いますね」

「魔法なら、体力テストの時に結果が無効になるんじゃないの?」

「普段からこの黒い霊子を体内入れ続けているせいで身体の性質が変わって強くなっているんです」


 大悟達は太陽の異常なまでの高い身体能力の理由を知った。本人達からしてみたら魔法を使ったというよりは筋トレしてたら金属バットを曲げたとかそんな感じの延長線上なのだろう。

 話はそこで終わり大悟たちは直接太陽の元へ向かう事にした。

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