陰謀の匂い
騒然とした会場は事態の収拾を開始する。先ずは選手と観客たちの避難を始め、それが終わると現場の検証を開始する。
「台の繋ぎが破損していますね」
「何か切断されたような跡があります。もう片方の子の方には何も見つけられなかった」
「片方の子を勝たせるためだと考えると少し妙ですね」
「ええ、切断面の状態を考えると、切断されたら直ぐにでも台座は崩壊する筈だと思いますけどね」
「崩壊直前に台座が破壊されたとなると、何の意味もないのでは? 結果論ではありますが誰も怪我はしなかったわけですし」
「そこが、不思議ですね」
陰謀の匂いはするが、辻褄が合わない。そんな感じの空気と雰囲気が流れている。競技の中止をさせたいのだとしても不自然であった。台座が無くても最悪の場合はどうにかなる。誰も怪我はしなかったが、何もかもが中途半端であった。その場にいた調査員は揃って首をかしげていた。
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騒ぎの状況を聞いた太陽は妹のせいにされるかと考えたが。直ぐにその話はないと否定されて少しホッとしていた。正直、太陽が知るかぎり春日がそんな事をする子ではない。疑われたのなら大会委員会を弄ってどうにかするするつもりであった。
「で、自分にどうしろと?」
「………正直、原手亞高校の人達が何かやったとは考えにくいのよ」
「何か外部の人間が関わっていると?」
「その可能性は考えているわ」
それは一般人の太陽が調べて分かるというモノではない。関わっているとしても大した情報は出してこない。そういう隠蔽は必ずされている。
だが、そんな事は冬華だって百も承知である。
「けど、貴方なら魔法の痕跡を追えるのでは?」
「追えと」
「………今回の事件は不可解な点が多いのよ。試合自体は続けていく予定だけど、各校集まって生徒独自に捜査網を形成する予定なのよ」
「そこに加われと、………マネージャー業があるんですが」
「まぁ、無事な大会運営の方が大切よ。どっちか信頼している人間に任せることになると思うけど」
「………捜査の方に加わりましょう。あっちには先輩の方から伝えてくれますか?」
「分かったわ」
太陽は必要そうなものを手提げに纏めて崩壊の現場に向かう。
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崩壊現場には今回の調査に派遣されたであろう人間が先着していた。何人かは試合に出ていた者も見える。暇人の集まりだろうか。
「遅れて申し訳ありません。伊月高の月隠太陽です」
「いや、こっちも今来た所だから大丈夫だ」
「どんな感じですか?」
「台座崩壊には魔法が使われた事ぐらいしか分かっていない」
「具体的には?」
「台座の柱を切断してずらしたことで、落ちて壊れてしまった感じだね」
「成程」
太陽は切断された柱の場所へ案内してもらう。
魔法が使われたのなら痕跡が残る。魔法というのは霊子を変換して現実世界にエネルギーへと顕現させる。必然的に発生地点から魔導師までには霊子の軌跡が残ることになる。そういった軌跡は術師次第でいくらでも隠せる。
「まぁ、俺にしてみればあんまり意味がない」
太陽からしてみれば、どれだけ隠そうとあまり意味はない。太陽は痕跡に自分の霊子を干渉させて、魔導師への経路を無理矢理につなげる。そうして、場所を特定すると身体能力を活かして犯人が特定できる場所に向かう。
結構、目立つ動きをしているが太陽の存在に気付く様子はなかった。
「あれか」
太陽は小型のカメラとマイクを黒帯を使ってバレない様に鴉へと変化させる。ただ、只の鴉ではなく足が三本ある伝説上の生き物――、八咫烏であった。
見つけたとはいえ、今捕まえても証拠不十分で解決できるとは言えない。
「騒ぎは起こらないにこした事はない、か」
騒ぎが起こったら喜ぶ人間も出て来るだろう。解決するのも面倒だし、何も起こらないのが一番だ。
「仲間もいるだろうしな」
太陽は見張りの八咫烏を量産して、その場を後にする。周りの人間は最後まで太陽の存在を認識できなかった。




