競技会八日目(午後の部その1)
太陽達は防弾、防刃、防火、防水のボディスーツに簡易的なアーマーと通信装置付きヘルメットを着用して、マイクロバスで試合会場へ送られる。建物地帯の一つにある四階建てのビルが太陽達の拠点となる。四階に上り、錘と旗を置いて試合開始前の必要となる準備は完了となる。
「試合開始たら、準備完了次第、俺が敵を引き付ける。防衛は任せるぞ」
「任せろ」
「うん、ソッチは任せるぞ」
「ラーメン奢りな」
「作ってやるから、それで我慢な」
試合開始まで四人はリラックスして雑談する。そこに一切の不安や焦りはなかった。お互いがお互いを信頼しているのが伝わってくる。
ヘルメット内の通信端末から音が聞こえてきた。
『オン・ユア・マーク』
『セット』
『――――♪♪♪♪』
「じゃあ、僕は準備するよ」
純二はそう言うと胡坐をかいて精神を集中させていく。数秒経つと周囲に黒い札が浮かび上がっていき、大漁の黒札の壁を形成していく。
「随分短期間でものにしてきたな」
「まだ、自分が作った事のある物しか作れないみたいだけど、凄い才能だよ」
「俺は纏ったりするくらいしかできねぇんだよな」
「出せるだけでも大きいさ、コイツはそれ以外を同時進行でやろうとする意識があってそれを治すのに苦労したな。コツコツ積み上げようと出来るのはそれはそれで才能なのさ」
太陽は辰馬を弄りつつ、窓から屋上へと飛び出す。それと同時に量産されてきた札がビルとその周囲へと散っていく。
「壮観、壮観」
その光景を目に納めた太陽は、思いっ切り息を吸い込み、声にならない咆哮と共に一気に放出する。咆哮は太陽の肺活量では考えられない程の衝撃波を四方に放つ。
「――んー、見つけた」
太陽は腕を広げて空中を掴み、綱引きをするような体勢を取って一気に引っ張る。
その瞬間、開始地点に泊まっていた選手たちが一気に伊月高のスタート地点へと引きずり出すと目的の人物を連れて決戦の地と決めた草原地帯へと連れていく。
✿ ✿ ✿
一方、残された辰馬たちは、
「あいつ。敵を残していきやがった」
「数チームの選手達は持っていったし良いんじゃない?」
「数チームって、日本語あってんのか?」
「良いだろ、意味は分かるし。で、アンタは何すんだ?」
陽斗は離れたところから見ていた黒い人影に話し掛ける。
「敵は混乱中だろ、なら攻撃して更に場を乱すのが吉だな。防衛なら優男とガチムチで事足りるだろ」
「優男って」
「ガチムチって」
「まぁ、言う通りだな、じゃあ。防衛は任せる俺達は行ってくるぞ」
「「がんばって」」
辰馬と黒い人影は窓を飛び出して混乱している集団に突っ込んでいく。辰馬は演習用の殺傷力の低い武器を持って効率的に人体の急所を突いて沈めていく。黒い人影は白い本をもってそこから出した人間を使って沈められた人間たちを安全な場所へ連れていく。
「何で、俺が面倒な事を」
黒い人影のボヤキは戦闘の衝撃音で掻き消されていく。
✿ ✿ ✿
太陽は草原地帯に到着すると、そこに建てられていた旗を二本とも抜き取る。
「一校減ったな、離れてろ」
太陽はそう言って黒帯で脱落した高校を包んで安全地帯の方へ運んでやる。
「さて、此処なら被害は少ないだろ。全員、かかってきなさい」
太陽は手招きと口で挑発する。それに乗ったのは月隠兄妹の事を何も知らない高校の選手達、連携して一気に叩こうとする。
近距離で責める人間と、遠距離で牽制する人間に分けて遠距離が分かりやすく軌道を見せて行動を制限し、近距離が止まった所を高速振動する衝撃波を叩き込む戦術だったようだ。
「良い腕だ」
しかし、それを嘲笑うかのように太陽は近距離で接近してきた選手の攻撃を直撃させたうえで腕を掴んで遠距離の選手に投げつける。味方を受け止めて攻撃が止まった所を太陽がドロップキックで纏めて吹き飛ばす。
「さぁ、お兄ちゃんが相手になろう」
太陽は黒い本を開いてモンスターを生み出していく。




