競技会三日目(夜の部)
戻ってきた太陽はその他諸々の後始末を終えて、宿泊所の一室に帰ってベランダに出て何かしらの作業をしていた。辰馬は気になっているのか、その様子を見ていた。というより、手伝っていた。
「これが、話していた奴か?」
「まだ試作品だけどね」
「前回のと、何が違うんだ?」
「前回のも強力なパワードスーツだったけど、問題点としてただの人間には使用不可能な程に負荷が強力すぎた事だ。結果的に俺達兄妹以外に使える人間がいなかった」
「俺も協力したが、人の原型を崩さずにあそこまで小型化させたスーツとなると、普通の人間が来たら体が吹き飛ぶからな」
「筋肉断裂が優しく感じられるだろうな」
太陽は手元のガジェットを組み上げ、完成させる。太陽はそれを辰馬に持たせる。これは前々から太陽が研究していた身体強化用の魔法を組み上げ、それを使用する為の特殊なMAEだ。
「じゃあ、どうする?」
「大会後、いや担当競技が終わったらでいいだろ」
「そうなると、八日目かな」
「俺用のカードは?」
「いくつかあるから直感で気に入ったのを選んでくれ」
「じゃあ、あとの楽しみにでも取っておくか」
辰馬は太陽から受け取ったガジェットを銀色のアタッシュケースに入れると鍵を閉める。
* * *
明日から新人戦。加減の分からない一年生が多数出場するこの日。事故が多く起こるかもしれないので、大会委員会側は本戦以上に安全に気を使っている。
その安全処置を邪魔しようとする団体はいるものである。
何重にも強化された暗号通信を使って、事故を起こした魔導師が通信を行っていた。
「今日の様は何だ?」
「魔法は競技中に完璧に発動した。発動後に誰かが支えたとしか考えられない」
「あり得るのか?」
「バレる可能性は低かった。こうなると我々の予想を越える人間が気付いて防いだ可能性はある」
「続行するか?」
メンバーの一人が作戦の可否を考え、こう尋ねた。リーダー格の返答は、
「続行する。クライアントからの要件も達成していないし、中止の通達も来ていないしな。評判にも関わるし」
「「「了解」」」
意見が一致すると、通信は切れて話し合いは終わった。




