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学生魔導士の騒動録~その力は誰のために~  作者: Dr.醤油煎餅
第一章 入学は誰でも一歩目
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初めての巡回

太陽は指定されたエリアを巡回している。そこは所謂、裏方のエリアの様で場所が区切られてそこを各部がしっかりと守っている。正直やる事もないので、部活動の活動を見学させてもらっている。


(ここは、ロボット研究部か)


 白マスクの風紀委員が来てロボ研の中を観察している姿は、中にも外にも異様なプレッシャーを与えている。しかし、太陽は周りに与えている圧を少しも気にせずに、少し中を観察しただけで別へ移る。

 見回りというよりは部活動の見学を主に巡回を続ける太陽。文化部の裏方が此処には集まっているようで、鉄道研究やゲーム開発、アニメ、手芸と多岐に渡る部活が活動している。


「意外と色々あるんだな……」


 これくらいの種類があれば妹達も何かしらの部活に興味を持ってくれるかもしれない。すると、一つの研究会に目が行った。


「……MAEの研究会」


 どうやらオリジナルのMAEやそこに組まれるプログラムの開発を行っているらしい。伊月高で何回か出来の良いMAEやプログラムがあった事は聞いているがその噂の研究会を見つけた。しかし、一応巡回中なので見回り中にソッと見る位しかできない。太陽は名残惜しくも少しだけ見て別に映る。

 すると、見覚えのある人物たちがこっちに入って来た。


(純二と七海だ)


 二人が美術部の裏に入って来たという事は表で勧誘されてこっちに入って来たんだろう何で二人で? と思ったが観察を続ける。


✿  ✿  ✿


 純二は七海の見学に付き合っていたら、強引な美術部の先輩に引き入れられて裏側に来ていた。


「いやー、ごめんね。いつもは教室で描いたりするんだけど、今回は外で描いてもらうね。まぁ、年に何回かは外で写生したりするからね」

「そうなんですか?」

「うん。まぁ、今日はそんな非日常を経験して貰えたら、いいかな。初々しい感じで弾けよおうっ!」

「あはは、まぁ、頑張ります」

「可愛い彼女と一緒に頑張ってね!」

「へっ! いやっ! 彼女とはそいうんじゃなくて!」

「おいおい、ボーイ。そんな風に言って、彼女を困らせるんじゃないの」


 七海は隣でからかわれている純二の影響を受けて顔を真っ赤にして俯いている。美術部員は更に揶揄いたくなる衝動が出てきたが押し込んで別の新入生を迎えに行く。


「…………」

「…………」


 気まずい空気が流れる二人はそれでも勧められたとおりにキャンバスを借りて絵を描き始める。純二は前に置いてある絵の一つを模写し始める。七海も同じ様なのに目を付けたのか模写をする。色鉛筆で描いている。(絵具は部費で買わないといけないので節約のために色鉛筆で代用している)

 すると、沈黙に耐えられなくなったのか七海が口を開く。


「……同じのを描いているんですか?」

「ですかね。右から二番目なんですが、どうです?」

「私もです。あの青色の色彩が綺麗で、私も真似したいなって思って…………」

「そうなんですか。俺は、海を題材にしているみたいで真似してみたいなって思って」


 なんだかんだで話は弾み、続ける。純二と七海はいつの間にか緊張を忘れたようで、互いに和やかに話をする。


「不純異性交遊~はんた~い~!」

「うわっ!」

「ひゃっ!」


 その間に出てきた白マスクの新入生が甘酸っぱい雰囲気に水を差す。


「何すんだよ、太陽!」

「いや、不順異性交遊の気配を感じて。風紀委員として見過ごせないなと」

「そ、そんな訳ないだろ! というか、今日なったばかりなのにどうして使命感に目覚めているのさ」

「まぁまぁ、大きい声は周りに迷惑だぞ。検挙しようって訳じゃないんだから、それに別に本番に入らなきゃイチャコラしてくれて構わないわけだし」

「そうじゃないって、言ってるだろ!」


 純二の顔も赤くなっているが、それ以上に七海の限界が近そうだった。


「彼女……、異性、交遊…………、イチャコラ///」


 プシューという効果音が出てきそうな感じでフラフラしている七海は見ていて面白いもであったが、無暗にいじめるような真似をすれば太陽は妹に怒られてしまうと思ったのかフォローはしておく。


