地味に唯一無二
「わー、きれい!すっごーい!写真撮っとこうっと。」
「超上手いじゃん。誰が描いたんだよ?」
朝、教室の後ろ黒板の前には人が集まってる。
「ロードくんが描いたのよ!すっごい才能だよねっ!」
あたしは絵を見て驚いてる人たちに鼻高で説明する。
ロードくんってすごい人なのよ!唯一無二の人なのよ!
あんま目だってないけど。
みんなに気づいて欲しい。
ロードくんの素晴らしい才能に。
「賽ノ宮すげぇ。おまえ審査員特別最優秀新人賞決まり!」
「賽ノ宮くん、天才、逸材、大喝采!2年2組の文化財!うぇーい!」
「・・・褒めてくれてありがとう。描いたのは僕だけどヤシロさんのデザインなんだ、これ・・・・・」
照れながら控え目に答えてるロードくん。
うふふ、みんなロードくんのアメージングな才能に気づいたようね?
あたし、きっとロードくんなら素敵に仕上げてくれるってわかってた。
あたし、知ってたから・・・・・
この後ろ黒板にチョークで描かれたアート。
4月バージョンよ。
これはクラスのみんなへのメッセージ。
この絵はね、
シロツメクサ・・・・・クローバーのことよ。
空まで続いてる彼方まで広がるシロツメクサの丘。
手前にはズームにした一本の丸くてかわいいお花と四つ葉のクローバー。
その花に止まろうとしてる一匹の蜜蜂さん。
添えられた文字は・・・・
I could meet you
ーーーin the class room 2ー2.
One meeting ,One opportunity
ーーーin my lifetime.
英語には自信がないけれど・・・一期一会。クラスのみんなとの出会いを大切にしたいと思って考えたの。
ロードくんのお陰であたしのデザイン画以上に素敵な仕上がりだわ。
「やるじゃない。賽ノ宮くん。向岸さん。」
クラス副委員長の鷺坂サキさんが感心した顔でロードくんとあたしの肩をぽんっと叩いていった。
「マジ?超ハイクオリティーじゃん!よっ、ゴールデンコンビっ!」
リアがあたしたちを冷やかした。
「もう、リアったら。でも確かに最強掲示委員かもねー、あたしたち。」
あたし本当にそう思ってる。
ロードくんは・・・・・?
ただ、控え目に微笑んでるだけ。
こんなに上手いんだもん。あたし、ロードくんはもっと威張ったっていいと思うわ。
5月は武将にしようと思ってるの。ガチカッコいいやつ。
6月は相合い傘の男子と女子。雨の中のロマンチック。
7月はマリンブルーの海の俯瞰。海面下には巨大魚のシルエットと雲の影。手前には翼を広げたカモメ。
こういうの考えるのって本当に楽しい。
今年一年、みんなに喜んでもらえるように頑張ろう。ロードくんと。
あたしは4月の黒板アートが大好評だったことにすっごく気を良くしていた。
だって、予想以上にみんなこんなにたくさん褒めてくれてるんだもん。
そして帰りのSHRで。
永井先生が言ったの。
「素敵な絵を描いてくれてありがとう。掲示委員さんたち。他の先生たちも2組は素晴らしいって褒めくれてね、私も鼻が高いわ。ほーっほっほ。」
先生は業村くんの方を見て頷いた。
「でもね、いくら係の仕事とはいえ、放課後勝手に教室内に男女二人きりで居残りしてはいけないわ。風紀の問題がありますよ。次からはクラス委員長の業村くんか副委員長の鷺坂さんのどちらかに残ってもらうようにね。わかりましたか?」
小柄で丸顔の永井先生はあたしに優しげに微笑んで見せたけれど、どうもその口調は尖ってる。
なあに?まさかあたしとロードくんが放課後の教室で・・・・・とかって思ってるわけ?んなわけないでしょ!
想像力やばくない?やめてよ。あたしたちの仲へんに勘ぐるの。
「はい、わかりました。」
「はい・・・・すみません。」
あたしとロードくんは同時に言った。
あーあ。お目付け役が要るだなんて。鷺坂さんならいいけれど、業村くんなんかがいたら楽しい時間が台無しだよ?
鷺坂さんは硬式テニス部の有望選手らしくて放課後は部活へ一目散だもの。きっと残ってはくれないわ。
昨日だってあんなにしぶしぶだったのに・・・・
鷺坂さんにはとてもじゃないけど頼めない。
ってことは、やっぱ・・・・・・・・
・・・・・・・・・そうなるよね?
・・・・・そんなの最悪!なんでこんなことになっちゃうのよ!
ああーん、何とかなんないかな?




