"好き" ~奇っ怪の口火〈ロード〉
「何言ってるの? ロードくんは素敵な人に決まってるじゃない!」
「・・・いいんだ、ヤシロさん。そんな気を使わなくたって」
僕は自分の事はわかっているから。
「気を使うって・・・? 違うよっ!ロードくんは本当に素敵な人なのよ?あたし知ってるから!」
むきになって僕に必死な顔で訴えてくるヤシロさん。
君って女の子はどうしてそんなに無自覚で不用意なの・・・・・?
ヤシロさんみたいな素敵な女の子からそんなマジな顔で『素敵な人』、なんて目の前で言われたら僕の心がどんなにかき乱されるか解ってない。
僕は真に受けて、勘違いしそうになってしまうんだ。
「あたし、ロードくんのこと好きだから!」
・・・・・一瞬、ドキッとした。
また・・・・・君ときたら。
これは友だちとしての言葉。
わかってる。
「・・・ありがとう。ヤシロさんが友だちになってくれて本当にうれしいよ」
でも、僕はそれ以上に、友だち以上に、君のこと想ってるんだ。
僕は、今ここで僕の気持ちをはっきり伝えよう!
絵だけに頼ってちゃだめなんだ!
それだけでは伝わらない。この想いは。
言葉にしなければ。
僕は・・・本当はヤシロさんが業村くんと付き合うなんて嫌なんだ!
他の誰だったとしても。
だって、僕は1年前からずっと君を想っていたんだから。
行けっ!僕っ!言葉ではっきり伝えなきゃ!!
「あのっ、ヤシロさん!聞いて。僕もヤシロさんが・・・」
僕が言いかけた時、教室がグラッと揺れたような感覚に襲われた。
地震?
いや、違う。
めまい?
僕は周りを見回す。
・・・・・嘘だろ?
教室の壁が歪んで溶けて変形していく!
何なんだ!この奇っ怪な現象は!!
・・・・・霊的・・・現象?
いつの間に?
こんなになってから気づくなんて。
・・・・・教室中に濃圧的な霊気が充満しているのを肌で感じる。
僕には特別な力なんてないけれど、ここまで濃い霊力にさらされたら、さすがに分かる。
だって僕は普段、鳥居の向こう側の神聖な結界に囲まれたエリアにある家に住んでいるんだから。
この空気の違いは明らかだ。
こんなになるまで気がつかなかった!
ヤシロさんのことで気持ちが一杯で。
なんで急にこんなこと?
この霊力の源はどこだっ!
僕はワイシャツの中にいつも首からさげている黒鮒様のお守りをシャツ越しに握りしめた。
ーーー嘘だろ?
空間にダイヤモンドダストみたいなキラキラが大きな渦を巻いて広がって行くのが見えた。
まさかっ!
発生源は僕が持って来たあの松ぼっくりじゃないか!
あんなのが自然に出来るなんてあり得ない。
誰かの、何者かの行為だ。
なんて強い力が封印されてんだ!
これから何が起こるんだ? 誰がこんな事を? 目的は?
見当もつかない!
とにかくヤシロさんをここから出さなくては!
不測の事態も考えられる。
ヤシロさんが僕の机の上の松ぼっくりを見て怯えた顔をしている。
ヤシロさんにも見えてるのっ?
僕は気が急いて、並んだ机の角ににガンガンぶつかり乱しながらヤシロさんに駆け寄る。
「ロードくんっ!」
蒼白になったヤシロさんが並んだ机をすり抜けて僕に駆け寄る。
「ヤシロさんっ!」
僕はヤシロさんの手を取った。
ここから脱出しなければ!




