乙女の夢 ~怪異で実現〈ヤシロ〉
「怖いよ!ロードくん。あたしたちこのまま死んじゃうの?」
涙がにじんで来た。
「だっ、大丈夫だ。賽ノ宮家の守護神は僕たちを見捨てはしない・・・と、思う・・・」
「ロードくんっ!『思う・・・』って何よ!もうっ!こーゆー時は嘘でもいいから『見捨てはしない!』って言ってよ!」
「ごめん。ヤシロさん。僕はこんな非常時まで頼りないなんて。」
ロードくんは泣きそうな顔で無理やりちょっと微笑んだような顔をした。
ああ・・・あたしったら!
ロードくんになんてことを言ってんのよ!
あたしのバカバカっ!
ロードくんにだって、こんなワケわかんない怪奇現象をどうにかするなんて出来るわけないじゃない!
ごめんなさい、ロードくん・・・・・
ロードくんだって、すごく怖いはずなのに。
それなのに命に代えてもあたしを護るって言ってくれたのに!!
ロードくんは本当にいい人だわ。
それなのにあたしったら責めるようなこと言って!
あたしってなんて思いやりがないのよ!
本当にごめんなさい・・・ロードくん。
でも・・・・・
もう、どうしたらいいのかなんてあたし、見当すらつかないよ。
こんな非常事態マニュアルは読んだことも聞いたことないもの。
こんなとき未来の猫型ロボットが現れてジャーンってお腹のポケットから便利グッズを出して欲しい所だけど、そううまくはいかないよ。
・・・もしかしてあたしたち、最悪死んじゃうかも・・・
どうなっちゃうかわかんないよ!!
あたしとロードくん。
ほら、あたしたち、ずんずん砂に引き込まれてる。
止められない。止まらない。
自力で脱け出すなんて、もう・・・・・
そうだわ!
あたしこのまま死んでしまったら業村くんがただ一人の、最初で最後のキスの相手になってしまうじゃない!
そんなの嫌っ!
神様!
せめて最後は好きな人とキスして終わらせてっ!
せめて最期に乙女の夢を叶えてください!
あたしはすぐさま覚悟を決めた。
「・・・ロードくん、あたし・・・・・」
あたしはロードくんの胸にすがりながら斜め上を向いてロードくんの目を見つめた。
ロードくんと目が合う。
あたしは目をそらさないまま胸にすがり付いた腕を伸ばしてロードくんの首に回した。
こんな緊急時に何してんだろう、あたしったら。
でも・・・・・このあたしの想いが伝わらないまま死んじゃう訳にはいかないよ!
あたしはそのまま瞳を閉じる。
お願い!
ロードくん。
あたしの想い、受けとめて・・・・・
そして・・・・・
あたしのくちびるはロードくんの感触に触れた。
あたしはロードくんの頭を包み込む。
甘い、でもドキドキで胸が苦しい。
一度離れて見つめ合う。
そしてまたくちびるを確かめ合った。
あたしの理想的ファーストキスの予定は二人きりの夕暮れの浜辺でだったけど、二人きりで砂の上という点は同じだね。
そして、相手が優しくて素敵な王子様というとこも。
ロードくんにあたしの想いは届いたけれど、あたしたちは・・・・・
そのままあたしたちの脚は急速に砂に飲まれてゆく。
もう、だめなの・・・・・?
一縷の望みすら無いの?
あたしたち二人、全部埋もれるの?
無情。
あたしたちもう、腰まで埋もれた。
そうよ・・・こんなものにどうやって対抗しろっていうの?
砂時計は止められないよ。
もう、脱け出すなんて無理みたい・・・・・
あたしたちは砂に埋もれてどこに落ちていくの?
ーーーまさか、あたしの終わりの日が今日だったなんて。
思いもしなかった。
お父さん、お母さん、イブキ。
あたしは死んじゃうけど、でも、最後は意外と幸せだったよ・・・・・
伝えられなくて、ごめんなさい・・・・・
ロードくん・・・・・
不思議よ、あたし、いきなりワケわかんないこんな拷問に遭ってるっていうのに。
こんなにも冷静に最期を迎えようとしているなんて。
ロードくんと二人だから?
ロードくんの腕の中だからかな・・・・・




