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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第3章 外界溶解は異界への開口 ~永劫回帰
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困惑の礼物 ~霊界干渉〈ロード〉

 ここの世界は・・・?


 この黒い空疎な空間


 僕はまだ生きている。


 感じる心臓の鼓動。



 はっ!



 ヤシロさんはどこだ!


 僕はあんなにきつく彼女を抱き締めていたのに、どこへいってしまったんだ!



「ヤシロさーん!僕はここだー!」



 何度叫んでも他の音さえしない。


 聴こえるのは僕の焦りの呼吸音だけ。



 くそぉ!



 誰が何の目的でこんな事を?


 あの松ぼっくりは一体何だったんだ?


 ヤシロさんを返せ!今すぐに!


 そうでなければ僕はこの世界の全てを許さない!!



 僕は首に下げている黒鮒様の御守りをシャツの中から引っ張り出した。


 これには僕の家に伝わる神様の体の一部が入っているらしい。


 開けた事はないかららしいとしか言えない。


 おじいさまから開けてはいけないと戒められているから。



 僕は御守りを両手のひらで挟んで握りしめて祈る。


 ヤシロさんと僕を助けて下さい!黒鮒様!


 僕は生きている。


 だからヤシロさんも生きているはずだ。


 万が一、ヤシロさんが死んでしまっていたのなら僕は・・・僕は思いつく限りの呪いの言葉を吐きながらこの世界を僕の血で存分に穢して死んでやる!!


 ヤシロさんがいない世界で生きてなんていられるものか!



 《ふっ、ふっ・・・・・ずいぶんと急に勇ましくなったじゃないか。小僧》



 僕の頭の中に直接響いて来た男の声。


 ふざけんな!こんな時にまるで久々に会った親戚の叔父さんみたいなお気楽な口調で!


 こいつが僕たちをこんな目に遭わせたのかっ?



「誰だっ!」



 僕は振り向いて後ろを確かめてからまた前を見て、びくっと息を飲んだ。



 いきなりそこに人が立っていた。



 僕の目の前には、ストレートロング銀髪の渋いおじさんの姿が浮かび上がっていた。粋に、はだけさせた着物を着ている。



「おまえは誰だっ!ヤシロさんを返せ!」



 僕は叫んだ。



 《落ち着け。小僧》



 《この我を神として崇め、市井(しせい)の人々と我をつなぐ使命を背負いて我の下、生まれし者よ。(われ)がお前を()(ふところ)に呼び寄せたがために》


 《小僧、自分の心さえままならない者に、どうして他人の、たくさんの人々の安寧を乞い祈ることが出来ようぞ?》


 《ここは心を強く持ち(おのれ)の力で進め》


 《おまえはこの試練を越えねばならない。あのお嬢ちゃんと共にな》


 《我はただお前たちを見守るのみ》


 《それに・・・これは、今起きている事は私の仕業ではない》


 《これはある者から、親愛なるおまえへの礼物(れいもつ)のようだが》


 《おまえのあの大鷲の絵、あれな、ずいぶんとご本人から気に入られたようだぞ? はっはっは》



 ・・・・・消えた!


 何だったんだ?今のおじさん。


 言いたいことだけ言ってさっさと消えてしまった。



 ・・・あの人、言ってたよね?『この我を神として崇め、市井(しせい)の人々と我をつなぐ使命を背負いて我の下、生まれし者よ』って。


 ってことは・・・まっ、まさか!? 今の黒鮒様?


 今のシブいおじさんが・・・・・?


 嘘だろ?


 僕は握っていた御守りを見た。


 暗闇の中、ぼぉーっと鈍い光を放って形を浮かび上がらせていた。


 ・・・僕の家の守り神、黒鮒様。



 黒鮒様はこれは僕に越えられる、と思ってるんだ。



 だったら!



 僕は気持ちを強くした。


 御守りをシャツの中に戻した。



 それにしても・・・誰だか知らないけど、ずいぶんひどい贈り物じゃないか。


 僕にそんなことしてくる知り合いなんて全く心当たりはないのだけれど。


 っていうか、こんな力持ってる知り合いなんているわけないよ。



 黒鮒様が言ってた大鷲の絵って、霊鳥大鷲のキザシのことかな?


 そうだとしたら、これはキザシの仕業ってこと?


 ・・・まさか。


 そんないつとも知れないくらい昔の言い伝えの霊鳥が今も本当にいるわけないよ。昔にだって本当に存在していたかどうかなんて怪しいものだし。



 この現代に、そんなこと。


 そんでもって僕にこんなことしてくるなんて・・・・・ありえないって。


「霊鳥大鷲(おおわし)キザシが・・・・・? 無い無い、そんなの・・・」





 ーーー信じる者は救われるっていうぜ?



 若い男の声!



 同時に、上の方に青い美しい小さな光が一つ現れた。



 それは鳥の羽が舞うかのような軽やかさで僕の前にひらひらゆらゆら落ちてくる。


 僕はゆっくりと舞い降りてくる青い小さな光を手のひらで受け止めた。




 途端にーーー


 僕の見ていた世界が変わった。







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