競技会七日目(午前の部その2)
昨夜の伊月高選手の襲撃事件の犯人たちは相当に焦っていた。白い奴の所為で許容できない人数が犠牲になっていた。しかも、頼りの綱は断ち切られて、予備の策も警備のために動員された人員により、ほぼ潰されていた。
「くそっ、どうすりゃいいっていうんだ!」
「荒れないでよ」
「ふぅ、………悪い。だが、どうする?」
「作戦中止の命令は出されていないわ。ニュースを見ると、日本支部は潰された後の様ね」
「作戦放棄は選択肢にない。本国からの刺客からの恐怖におびえるのは無しだ」
「作戦の目標の確認をさせてもらえる?」
「あ? まぁいい、伊月高の優勝の阻止だ」
「そう、他の高校のアシストをしても良いのよね」
「やらない方が良いだろ。相手はここまで試合の為に調整してきたんだ、あからさまにやれば失敗するしな、最悪怪我してその後がダメになって、逆に優勝から遠ざかる」
「それで、伊月高を狙う方が無難か」
確かにそうだと考えて女の方は今後の策を練る。
「ん、そう言えば、試験的に導入された兵器があるって聞いたけど」
「あ、渡されてねぇぞ」
「いや、かなりの極秘情報だったけど、軍部と繋がりのある人間がこのホテルにその兵器を持ってきているって話だよ」
「学生がか?」
「開発したのが学生らしい、実験もそいつが行うみたいだから試作品がこのホテルにも存在している」
「プランは既にできてるか?」
「今から、誘うつもりだった」
「嘘つけ」
最初からそのつもりなら、女は男の方を案内している筈である。具体案がないから候補に挙げていただけだろう。
男は部屋から出ると、選手たちの泊まる部屋のある棟へと向かうのだった。
「部屋は何処だ?」
『408号室』
女の方は機材を使って男の方をサポートする気の様だった。
男は女の指示に従って408号室――、太陽達の部屋に入る。鍵の方はオートロックだったが、ハッキングツールでどうにかした。そしてこの事は警備の人間にいち早く伝わる。
男もそれが分かっているから、数秒で室内を確認すると太陽のベットの傍にあるジュラルミンケースを手に取って扉から出ていった。監視カメラは女の方が無力化していた。
「戻る、箱は捨てていくぞ」
『処分できないわ。ステッカーでも貼っておきなさい』
「はいはい」
懐からキャラ物のステッカーを取り出して貼り付ける。簡単だがこれで誤魔化せる。男は女がいる部屋に戻るとケースの中身を確認しようとする。
「なんだ、これ?」
「電子ロックね。………今破壊したわっ」
ジュラルミンケースの内部が爆発する。その爆発音は秘密の会話用の防音壁にさえぎられた。
「本当にガキの持ち物か?」
「ガキじゃないわ、軍の持ち物よ」
「どんなガキなんだ?」
「知らない方が良いわよ。それより、シールドの能力を上げといて」
男は言われた通りにシールドの強度を上げる。女の方は手を濡れタオルで包んで熱に負けない様にする。
「じゃ、空けるよ」
「おう」
中には先程の衝撃では傷一つつかなかったであろう、不思議な機械と数枚のカードがあった。
「これが」
「そうね。これが日本国防軍の新型兵器」
ただ、二人には使い方が分からなかった。試しているとカードを差し込んで使うのだと考えた。
「入ったはいいが、スイッチがある訳でも、いや、あるな」
「パワードスーツらしいけど、そこのスイッチを押すのかな?」
「パワードスーツって事は装着すんのか。何処にだよ」
「腕とか?」
「邪魔じゃねぇか? カードを入れるのは便利だろうが、戦闘中で狙わらたら直ぐに外れるだろ」
「そうなると、お腹辺りかしら」
女が機械を男の腹部に当てるとそこから出てきた物体がベルトのように巻き付いた。
「なんか、かなり霊子を吸われるな」
「じゃあ、外して置きましょう。伊月高の選手のスタートまで少し時間はあるし、変装用のジャージを着て時間になったら行きなさい」
「ちっ、分かったよ」
男は午後のサークルレースの本戦の予選に出場する伊月高の選手達の為に簡単な作戦を立てる。




