男女の仲は複雑で
照日と春日は堪能し終わると朝日から離れていく。朝日は少し二人から離れて強面の日出の傍に寄り添う。
「そういや、兄さんは何の競技にでるんだ?」
「俺は出んぞ。エンジニアスタッフだ」
「張り合いがなさそうな競技会になりそうだな。まぁ、美人が沢山いるからナンパでもしてくるか」
太陽は暇そうにしている日輪の質問に答えると、日輪は少し不機嫌そうにしてナンパに意識を切り替える。
「見てんな。………やはり、目立つか」
「まぁ、ゴチャゴチャな個性の塊であれば、目立つのは仕方が無いです」
「疲れてるのならドリンクでもどうぞ」
「ありがとう」
少し疲れた様にしている日出と朝日にドリンクを差し出す太陽。二人はそれを喉に流して一息つく。
「ねぇ貴女、少しいいかしら」
後ろから朝日に声が掛けられる。ナンパではない、女子の声だからだ。そっち系からかもしれないが、敵意も少しはらんでいるから友好的な話し合いではないのだろう。
朝日は外面を意識した顔で応対する。目線で兄たちには手を出さないようにさせる。
「はい、何でしょう」
「私は原手亞高校一年の蓮華塚咲南と申しますわ」
お嬢様が現れた。原手亞というのは日出達が通っている四国にある学校だ。彼女は日出の同級生であることは朝日は悟った。
「ご丁寧にありがとうございます。私は朝日と申します。宜しくお願いいたします」
朝日の挨拶は丁寧で綺麗ではあるがそれだけだ。マナーは最低限だけの簡素なものだった。
「ありがとうございます。それで、貴女はうちの選手に何の用ですの?」
「何の用と言われましても、挨拶としか」
「挨拶? でしたら、そんなにベタベタとくっつく必要はないのでは? それにそんなに殿方……、殿方を囲うのははしたないと思いますわ」
「そう言われましても………。別に、そうしても問題はない間柄なので………」
少し、太陽達の方を見てニヤッとする朝日、けれど、咲南に向き直るときには顔は元に戻し、少し挑発的に言葉を発す。
「まっ、まさか、恋人、恋人ですの!」
咲南が大声を上げたせいで、日出に伊月高の男子から殺意の視線が向けられる。
「いえ、もう家族です」
「結婚してますの!」
段階飛び越えて突っ込んでくる咲南。殺意の度合いも一緒に段階が越えて来る。
ここで日出が待ったをかける。
「朝日、誤解が生まれてるだろう。俺達は兄妹だ」
「きょ、兄妹?」
「はい、月隠朝日が私のフルネームです。こちらの月隠日出の妹です」
悪戯っぽく笑う朝日。それを見て咲南は嵌められたと顔を赤くする。
「だ、騙しましたの?」
「いえ、質問には正直に答えましたよ」
「………しかし、兄妹とはいえ距離が近くありませんの?」
問い詰めは通用しないと悟ったのか別の切り口から咲南は攻め込んでいく。
「久しぶりですし、少しは甘えたいんです」
そう言って、朝日がしなだれかかると周囲の殺意が再燃する。
「だ・か・ら! くっつき過ぎなんですの!」
「大声をあげるのははしたないのでは」
「っ! コホン、失礼しました。しかし、今大会で兄である月隠さんに頼るのは無しですわよ。彼を困らせない様に。月隠さんも彼女の要求に応じて手を抜かないようにしなさい」
「「承知致しました」」
それだけ言い残すと咲南は颯爽とその場を立ち去っていく。嵐のような少女は前触れだったのか来賓からの挨拶が始まる。




