My first impression of you 〈ロード〉
ヤシロさんが来たっ!
不意に廊下の向こうにヤシロさんの姿が現れた。
・・・よかった。見た感じ、いつもと変わらないヤシロさんだ。
僕はヤシロさんが悩んだまま暗い顔をしてるんじゃないかって心配していた。
僕が送ったメッセージもスルーされてしまっていたし・・・・・
ヤシロさんは僕がここに立ってること気がついてる。
でも、特に反応無し。いつもの人懐こい笑顔はなくちょっと気まずい雰囲気・・・・・
僕のこと、まだ怒ってる?
ああ、もう、そこまで来た!
どうしよう・・・・・
緊張でどもってしまうかも・・・・・
ダメだ!こんなんじゃ。僕はリアさんにあんなに特訓してもらったんだ。
僕はお腹に力を入れて息をふーっと吐いて鼻から息を吸い込む。
また はーっ、と息を吐いてから、そこまで迫ったヤシロさんの目を見た。
ーーー落ち着いて、ゆっくりでいいんだ。
自分に言い聞かせる。
「・・・おはよう、ヤシロさん」
「あ・・・おはよう、ロードくん。ロードくんもサプライズに参加だったんだ?あれ?リア教室にいる?」
・・・ホッとした。
僕と普通にしゃべってくれた。
まだ怒ってて避けられたらどうしようかと実は不安だったんだ。
ヤシロさんは僕もここに来てたこと聞いてなかったみたい。
リアさんも泉さんも、この週末に僕の世話焼いてくれてたこと、ヤシロさんには全く言って無いんだ!
僕は二人の親切に応えるためにもしっかりしなきゃいけない。
「うん、今はいないけどすぐ戻るよ」
「そう、なら大丈夫かな。タイミングが大切らしいから。ねぇ、ロードくん、髪切ったんだ?似合ってるけど別の人みたい・・・」
ヤシロさんが僕を見て微妙な顔。
僕がこんなしゃれたカットの髪型なんて・・・本当は恥ずかしかったのだけれど。
リアさんの道場で特訓した次の日、リアさんの妹のアルちゃんが僕のために予約してくれてた美容室になぜかアルちゃんが現れ、なぜか僕と一緒にヘアカタログ見出して、あーだこーだ言って来て、なぜか勝手に美容師さんと相談し出して、いつの間にかこのスタイルにされた。
カット中、カッコいいお兄さんスタイリストが鏡越しに、『かわいい世話焼き妹さんがいていいですね』なんてクスリとされたっけ。
「変・・・かな?」
「ううんっ、そういう意味じゃ・・・」
ああー・・・もう今さら髪型なんて!
僕は君にどう思われていようが肝心なことを言わなければ!
「ヤシロさん。目をつぶって!」
「えっ!なっ、何で?」
ヤシロさんがすっごくビクッとした。
僕何か変なこと言った?
「あのっ、僕、前黒板にちょっとアート描いてみたんだ。ヤシロさんに見て欲しくて」
「わかったわ」
僕が説明すると、硬く口元だけで微笑んだ。
この反応、あまり興味無し?
僕は緊張してるし、ヤシロさんの微妙な表情や仕草の意味さえ勘ぐってしまう。
・・・ダメだ!弱気は封印!
僕は教室の後ろ扉の前までヤシロさんを誘い、目を瞑ってもらった。
戸を開ける。
僕はヤシロさんの左肘をつかんで教室に入る。
教室の後ろの真ん中まで連れて行ってから、まっすぐ正面を見るように向きを整えた。
よし。
「このままいいって言うまで目をつぶっていて」
「うん」
僕は教室の正面の黒板前まで移動する。
「まだ?ロードくん」
ヤシロさんが目を閉じたまま言った。
さあ、覚悟の瞬間だ!
ーーーヤシロさんに僕の心が届きますように!
「・・・・・いいよ。ヤシロさん。僕の心を込めて描いたヤシロさんを見て」
祈りを込めてヤシロさんに返答した。
これは僕が去年初めてヤシロさんを見た時の印象を基に描いた。
ほほをほんのり染めふわりと微笑むヤシロさん。そのバックには光る朝露を乗せた清らかな朝顔の花を添えて。
1年前のあの日、部室の前で。
ヤシロさんに話しかけられて間近で君の顔を見た瞬間、感じた不思議な高揚感。
とても印象的だった。
僕の目に一瞬で焼き付いてしまった君の顔。
愛おしくって、なつかしいような、不思議な気持ちに包まれた。
君のふたつ結びにされた、ちょっとくせ毛の髪が気になる。
もしかしてこの子はくせ毛を気にしているんじゃないかって。
君はそのままでだってとてもかわいいっていうのに。
そして君にはみずみずしい朝顔がよく似合うんだ。君だってこの花、好きだよね。
華やかな牡丹やエレガントな芍薬よりも、こういうくるくるした蔓性のかわいらしい花や野の花が。
なぜ、僕はそんなことを思ってしまったのだろう?
初めて見た女の子に。




