I love you を忍ばせて〈ロード〉
僕たちは誰もいない教室でヤシロさんを迎える準備をしている。
僕はこの白い一本のチョークに心を込めて黒板に向かっている。
「ヤシロが今どの辺にいるか見てみよう」
泉さんががスマホを出した。
「・・・早いな。もう駅についてこっちに向かってる!このままじゃ予定より15分も早く着く」
「ロードくん、間に合うの?」
リアさんが焦りの表情。
「・・・えっと・・・・・どうかな・・・もともとギリギリで余裕はないんだ、でも何とかするよ」
「ボクが昇降口で少し引き留めよう。ヤシロが階段を上がる前に連絡する」
「えっと、じゃあ、私はロードくんを手伝ってふうらの連絡が来たらベランダに隠れているわ」
僕のために二人ともこんなにも親身になってくれている。
僕は今からヤシロさんに僕の想いを伝える。
振られるかも知れない。
でも、いいんだ。
ヤシロさんが僕の想いを迷惑と感じるなら僕は今まで通りまたこの想いを胸に閉じ込めるだけ。
もし、ただ想うことさえ迷惑だと言われたら僕は・・・・・
ダメだっ!
こんな弱気ではこんなに僕に親切にしてくれたリアさんと泉さんに怒られてしまう。
僕は胸が詰まるようなぐっとくる感覚に襲われた。
もう、引き返せない。
僕は今更ながら覚悟を決めた。
もうすぐ7時半だ。
「では、ボクはそろそろ下に行く。幸運を祈る!賽ノ宮くん」
泉さんが無表情で右手親指を立てた。
「ありがとう、泉さん」
「頼むわよ!ふうら」
ーーーそれから10分後。
出来た!!
僕の黒板アート。
「出来上がりね!すごーい!時間より早く出来たね!」
リアさんが雑巾で回りを拭く手を止めて僕を見た。
「うん!リアさんと泉さんのおかげだよ。ほんとうにありがとう!」
「ほら、ここら辺に『君が好きだ』とか『I love you!』とか『I have a secret crush on you!』とか、一言書いときなさいよ!」
「えっ!それは・・・」
「いいから、いいから。ほらっ!早く!時間無いよっ」
「はっ、恥ずかしいじゃないかっ!そんなの文字に書いちゃったら」
「・・・・・・・」
リアさんのジト目。
「わ、わかったよ」
僕はせめて英語の方が救われる気がしたので絵の中に隠し文字で『I love you』と入れておいた。
これならパッと見ではわからないだろう。
「あら、ロードくんは文字の入れ方も芸術的ね!いい感じ。写真撮っとこうっと」
リアさんが数枚スマホに収めた所で泉さんからリアさんにメッセージが届いた。
「来るよ!ヤシロ」
「・・・・・」
「落ち着いてがんばるのよ!我が弟子よ!」
「・・・・・」
「・・・大丈夫。自信持って!」
いてっ! (>_<)
リアさんが僕の背中をバシッと叩いた。
僕は前のめりによろけながら返事をした。
「はい、師匠!」
「ふふふ、私はベランダで目も耳も塞いでるから、気にしなくていいから!夕べのゲーム実況の続きでも見てるから。それに・・・ロードくんは意外とモテてるみたいよ? じゃあねっ」
リアさんはニカっと笑った。
そしてベランダに出ると窓越しに僕にピースしてからしゃがんで見えなくなった。
僕は一人、黒板の前に立って教室の戸を見詰めた。
ヤシロさんにはリアさんのバースデーサプライズをすると言ってあるらしい。
リアさんは、『誕生日は本当は3月だけどねー』と笑っていた。
緊張が僕を包む。
ドッキン、ドッキン、ドッキン・・・・・
やけに心臓の音が大きく聞こえる。
僕の人生初めての告白。
黒鮒様!
我が賽ノ宮家の守り神よ!
どうか見守っていて・・・・・
廊下に出て教室の扉の前に立ち、ヤシロさんが来るのを待った。




