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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第2章 忙中、某女子は密謀し謀略を防止する
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僕は変われるだろうか?〈ロード〉

「はいっ、お腹の下の方から声を出あすっ!腹式呼吸よっ!私に続いて真似してね! はあぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!」


 リアさんの気合いの入った通る声が誰もいない松の石垣の通路に響く。


 石垣の通路に沿って向こう側に広がるグラウンドにも今は誰もいない。いつもなら運動部の気合いの入った元気な掛け声で賑やかなのだけど。


 僕も真似をして声を出す。


「はぁーーっ!」


「もっと息を思いっきり吸ってからよ!行くよ!はあぁぁぁぁーーーーーー!」


「はあぁぁぁぁー!」


 これは大きな声を出す練習。


 リアさんによると僕はうだうだした男子らしい。

 これは泉さんと一致した意見だという。


 ・・・これは同じようなことを業村くんからも言われた。


 これは紛れもなく否定することも不可能に、僕が誰からも持たれている印象。



 面と向かって言われたのですごいダメージくらった。


 僕だってそんなこと人に言われなくたって自覚はしてた。



 僕は2回もヤシロさんを置き去りにした上に、僕に相談を持ちかけたヤシロさんを突き放すような態度を取ってしまったんだから。 




 僕は変わらなきゃならない。


 ヤシロさんに向き合うために。




「良くなってきたわ。はい、もっと長く一定にー!喉を開いてるか意識してー、はいっ!」


「はぁーーーーーーーーーーーーっ」




 ・・・僕は変われるだろうか?


 ヤシロさんは今何をしているの?


 何を思っているの?


 僕のこと、怒ってる?



「次っ、行くよっ!姿勢が悪いっ!背筋伸ばして。はいっ!行くよ!あ・い・う・え・お・い・あ・お・う・え、はいっ!私に続いてっ」


 リアさんの特訓は続く。



 僕の心は昨日の君に縛られたまま。


 君の本心が知りたくて。



 ・・・ヤシロさんは業村くんを選んだんじゃなかった?


 ヤシロさんの親友たちがそう言ってるのならばそれが本当かもしれない。


 リアさんはヤシロさんが無理矢理業村くんの彼女にされるって言ってた。


 でも、ヤシロさんは業村くんとキスしたって・・・。



 どういうことだろう?



 ーーー僕は昨日の事を思い返して見る。



 ヤシロさんの業村くんへの接し方はどうだった・・・?


 ・・・彼と話す時はいつもツンケンしていた。



 昨日業村くんは僕に何を言った?


 ・・・僕がヤシロさんをどう思っているのかしきりに気にしていた。そして彼女とキスしたことを自慢げに話して僕と比べて優位性をアピールして来て・・・


 嘘とほんとが入り交じる業村くんの言葉。


 業村くんの幾つもの嘘をそのまま信じてたヤシロさん。僕も知らず知らずの内に何か騙されていたのか?



 昨日のヤシロさんは僕にどうだった?


 ・・・君を中傷するような噂を清掃時間中に聞いてしまった僕は、ヤシロさんに対し、ぎこちない態度になってしまっていた。


 そんな僕に対し、君には戸惑いが見え隠れしていたけど、でも、業村くんが帰った後はいつもの笑顔を僕に向けてくれた。



 そして、僕にとっては一生忘れられないようなハプニング。



 抱きしめた君の匂いと感触と重み。


 君が僕のために流した涙。


 君の相談依頼を断った僕。


 そうだよ・・・あの時君の声はちょっと震えてたような気がしてたんだ。


 君が相談したかった事って・・・僕の思っていたこととは全然違っていた?



 それなのに僕は、助けを求めていたのかもしれなかった君の声を拒絶した。



 急に昇降口から駆け出して行ってしまった君。


 君を追えなかった僕。



 昨夜君に送信したのはひとこと謝っただけの僕のメッセージ。


 すごく迷って、何回も何回も書いては消して、結局やっと送れたのは『ヤシロさん、ごめんね』だなんて。


 なんて気のきかない男だろう。



 君からのリプはない。



 当たり前だよね。


 こんな僕には呆れてしまったに違いないんだ。




「ロードくん!声出てないよっ!もっと大きい声出せないとヤシロに届かないよ。滑舌も大事よ!はいっ、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いたっ!」


「ぼっ、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」


「次っ!瓜売りが瓜売りに来て・・・・」




 リアさんのトレーニングは1時間ほど続いた。


「じゃあ、今日はこれまで!明日は遅れないようにね。ふうらのテスト指南も付いて来るのよ?超ラッキーじゃない?ロードくんよかったね。私たちがいて。じゃあねー!」


 リアさんは側に止めておいた自転車に颯爽とまたがったと思ったら疾風のようにあっという間に小さくなって見えなくなった。



 はーあ。


 喉がカラカラだ。普段出さない大きな声を出したから。


 こんな思い切った大声出すことなんて普段ないし。


 僕も少しはシャキッとなれたかな?


 リアさんの姿勢がいつもキレイでシャキッとなのは鍛練しているせいなんだね。



 僕は喉が渇いたので、中庭の手前にある渡り通路に最近新たに設置された自販機に向かった。


 帰途の途中の自販機よりここが一番近い。


 僕は冷たい天然水を買ってその場で一口飲んだ。




 ふと、中庭の方からボソボソと聞き覚えのある声が聞こえて来た。


 僕がふと目をやると、たくさんの鯉が泳ぐ人工池の脇に生えてる大きな樹の下に、煌くんと牧野さんが歩いて来て止まった。



 僕はとっさに自販機の影に身を隠した。


 だって、僕は邪魔だって思ったから。



 


『僕は牧野さんの要望書は必ず通して見せるから』


『有言実行は素敵だわ。雪村くん』


『牧野さん、その時は僕のーーーーーーー』




 僕は聞いてはいけなかったな。


 そっとその場を離れた。




 あのパーフェクトな煌くんでさえなかなか恋は思い通り行かなくて・・・それでも自分の思いにまっすぐに向き合っている。



 僕も・・・僕も煌くんみたいにやれるだけ頑張ってみるよ。


 僕の星回りの日は三日後の月曜日の朝。


 本当にヤシロさんは来てくれるだろうか?



 僕にそんな勇気が出るのだろうか?



 僕にも、わからないんだ・・・・・





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