新たな友だち
お昼休みになった。
この学校には学食なんてないの。
あるのはお昼だけに開く小さな購買とショボい自動販売機。
販売機では菓子パンとかサンドイッチ、ジュース、なぜかあと、プリンが買える。
既に卒業したある一人の生徒の、"学校でプリンを食べたい"という熱い熱心な要望がついに生徒会を動かし、そして導入されたらしい。
どうせならフレンチクルーラーもあったらよかったのになー。
あたし、1日日課が始まってからお昼はリアとふたりでお弁当食べるようになっていた。
でもこの日から変わったの。
「ねえ、ふうらちゃんひとりで食べてるから誘ってもいい?」
リアが言った。
「もちのろんだよ!」
泉ふうらちゃんとリアは同じクラスだったんだって。
去年はグループが違っててそんなに行動をともにしてたわけじゃ無かったんだけど、個人的にはわりと気が合う子らしい。
リアがふうらちゃんを誘って3人でお弁当タイム。
リアのおかげであたしに新しい友だちが増えた。
ちょっとわくわくする。どんな子なんだろう?今まで話した事無かったな。
今日までのあたしの個人的印象では・・・いつも無表情でまっすぐ前向いている。
ハシビロコウって鳥?そうそう、あれ、思い浮かぶ。
まあ、かわいい謎の置物みたいな子って感じかな。
小柄な不思議系の女の子で、ショートの髪が良く似合ってる。
「リア、ヤシロ。ボクを誘ってくれてありがとう。」
ふうらちゃんの話し方、抑揚がなくてアンドロイドっぽい。
面白い子だね。
「ヤシロ、ボクにはボクにしか見えていない世界が見えてるんだ。この教室の中でも。ボクには今のこの重なってひとつに見えてる世界をレイヤーに分けてそれぞれ見ることが出来る。それを個別に組み合わせれば隠れた事が見えてくるから。」
・・・・・・よく、わかんないよ?一体何のこと?
「また始まった!ヤシロ、ふうらはね、ちょっと変わった子だけど、すごく頭がいいの。現状を把握して未来をシミュレートするのが得意なの。ある意味預言者よ。私も去年それで助けてもらったことあるんだ。ねっ、ふうら。」
リアはそう言ってからサンドイッチの角を大きくかじった。
「ボクを仲間に入れてくれたお礼にひとことだけ言っておくよ。ヤシロ。」
ふうらちゃんはカクっと首の向きを変えてあたしを見た。
「ヤシロはあの男子、賽ノ宮くんにあまりかまわない方がいい。」
「えっ?どういうこと?」
「このままでは賽ノ宮くんに災厄がふりかかる。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
あたしとリアは顔を見合わせた。
「ちょ、ちょっと!ふうらったらいきなり何言ってんのよ?ヤシロに悪いよ!クラス最初のカップルに向かってさー。」
リアがあわててふうらちゃんに言った。
「ち、違うから。そんなんじゃないよ、リア!ロードくんとあたしフツーの友だちだから。」
そうだよ。あたしのこのクラスでの友だち1号がロードくんってなだけなのよ。
そりゃ、別にロードくんとだったなら噂になったって別にどうってことないけどさ。
「・・・・・その辺はボクにも定かではないけど。ボク、ヤシロも賽ノ宮くんも嫌いじゃないから教えてあげただけ。どうするかはヤシロの自由だ。」
あたしはちらっと、ひとりベランダでおにぎり片手に遠くを眺めてるロードくんを見た。
風に吹かれてるロードくん。か細い線。まぶしい光でにじんだシルエット。軽くなびく柔らかそうな髪。
素敵な写真のワンシーンみたい。
今のふうらちゃんの予言。
まるであたしが未来でロードくんに酷いことするみたいじゃない?
そんなことあるわけないよ。あたしがロードくんに迷惑かけることなんてするわけない。
こんなに優しくて繊細な目と感性を持っているロードくんに。
本人が言ってるんだから間違いないの。大丈夫。
このあと、後ろの黒板にふたりで描くのよ。
ロードくんが褒めてくれたあたしデザインの絵。
楽しみだな。




