愛してる ~生死諸共〈ロード〉
僕は気が急いて、並んだ机の角にガンガンぶつかりながらヤシロさんに駆け寄る。
「ロードくんっ!」
蒼白になったヤシロさんが並んだ机をすり抜けて僕に駆け寄る。
「ヤシロさんっ!」
僕はヤシロさんの手を取った。
ここから脱出しなければ!
ああっ!
もう間に合わない!
床が砂丘の砂のようにさらさらになった。
机や椅子も何もかも砂となって崩れ落ちてゆく。
僕たちの足は砂に捕らえられ、じりじりと引きずり込まれ始めた。
まるで僕たちはアリ地獄にはまった虫状態だ。
アイスクリームのようにどろどろと溶けてしまった壁。
あっという間に足首まで砂で埋もれたヤシロさんと僕。
脱出なんてもう無理だ!
出口さえ見当もつかない。
このまま砂に埋もれるしかないのか?
何か方法が・・・・・?
無理だ。
こんな強い霊力に抗う力なんて僕にはない。
せめて、ヤシロさんだけは絶対に護りたい。
僕の大切な人を。
僕の全てを使っても。
「ヤシロさんは僕が護るから。大丈夫・・・僕の命に代えても・・・」
僕はヤシロさんを抱き締めた。
砂に埋もれてゆくのを止める術など無い。
もう、ふくらはぎまで埋もれた。
想像以上の圧。
捕らえられた僕たちの足はもう抜くことさえ叶わない。
ヤシロさんが涙目で僕の胸にすがっている。
「怖いよ!ロードくん。あたしたちこのまま死んじゃうの?」
「だっ、大丈夫だ。賽ノ宮家の守護神は僕たちを見捨てはしない・・・と、思う・・・」
正直、僕はこの僕が持つ胸の御守りにすがる事以外、出来ることなんてない。
「ロードくんっ!『思う・・・』って何よ!もうっ!こーゆー時は嘘でもいいから『見捨てはしない!』って言ってよ!」
「ごめん。ヤシロさん。僕はこんな非常時まで頼りないなんて。」
君の言う通りだ・・・・・
こういう時は嘘でもそう言うべきだったかな。
でもね、僕はどうなるかわからない、いい加減なことを君には言えなくて。
でもね、僕は僕の命に代えても君を護ろうとしている事は本当だよ。
ヤシロさんが黙りこんでしまった。
ごめん。
こんな僕で。
「・・・ロードくん、あたし・・・・・」
涙を目尻に残して濡れた睫毛の瞳を僕に向けた。
ヤシロさんと目が合う。
僕は君の切なげな潤んだ瞳から目が離せない。
足元はずんずん下へ引っ張られているという危機の真っ只中だというのに。
ヤシロさんも僕を見たまま目をそらさない。
僕に何かを訴えてくる君の瞳。
そして、僕のくびに腕を回して・・・・・
瞳を閉じた。
・・・・・・・・
これは・・・・・?
この時、僕の頭は、思考を停止させた。
僕の脳は何も考えてはいない。
それは僕の体の勝手な反応。
僕はヤシロさんのくちびるに僕のそれをかさねる。
僕は君を愛してる。
僕の人生で初めて感じるこの気持ち。
この胸の痛み。
心臓が破裂しそうだ。
君にも響いてる?
この僕の大きく脈打つ鼓動。
ああ、息が・・・苦しい。
一度離れて見つめ合う。
そしてまた君に口づける。
君は僕の頭をその腕に抱いたまま僕たちは砂に埋もれて行く。
僕たちは一つになったままに。
僕たちはこのまま死んでしまうのか?
今はもう、それでもいい。
僕はもう君を離したくはないから。
僕は死んでも君を離さない。
僕は君だけは助けようと、護ろうと思っていたのに。
勝手だな。
僕たちは死ぬのも生きるのも一緒なんだ。
僕は、どちらか一方だけ生きるのも、死ぬのも、
許さない。




