ロードくん調いました〈リア〉
今回はちょっとだけ長くなっちゃって.._〆(´Д`)
ついに、ついに来たよ!
天下分け目の反撃の日が!
先手は業村くんの予告無き黒の一手だった。
さあ、不利な後手に回ったロードくん。
この勝負、白の持つコミの6目半は私とふうらのアシスト。
私たち、負けられないよ!
月曜日の早朝。7時
校庭横の9の松の石垣通路にて。
「はあーーーーーーーーーーーーーーっ!」
「よっし、一定に20秒いったわね!ほら、やればできるのよ!ロードくん!ウォーミングアップはオッケーね。」
5月の朝の清々しいそよ風とこれからにわかに強くなりそうな日差しが私たちを照らしている。
私やったよ。
出来るだけのことを。
ヤシロとふうらとの友情のために。ついでにロードくんのために。
ロードくんは先の金曜日の放課後特訓から始まり月曜日の今日まで、数々の試練に耐えたの。
この発声練習と滑舌修正。
ほんのちょっと気をつけるだけで全然かわるのよ。
これで4月の初日の自己紹介で、もぞもぞ話して気弱をさらしてたロードくんはいないわ。
ロードくんはこの土日、本当にがんばったのよ。ヤシロのために・・・・・
二日前の土曜日・・・・・
うちの道場に集まった私たち3人・・・とおまけ。
ロードくんとふうらと私。ついでに妹のアル。
そこでまず行われたのは、ふうらによる理論的な『困ったちゃんへの対応講座』。
ロードくんはふうらによってにわかディベート術を伝授されたの。
口下手なロードくん。
このままでは業村くんのようなしたたかな男子にはやられっぱなしだからってふうらちゃんが。
意見相違の相手と話す時には、ロゴス、パトス、エートスが大事なのよ。
あっ、ほんとは私も知らなかったんだけどね。
理論と情熱、個人の持つ培われた人間性が基本だそうよ。
ふうらが言うには、ただその場で相手を言い負かせばいいんじゃないんだって。
それではお互い何の利益もないし、敵対心を煽るだけだって。
ふうらちゃんは言った。
『賽ノ宮くんタイプが業村くんのような人に対抗するのはコツがある。』
『いいか?賽ノ宮くんは業村くんの闘争心を煽ってはいけない。彼に効くのは肯定と誉め殺しだ。何を言われても下手に出て肯定し理解を示し受け流してからこちらの意見を言うんだ。』
『相手が言われて嬉しいワードを交えて話すのがコツだ。業村くんが喜ぶワードは・・・そうだな・・・。リーダーシップとか、万能とか、転機がきく、上昇思考・・・あたりかな。』
『とにかく何か言われて黙りこんでいてはいけない。ヤシロが業村くんに腕をつかまれて怒ってるというのに黙って見てた賽ノ宮くんは言語道断だ。』
『まあ、敵を知り己を知らばってことだ。次こそは臨機応変に対応してくれ。』
ロードくんはふうらちゃんのアドバイスをメモに取って真面目に聞いていたわ。
そのあとふうらちゃんと押し問答で練習。
そして、口達者な私の妹のアルとも練習するはずだったんだけど・・・
でもアルはいきなりロードくんから、
『リアさんにこんなに可愛い妹がいたんだね。うらやましいな。僕は一人っ子だから。僕にもこんな妹がいたら良かったのにな。』
なんて言われたもんだからロードくんになついてしまって。
ロードくん、早速ディベート術実行しちゃってるわね。
そんでもって、恥ずかしいくらいなんていとも簡単にはまるアルなのよ!
『アルも、お姉ちゃんよりロードくんみたいなお兄ちゃんが欲しかったんだー!ロードくんすっごい優しそうだし、よーく見るとかっこいいしー。ねぇ、髪型変えたらいいのに。もさもさ過ぎない?』
なんだか、アルによる美容講座が始まってしまった。
アルはロードくんの髪をいじりながらご機嫌。
二人はとっても楽しそうにおしゃべり。
まあ、確かにロードくんはもうちょっと身なりにも気を使ったほうがいいかもね。
それにしても、ずいぶん仲良しね。
そしてアルのアドバイスが終わった後は・・・
私の出番!
次は実技よ。
やっぱりね、言葉で解決出来ない時はバトルするしかないから!
