青春キャンプファイヤー
太陽達はキャンプファイヤーの準備を進める。まだ、男子たちの一部は太陽が与えたダメージから回復できてないようだった。そんな奴等は放って置きつつ、太陽は木を組み立てて燃焼剤を下に詰める。キャンプ場のスタッフの指示通りに有志の男子生徒達が手伝っている。
「いやー、今回は早く組み上がったよ。ありがとうね」
手伝ったキャンプ場のスタッフから褒美の飴を貰った。そこからは生徒達が集まるまでは待ちの時間。点火の時間は全員集合なのだ。
「おーい、そろそろ点火するぞー!」
先生が声をかけ始める。そろそろキャンプファイヤーの開始時刻だ。今は全員集まっているが、点火が終わり次第解散、自由時間だ。
筋肉質な先生が用意していた松明に火を付けて、組木の根元に点火する。火は勢いよく引火していき一気に組木が燃え上がる
「おー」
「綺麗、綺麗」
辰馬と太陽の感性の死んだような二人の両眼にキラキラ光るキャンプファイヤーが写る。それ位しか二人の眼には輝きはない。傍から見ると死んだ目の二人がキャンプファイヤーの方向の虚空を見ている。何を見ているのかは誰にも分からない。
そんな太陽達に気付いた友人二人が近づいてきた。
「よーう、お二人さんは黄昏てるな」
「そんな事ないよ」
「そうだ」
「じゃあ、何してんだ?」
「火を見てるとな、不安が消えるんだ」
「?」
「不安を火にくべる感じでな意識を火に向けて投げ込む感じでな」
「…………」
「するとな、心の中がスッと軽くなる感じがしてな。燃える炎を見ていると心身が軽くなる感じがするんだ」
「深い深い、闇が深い」
闇深いセリフを吐いている太陽。その様子が一種のトランス状態に入っているようで陽斗は軽く引いている。
「ん?」
「どうした?」
「妹が困ってるから、行ってくる」
遠目には大勢に囲まれて困っている妹、朝日の姿が目に入った。近づいていくと声も聞こえてきた。
「月隠さん。踊りませんか?」
「いえ、自分と踊りましょう」
「いや、俺と踊ってください」
幾人もの男子生徒が近づいて朝日に迫っている。太陽はそんな男子生徒達の横から近づいて、手を伸ばす。
「話したいことがあるから、踊ろう」
「あっ、はい」
結局、強引に行った。朝日は太陽の言葉にのって差し出された手を掴み、囲む生徒をかき分けて、キャンプファイヤーの周りを囲っている生徒達の列に入る。太陽と朝日は手を組んでフォークダンスの構えを取る。陽気な音楽が聞こえ始めると、リズムに乗ってダンスが始まる。朝日は特上級の美少女だが、太陽は動揺もなく組んで踊っている。
「それで、話とは?」
「ああ、土曜日だったかな。朝華の授業参観があるのよ」
「それに行ってこいと?」
「いや、付いて来て欲しい」
朝日は意外に思った、太陽は異様な外見のせいであんまり人前に出る事を好まない。大事にしている女の子のためとはいえ、人前に出る行事に自ら出て行こうとしているのは珍しい事だった。
「付いて行くのは別にいいですけど、朝華はなんて言ってたんです?」
「んー? 朝華から来てくれって頼まれたからな。行けるなら行ってやらなくては」
現代は授業参観で集まることは少ないが、こういったイベント事は小学校位なら普通に残っている。太陽たちが前までいた所では生徒数が少なすぎて、毎日が授業参観みたいになっていた感じもあり。今の朝華の様子があまり分からないので、太陽はそれを知りたかったからというのもある。
「そういや、その後に保護者面談がありましたね。それにも二人で?」
「ああ、お願いな。本物の保護者は忙しいし」
「はいはい、分かりました」
太陽と朝日は話と踊りを一通り済ませると、列から離れて太陽の友人たちの方へ戻る。辰馬たちに理子と七海が加わり、朝日の友達、心美と琴乃、彩もいた。
「お疲れ様」
辰馬が躍り終わった太陽たちを労う。何人かもそれに続く。
「お二人共、凄く息があってましたよ」
「まぁ、兄妹だしね」
「そうだね、兄妹だし」
熱があるような七海の言葉に冷めた返しをする太陽と朝日。因みに太陽たちに恋愛感情はない。血は繋がっていないが、太陽にとっては朝日達がどんな美貌や魅力を持っていたとしても彼女達は妹で庇護の対象であり、恋愛の対象には入っていなかった。
「で、お前らはどうすんだ?」
「何が」
「まだ時間は続くようだし、ここにいるなら一回ぐらい踊ってくればいいじゃん」
「そうですね。誘われるのも面倒ですし、お兄様付き合って頂けますか?」
「了解」
辰馬は心美に付き合ってダンスの輪に入る。他も純二と七海、陽斗と理子が組んでダンスの輪に向かった。純二と七海は初々しい雰囲気だが、理子と陽斗はいがみ合いつつもやりきるためにしっかり構える。
「兄さん。琴乃ちゃんと踊ってあげてくれない?」
「…………何で?」
「いや、兄さんは暇そうだったし。この子は入りたそうだったけど相手がいなかったし、丁度いいかなって」
「あの、良かったらよろしくお願いしたいです」
「……まぁ、良いけど」
太陽は内心を面に出さず、快く手を差しだして琴乃を誘う。辰馬たちが加わった輪の中にギリギリで入り、直ぐに構えを取った。加えて、彩と朝日も同じ様なタイミングで加わってきた。彼女達は二人で踊るようだった。
「よろしくね」
「はいっ!」
太陽と琴乃では身体能力が違い過ぎる二人なので、太陽は負担をかけない様になるべく琴乃に合わせて動く事にする。
「…………凄いですね」
「何が?」
「いや、私に合わせて動いてくれてるんですよね。何というか、私、かなり好きに動いてる筈なんですけど、それでも動きが合うというか他の人とやるよりも踊りやすいですから」
「それは良かったよ」
朗らかに語りかける太陽。琴乃はそれに解されたのか、少し踏み込んだ話をする。
「……実は、あのですね」
「………?」
「この前の事で、彩の両親の二人が、た、太陽さんにお礼をしたいそうなんです」
「いや、別に気にしてもらう必要は、無いんだがな」
太陽はあの後、彩の両親の事について調べたら彼女の両親は父親の方が実業家でかなりの規模のグループ企業を運営している。母親の方は元国防軍の軍人。かつて西側からの局所的な進行を受けた際に、相手側に大打撃を与えて有名な人だった。そんな二人に呼ばれると思うと太陽は頭が痛くなってきた。
「いや、誘拐されて無事でいられたのは太陽さんのお蔭です。私も何かしたいんですけど、生憎出来る事が無くて」
「いや、お礼が欲しくてやったわけじゃないし」
「それでも助けてくれてくれました。だから、お礼をしたいんです。何ができるか分かりませんが…………」
琴乃は最初は自信がありそうに言ったが、最後はしょんぼりした声で落ち込む。太陽は彼女達との仲を険悪にさせたいわけじゃないので、誘いに乗ることにする。
「まぁ、つごうはそっちに合わせるようにするから、空いてる休日を言ってくれ」
「あ、でしたら、連絡先を下さい。もっと、別の話もしたいですし」
「ああ、良いよ。これが終わったらに成るけど」
「はい!」
話が纏まり、太陽と琴乃は踊ることにする。甘酸っぱい空気がキャンプファイヤーに彩られる。ココが二人の第一歩、まごう事なき青春の一ページでありました。




