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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第3章 外界溶解は異界への開口 ~永劫回帰
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君を離さない ~無限転落〈ロード〉

「ヤシロさんっ!」


 僕が異変に気がついて立ち上がり振り向いた時には、もうヤシロさんは落ちる寸前だった。


 床はひび割れて一部はもうなくなっていた。


 彼女の足元も既に崩落しかかっていた。


 足元を取られ後ろに倒れかかっていたヤシロさん。


 なぜかヤシロさんの周りだけ時がスローになったような、ビデオをコマ送りで見てるような動きになっていた。



 僕を見たヤシロさんは倒れながら言ったんだ。




『来ないでっ!』




 どうして?


 さっき僕が言った事を怒ってるから?



 ううん、そうじゃない。


 彼女がどうして僕に『助けて!』って、言わなかったか、瞬時に僕の心に伝わってきたんだ。



 これは勘違いなんかじゃない。



 君って子は・・・・・


 どうしてこんな究極の場面でさえ君は・・・こんなふがいない僕の事を想ってくれてるの?



 もういい。



 君の僕への想いが、楓さんによる蔵人への想いの勘違いだったとしても。


 僕はそれで君に慕われているのならば、君から愛を与えて貰えるのならばそれで本望だ。


 僕だってこのヤシロさんへの想いが勘違いだろうが思い違いだろうがお門違いだろうが構うもんか!


 だって僕は事実、こんなにも君を必要としてる。



「それは無理だ。だって、僕はヤシロさんがいなくなったら生きていけないから」



 僕は心のままを口にした。



 床が空虚に舞い散るその上で、続けて落ちようとしているヤシロさんに向かって両腕を広げて飛び込んだ。



 ヤシロさんの驚いた顔が刹那見えた。


 そしてちょっとだけ微笑んだ顔も。



 こんな暗闇で、二度と君を一人にはしない。


 きつく抱き締めた。



「僕は君を離さない」



 僕たちたちは煌めく星屑と黒い欠片とともに常闇へと落ちて行った。




 僕たちは抱き合ったままゆっくりとまっ逆さまに落ちてゆく。


 どこまで続いているんだ?


 回りにともに舞い落ちていたキラキラも、黒い破片も、とうに四方へ散らばって行き無くなっていた。


 ここには終わりなど無いように思える。無限トンネルのように。


 このまま僕たちは永遠に抱き合いながら落ちて行くのか?


 君と一緒ならば、もうそれでもいいかもしれない。



「ロードくん、見て!あそこに青い光がある!」


 ヤシロさんが下を見て言った。


 僕からは背中側で見えない。


「僕には見えないよ」


「あたしが取るわ。だから、あたしを離さないでね」


「放すわけないだろ」


 ヤシロさんはもぞもぞ体をずらしていって、僕はヤシロさんのウエストを抱え込む体勢になった。


 逆さまのままヤシロさんは僕の肩越しに体ごと腕を伸ばした。


「もうすぐよ!体感あと3メール」


 ヤシロさんは身を乗り出すので僕はぎゅっと彼女の腰をつかんだ。


「おいで、青いホタルさん・・・・・取った!」




 フっ・・・・・




 僕たち、止まった・・・


 あー・・・ひとまず難関クリア。


 いつまで続くんだろう?

 もう松ぼっくりの力もわずかしか残っていないはずなのに。



 ここは・・・?



 僕は粗末な小さな部屋の木の床の上に転がっていた。



「やったわ!ワープ出来たっ!ロードくん!あたしたち最強じゃない?」


 ヤシロさんが興奮した顔で僕の顔を見下ろしている。


 僕のお腹を跨いで座りながら。



 やっぱり、君は小悪魔だ・・・



「・・・・・ヤシロさん、あの、この体勢はちょっっとどうかな?」


「・・・あは、ごめーん!ロードくん。プロレスみたいだったね。弟とたまにこんなんなのよ。おやつをめぐる対決で。イブキが反則してくすぐってくるから結局あたしが負けちゃうんだけどね。えへへ、重たかったよね?」



 無邪気に照れてるヤシロさん。


 ・・・僕が弟のイブキくんと対決する日は近いかもしれないな。




 ここは薄暗い板張りの和室。隅っこには薄っぺらい布団がきれいに畳まれて積まれて小さな屏風で隠されてる。床には何枚もの絵が散らばっている。小さな白い何枚もの絵ざら、太さの違うたくさんの筆。


 ああ、そうか。ここはきっと蔵人の家だ。



 ガラリ



 立て付けの悪そうな入り口の引戸が開いた。



 蔵人が帰って来たんだ!


 僕とヤシロさんは顔を見合せた。



「・・・・・楓、これはどういうことなんだ? 二日前に枝に結ばれていたこの歌・・・」



 縦に折り目が幾重にもついた紙を広げ、蔵人は小さな声で呟いた。


 そこには流暢な文字で和歌らしきものが一首だけかかれているようだ。




    玉の緒は 継がれしここに 神()ぐる


          ()しと見し今 やがて恋しき 


                           楓



「私に別れの歌・・・・・辛い今もやがて思い出となると」


 蔵人は眉根を寄せて右手で額を押さえた。


「だが・・・・・命が継がれた?どういうことだ?」



 ()がり(かまち)に座り込み考え出した。




「あたしは直接見てたからよーく解るわよ!楓ちゃんは身籠ったのよ。だから二人の赤ちゃんも蔵人くんも護ろうとしているの。気がついて!蔵人くん!」


 ヤシロさんが言った。


「ヤシロさん。これは過去に起きたことだから変えられないよ。これは幻なんだ。映画を見てるのと同じだ」


「・・・・・そうだったね。そんな神様らしき男の声も聞こえて来たことがあるの。ガラ悪い声の時もあったけど」



 ・・・・・多分、黒鮒様と・・・ガラ悪いのは霊鳥大鷲キザシのことかな。



 信じられないけど、本当にいるんだ。


 黒鮒様もキザシも。



 どこかに存在するパラレルワールドに。



 それは僕たちの世界とごく稀にリンクすることがあるんだ。








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