この場合、武器は良くないね。一般人だし。
タイマン張る場合でいいよね?
業村くんと対決するだけだもん。
なら、そうね・・・・・
取りあえず、いざという時のために防御とカウンター狙いを伝授しておかなくっちゃ。
タイミングを見計らうのはムズいのよ。
攻撃は最大の防御ではないの。
あっちが攻撃を繰り出す時できる一瞬の隙を狙い脇腹攻撃、そしてすぐに防御体勢に。
ああ、飛び道具を使えない接近戦は面倒ね。
でも、これは弱っちいロードくんは乗り越えなきゃいけないの。君の愛するヤシロのために・・・・・
待っててね、ヤシロ!
ヤシロにニューロードくんを見せてあげるわ!
業村くんの強い押しに押される男からはオサラバするのよ!
『さあ、かかとを上げてリズムを刻むのよっ!』
『こうかな?』
『もっと軽やかに!ずっと臨戦態勢を保つのよっ!』
『こうかな?』
『私をよく見てっ!目をそらさないっ!』
バシッ!
『いてっ! (>_<)』
『接近してんだから油断禁物よ!そういうときは一旦もっと離れなさいよっ!ばかっ!』
『すっ、すみません! (>_<)』
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シュパッ!
ポサン・・・
『それじゃダメージぜんっぜん無しっ!パンチは腰を捻って!』
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ロードくんがぐったりしてきたのでここで終了。
『はいっ!今回はここまで!・・・・・いいっ?これはタイマンの場合だからね。お互い仲間がいる場合は別の注意がいるけど、今回はこれでいいわ』
本当は土日の二日間トレーニングしようと思っていたけど、まあその日だけでなんとかなってきたから、後は自宅で自主練にしたのよ。
私たちがトレーニングしてる間に、明日の日曜日、アルが勝手に自分のオススメの美容室をロードくんに予約しちゃったし、ロードくんもやることあるらしいから。
イメージトレーニングも有効だしね。
そして、今日。
The 運命の分岐点。
今朝も部活は自粛期間だから朝練もなくて、ここから見渡すグラウンドには誰もいない。
運動部の遠くまで通るかけ声も聞こえない普段とは違う朝。
空気も爽やかね。土ぼこりもないし。
ぴぴぴぴっ!
小鳥が騒ぐ声。
ふと影がよぎって、上を見上げると9番目の松の木のすごく上の方に大きな鷲みたいのが止まった。
「いてっ!」
ロードくんが頭を押さえた。
なあに?何か落ちてきた。
私はロードくんの頭でバウンドして地面に転がったカサカサしたものを拾った。
あれま、ロードくんの頭に松ぼっくりが一つ落ちてきた。
「はい、どうぞ。あの鳥が落としたのかな?フンじゃなくてよかったね。」
私は松ぼっくりをロードくんに手渡した。
「あはは。ほんとに。これは・・・今日の記念に大切にとっておくよ。あの・・・僕のためにほんとうにありがとう。リアさん、泉さん。」
「いい?自信を持つのよ!ロードくん。ロードくんだって髪型だけはアイドル風になったし、それなりにイケてるから。」
「・・・あの、リアさん。それ、マイルドにディスってるけど・・・」
「あ、あら。私そんなつもりはないわよ!とにかくがんばるのよ!」
「賽ノ宮くんはリアの特訓に耐えたんだ!自信を持て。いいか?今日はボクのプライドと運命がかかってるんだ。頼むぞ!賽ノ宮くん。」
ふうらったらずいぶんリキ入れてんね。
ふうらの運命は関係なくない?
「そんなにロードくんに圧かけないで!ふうら。」
「わかってる、けどボクだって今日のために最大限の協力をしたんだ。後は賽ノ宮くん次第だからな。」
「・・・わかってるよ。泉さん、リアさん。」
緊張したロードくんの顔。
ヤシロ、時間通りにくるかな。
松の石垣の通路9番目の松に集合して今からの計画を確認し合った私たち3人。
「さあ、急いで教室の準備だ!」
ふうらが私とロードくんを急かした。
「うん、急ぎましょ!時間がないわ。」
「あっ、うん。」
ふと、朝の新緑が香る気持ちいい空気の匂いを感じた。
私たちは自分たちの教室へ足早で向かう。
前を歩くロードくんの髪がそよ風にさらりとなびいた。