「まぁ、何もないなら別にいいんだ。何もないんだろ」

「あ、当たり前だ」

「じゃあ、異常なしって事で――」


 すると、太陽の胸ポケットにある地図端末が振動する。どうやら、近くでもめ事があったようなので事態の収拾に向かう。


「仕事だ、邪魔して悪かったな」


 一言告げると、そのまま立ち去る。


*  *  *


 太陽は数十秒で現着した。異常な身体能力は持ってはいるが今回は場所が近かったからである。


(トラブルは、伝統芸能部と服飾部)


 そんなのもあるのかと感心する。どうやら新入生を取り合っているらしい。伝統芸能部は茶道や華道、琴なんかを習っているらしい。服飾部は服を作ったりしてコスプレやコンテストに出展している様だ。


(騒ぎの中心は心泉の様だが。辰馬も巻き込まれてるのか)


 彼の実力なら振りほどいて突っ切る事もできるがそんな強引な手を使うのは問題だろう。という訳で間に入ってやる。


「どうされたんですか?」

「あっ! …………風紀委員か?」


 太陽の姿を見た服飾部は怪訝そうな顔をする、伝統芸能部も似たような顔をしている。予想は出来ていた事なのでつけていた腕章を見せる。


「風紀委員です。取りあえず、両者落ち着いて」

「…………っ、あ、ああ、わかった」

「は、はい、了解です」


 太陽の変な迫力に押されて両部どっちも黙る。そして状況から察した考察を両部に伝える。


「おそらくは、この新入生を自分の部に入れたくて争っていた感じですよね」

「ええ、はい」

「その通りです」

「それじゃあ、今日はどちらも諦めて明日は伝統芸能部が優先、明後日は服飾部が優先で勧誘すればいいでしょう」

「えっ、そ、それは」

「部活は生徒の自主性の上で参加を検討する課外活動です。他の部に取られようと貴方がたの強引な勧誘のせいだといえるでしょう。彼女達も見たいものがあるでしょうし今回は諦めて下さい」

「うっ、…………わかりました」

「はい、了解です」


 両部共に心泉の勧誘を諦めたようである。彼女なら他に勧誘する部も多いだろうから、取られる確率は上がる。それに太陽が提示した条件はあくまで伝統芸能部と服飾部の間の取り決めだ全部活がその通りに動くわけでは無い。


「という訳で、自由に見回りに戻ると良いよ」


 心泉と辰馬に離れるきっかけをやる。もう少し見回りたかったのだろうが、2人は騒ぎになるだけだと判断して離れて行った。

 太陽は多少原状回復を手伝ってやり、別の見回りに向かう。すると、また騒ぎの通知が入る。今度は体育館。急いで向かう、余波で迷惑をかけない様になるべく静かテントの屋根を八艘飛びのように飛んでいく。


✿  ✿  ✿


 太陽が現着したのは通報から一分弱。どうやら体育館内で騒ぎが起こっている様だった。中に入って確認すると二つの部が争っている様子だった。片方は防具を着ていて竹刀を持っている剣術部、もう片方は道着を着て膝とひじにサポーターが付けられている武道部。どちらも魔法を使って動きを補助したりする競技の部活だ。どうやら、武道部が剣道部に因縁を付けられているらしい。


「何度も言ってるだろ! 今は俺達の時間だと!」

「いや、もうやる事もないんだし、譲ってくれても構わないだろ」


 片方は小バカにしたような顔でもう片方の部活を馬鹿にしている様だった。両部で仲が悪いのだろう。その影響で小競り合いが発生している。取りあえず、喧嘩しているなら止めねばなるまい。他の風紀委員はまだ来ない。しかし、口喧嘩までなら止める必要もないだろう。成り行きを見守ることにする。


「だからって、いきなり割り込んで入ってくる事ないじゃないか!」

「やる事がないんだろ。だったら先に譲ってくれて構わないだろ。それとも、この後もだらだら何か続けるのか?」

「だらだらって。…………アンタらもどうせ準備なんかしてないし、どうせ、しょうもない事しかしないだろ!」

「あんだと…………?」



 太陽は止めてもいいのかと思ったが、先輩風紀委員は来ていない地図端末から察するに他でも騒動が起こっていてその対処をしているのだろう。面倒になってきたが乱闘になる前に介入することを決定する。というより、乱闘が始まろうとしていた。


「どうやら、直接分からせないといけねぇようだなぁっ!」

「やんのかよ。…………お前ら!」


 全員がMAEに霊子(エナジー)を注入して魔法の発動準備に入る。その中でも部長同士は特に早かった。他と比べてもとても素早く魔法を発動させる。しかし、発動させようとしていたのは剣術部側が空気を圧縮して風刃を作り出す魔法、武道部側が運動エネルギーを嵩増しして動きを高速化させる魔法。


(どっちも、対人に向けての威力じゃない)


 感知していた術式から推定して対人無機でないことは確認。決定事項を実行に打つ。剣術と武道の対決が始まりそうになったが黒いひも状の物質に全員が拘束される。発動直前だった魔法はすべて無効化させられる。


「んだぁっ、コレ!」

「と、取れねぇ!」

「だ、誰だ! 誰がやってる!」


 黒い縄は凄まじい力で両部の部員を拘束している。その傍にいた剣術部員が勝手に因縁をつけ始めていた事に困っていたマネージャーも驚いているし、因縁付けられていたことに困っていた武道部のマネージャーも驚いている。


「ハイハイ、一先ず落ち着きましょうね」

「く、クソっ! お前か!」

「そうです、俺です」

「ふざけた格好しやがって。舐めてんのかぁ!」


 太陽は恫喝する先輩に少しもビビることなく向き合っている。そのまま顔を掴んで自分に向き合わせる。


「ふざけてんのはどっちだ。舐めた事して、順番も守れねぇのか?」

「はっ、それがお前に何の関係がある」

「風紀委員だ。乱闘騒ぎに規則違反および魔法の不適正使用により拘束させてもらう。罰は、受けてもらいますよ、先輩」


 太陽は低い声で顔を近づけて睨み付ける。片方だけ露出した赤い目がひどく不気味に思えてき始める。太陽に詰め寄られている先輩はいきなり現れた恐怖で体を後ろにやろうとするが拘束されて動けない。


「何をする気だ…………」

「知らないです。後で処分の通知が来るだろうから確認にしておいてください」

「そ、そうか」


 怪しい奴が前にいて何をされるか分からない恐怖から少し解放される。随分普通の処分を言い渡された。目の前の風紀委員の異常さから悪い事しか考えられなかった。


「そっちも同じ様に処分されるますが受け入れますね?」

「…………分かった。決定に従う」

「そいじゃ、報告しておきますね。総部会からの通知は楽しみにしておいてくださいね。それとまだ時間は残ってますんで使ってくれて構いませんよ。まぁ、多少はギャラリーが引いていますが」

「それは、まぁ、規定通りにやるよ」

「そっちもそれでいいですね」

「ああ、分かったよ」


 という事で両部を開放して足早に体育館から去っていく。持ち場から離れてもいたので、持ち場の区画に戻るが、その日は特に動きもなく太陽の初日の風紀委員活動はそこそこに活躍して終わった。

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