君、想えど ~終焉一夜〈ヤシロ〉
さあ、あと残りは2つ。
楓ちゃんはどうなっちゃったの?
早く教えて!青いホタルさん。
あたし、すごく気になるわ。他人事とは思えないもん。
だって、あたしとロードくんにそっくりなんだもん。楓ちゃんと蔵人くんって。
これってどういうこと?
ただの偶然なんてありえないよ?絶対に!
あたしたちに何らかの関係あるに違いないの。
『えいっ!』
あたしはふわふわ飛んでいる青い小さな光を両手で包むように捕まえた。
さあ、今度はどこに?
ふっと、目の前の闇の濃さが薄まった。
ここは・・・・・またあの掘っ建て小屋。
真夜中ね。
今日もまだ月明かりが続いてる。
ずいぶん風が強い夜ね。木々がこんなにざわめいて。
あたしが思うに、この音は不安をかきたてる力があるの。
あたしの心もさわさわと心細いわ。ロードくん・・・・
どこにいるの?
「蓮津姫様のお弔いも今日終わりましたわ。どさくさに紛れ、今日がお会いできる最後なのです。蔵人様」
楓ちゃん、気丈に話しているけど、目がうさぎさんよ?
いっぱいいっぱい泣いた跡。
蓮津姫様の死。その上突然発生した理不尽な側室話。
無理もないよ。
「楓・・・・・いっそのことお暇を取って城から出てはどうか?私は宮廷絵師は諦め、町の絵師になろう。そうすれば私と楓殿、二人なら何とか暮らせよう」
楓ちゃんの肩をつかみながら真剣な眼差しの蔵人くん。
こんなこと言ってくれるなんて相当の覚悟だよ?
夢を諦めるんだもん!
それに・・・こんなにそっくりだもん。まるでロードくんが言ってるみたいで複雑な心境。
あたし楓ちゃんがちょっぴり妬ましい。こんなに好きな人から愛されてるなんて。
「・・・嬉しい。蔵人様がそのようなことを言ってくださるなんて。でもね、あたしがあれを断れば、弟の仕官への道が絶たれてしまう。我が家は武家といえども末端の末端。お断りなど出来るものではないのです」
「・・・・・楓、」
あたしの弟のイブキだったら絶対に自分の仕官よりあたしの結婚阻止を選んでくれるに決まってる。両親だってそうだよ!
武家って、しがらみにしがらわれてしらがんでるっていうの?とにかく辛いとこね。
「蔵人様は立派な宮廷絵師になって下さいませ。それはあたしの願いなの。あたしは蔵人様の絵が大好きなのですわ。あたし、あなた様の下さったあたしの絵は肌身離さず持っているの。」
「楓・・・・・」
「あたしの愛するのは、蔵人様ただひとり。蔵人様、必ずや立派な絵師になると楓に約束してくださいませ!」
「楓。私は・・・・・なんと不甲斐ない男・・・」
「こうなったのは蔵人様のせいではないの。これは・・・せんのないことだもの」
蔵人くんは楓ちゃんを抱きしめた。
二人とも泣いてる・・・・・
「蔵人様とあたしの最後の夜なのです・・・」
「楓、私の心は楓のもの。離れていようと・・・」
「・・・あたしの真心だってずうーっと蔵人様のものよ。さあ・・・忘れられない夜にしてくださいませ・・・蔵人様」
「楓・・・・・」
きゃーっ!ラブラブっ突入だわ!どっどうしようあたしっ!
おろおろっ
フっ・・・・・
切られっちゃった・・・・・
またまたまた暗闇に引き戻されたあたし。
あまりのロマンティックぶりにドキドキが止まらないわ。
だって、あたしとロードくんにそっくりな二人なんだもん。
それでも結ばれぬ運命の二人・・・・・
諸行無常ね・・・
あと1つだけ残ってる小さな青い光が、闇に不規則な光の線を描きながら漂う。
『さあ、あなたが最後のお話ね?』
あたしはふわふわとあたしの周りを飛び回る青い光に話しかける。
楓ちゃんと蔵人くんは結局どうなったの?
青い光さん。
教えてちょうだい。
出来れば救ってあげたいの。
あたしには何にも出来ないって解ってるのに・・・・・
解ってる・・・・・けど。
あたし・・・
あたし、楓ちゃんがあたしにそっくりだから他人事だと思えなくて・・・




