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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第3章 外界溶解は異界への開口 ~永劫回帰
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すれ違う気持ち ~瓦解開始〈ヤシロ〉

 

 あれれ?


 何だかさっきより暗くなったみたい。


 だんだん松ぼっくりの光が弱まってるみたい。


「ねえ、ロードくん。あの松ぼっくりの灯り、暗くなってきてない? それに下に下がって来てる。ロードくんなら手が届きそうなくらいだね」


「うん、きっと残された力が少しになって来たんだ。僕たちに幾つもの幻を見せてきた訳だし」


 やっぱり、ロードくんは知ってるのかもしれないって気がするの。


 この不思議な出来事の秘密を。


「・・・あの・・・あの松ぼっくりは・・・ロードくんのだったの?」



 この一連の出来事はロードくんが起こした、なんてこと?


 だって、神社の息子だったなんて、あたし初耳だし、何か他にも隠された何かがあったりして・・・

 だって神様の近くに、黒鮒(くろふな)様の近くにいる存在なわけでしょう?



「ううん、なんて説明すればいいんだろう? 今までのことは・・・僕たちの心の奥の意識さえしていなかった部分がこうなることを求めていたらしいんだけど・・・・・」


 ロードくんはわずかに眉をしかめながら話した。


「それが強い霊力をあたえられたが為に現実化してしまった・・・んじゃないかと僕は推測してる」


「強い霊力?」


「うん、こんなこと信じられないかも知れないけど、ほら、心霊スポットとかパワースポットとかあるでしょ?()って、溜められるんだ。場所とか物にも。人にだって気合いが入るとか言うだろ?」


「・・・そうね」


「今朝、僕の頭に鳥が松ぼっくりを落としてきてね、僕が拾ったそれに()が、通常自然に溜まるなんてあり得ないほど溜まっていたらしいんだ。それが僕たちの無意識の要求とリンクして結果、怪異が起こされたって・・・思う」


「あたしたちが望んでこうなった・・・?」


「うん。僕もこんな目に遭うことを望んでたなんてちっとも思わないけれど・・・過去の僕たちが、僕たちの魂に染みつけられた本人でさえ気づかない深い所にある思念がそうさせたのかもって。」


「楓ちゃんと、蔵人くんの思念?」


「うん、でもね、これまでの二人の幻影のストーリーを見ただけのことでは・・・こんな怪異を起こすほどの起因が、ファクターが弱すぎると思うんだ。こんなことを起こしてまで僕たちに大昔のことをわざわざ伝えようとするなんて・・・。そう思わない?」


「ううん、あたしは思わないわ。だって、楓ちゃんは来世で蔵人くんと結ばれることを信じて残りの人生を耐えて過ごしたのよ? 一生我慢して。だとしたら今蔵人くんと結ばれなかったら人生やり直す意味ないよ!」


「・・・ヤシロさんは・・・僕自身を見てくれてるのかな・・・」



 ロードくんの表情はとても暗い。


 何か勘違いしてるよ、ロードくん。



「あたしは・・・あたしはロードくんを見てロードくんを好きになったの。昔のことなんて関係ないの。あたしが楓ちゃんだった記憶なんてないし。まさか、ロードくんは違うの? 過去の追憶に操られてあたしの絵を描いただけなの?」


「・・・わからない。僕はこんなにヤシロさんのことを想っているのに・・・それが僕自身の想いなのか蔵人の想いなのかわからなくなってきて・・・」


 ロードくんが膝を立てて座ったまま両手で顔を覆った。



 何を言ってるの? ロードくん。ひどいよ・・・


 ロードくんのあたしへの想いは偽物だったとでも言いたいの?



「・・・ロードくん・・・それってひどいよ。あたしは・・・あたしはロードくんとだからロードくんだからキスしたのに! 他の誰かだったらあんなことしないの!」



 あたしはガッと立ち上がってロードくんから離れて星屑のステージに乗っかった。


 涙が溢れてきてほほを伝うのがわかったから。



 あたしは自尊心にカッターを突き立てられた。


 あたしと付き合いたい男子はロードくんだけじゃないんだからね!


 でも、でもね、あたしは・・・ロードくんじゃなきゃ・・・




「ヤシロさん! ごめん。違うんだ・・・僕は・・・ただ・・」


 ロードくんはうつむいたまま頭を抱え込んだ。



 あたしの想いは届いたはずだったのに。


 そうしてこんなんになっちゃうの?



 ・・・あ。



 宙に浮いてあたしたちを照らしてくれていた松ぼっくりは更に光を失ってここの暗さが増したと思ったら不意にポトリと下に落ちた。


 あたしは下にバウンドして転がった鈍い光を放つだけになってしまった松ぼっくりを拾おうと、指に触れた瞬間に・・・



 ・・・・・?


 あれ?



 シューズの裏から伝わる不穏な響きの微細な振動。



 これは・・・?



 それは先ほど出来上がったばかりの、あたしのこの星屑のステージ瓦解(がかい)の合図だった。



 それはまったくの無音だった。



 あたしが乗っかっている星屑のステージ部分だけに一瞬で細微な亀裂が広がった。



 あたしの足元の一部が欠けた。



 ここからはスローモーション。


 穴は広がり、黒い欠片(かけら)は、深いどこまで続くかわからない闇へとゆっくりゆっくりと落ちてゆくのが隙間から見えた。キラキラ煌めく星屑たちも引き連れて。



 嘘っ!



 あたしはよろけて後ろに倒れる。


 これもまるでスローなコマ送り。


 ああ、今度こそあたし本当に死んじゃうんだ。


 この常闇に飲み込まれて。


 いやっ、怖いよ・・・




「ヤシロさんっ!」


 ロードくんが気がついて慌てて立ち上がって振り向いた。



 来ちゃだめっ! こっちに来たらロードくんまで落ちてしまうの!


 ステージはもう崩壊して後は下に落ちるだけ。



「来ないでっ!」



 ーーーあたしは叫んだのに



 ロードくんは言ったの。


「それは無理だ。だって、僕はヤシロさんがいなくなったら生きていけないから」


 泣かないように耐えてる顔にわずかな笑みを浮かべて。



 ごめんなさい、ロードくん。


 ロードくんの想いを疑ったりして。



 ロードくんは後ろ向きに倒れてまさに落ようとしているあたしにダイブして抱きついた。




「僕は君を離さない」




 あたしたちは星屑と黒い欠片とともに常闇へと落ちて行った。







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