I couldn't run after her〈ロード〉
この声は・・・・
「あれ?煌くん。」
「何だよ、ロードだったのか。」
1年生の時からの友だちの雪村煌。
煌くんが腕を差し出した。僕は煌くんの手首を握ると煌くんもぼくの手首を握り、ぐいっと引っ張り立たせてくれた。
煌くんは僕の友だち。すごくいいやつ。
煌くんは頭脳明晰、眉目秀麗、有言実行、質実剛健のケチのつけようのないパーフェクトな男子。
クールでスマート。一見ちょっと冷たい雰囲気なんだけどね・・・・
煌くんは見かけによらずマンガが好きでこんな僕とも気が合う。
それに、煌くんは実はイラストも上手なんだ。
僕は文系を選んだから理系の煌くんとは2年でのクラスは絶対的に離れる事はわかっていたけど、やっぱりそれは残念。
「君は、大丈夫?」
ヤシロさんに声をかけたのは神谷神露くんだ。
煌くんと並んで二人で学年の2トップ。
みんなの憧れの的だ。
「あたし?・・・・はっはい、おっけーでーす。」
・・・・・ヤシロさんが赤くなっている。
女の子はみんなきっとこういう男子が好きなんだろうな。
僕もこんなふうに生まれてきたかったな・・・・
「転んだって?大丈夫か?この子とぶつかったのか?廊下は走るなよ、ロード。」
「違うよ、煌くん。蜂が飛んできてさ、ヤシロさんが驚いちゃって・・・・それよりさ、さっき丁度完成したんだ。ニューバージョン。」
「おう、例のやつ?」
「うん、煌くん。僕たちの黒板アート、新作見てってよ。今月のはガチカッコいいから。」
「了解。そうだ、ロード。牧野さん知らないか?」
さっき、言ってたな。牧野さんと泉さんは生徒会に要望書を提出したって。
煌くん、それのこと?煌くんが担当者なのかな?だったらそれ、めっちゃがんばりそうだな。
煌くん、これはチャンスだね。
煌くん、ずっと片想いしてるから。牧野さんに。
1年のころから頑張ってアピールしてるのに全然振り向いてもらえないって僕にこぼしてた。
こんなパーフェクトな煌くんを相手にもしない女子がいるなんて信じられないよ。
煌くんのどこに不満があるんだろう?僕が女の子だったら即落ちだよ。
「ああ、さっき泉さんと帰ったけど。行ったばっかりだから急げば追い付くかも。」
「サンキュー、ロード。また転ぶなよ。」
「あは。」
追いつくといいね。煌くん、頑張って!
「行こう、雪村。」
神谷くんが煌くんを急かした。
「じゃーな。ロード。」
煌くんと神谷くんが軽く手を上げて挨拶してから走って行った。
「ねぇ、廊下走っちゃだめだろ?」
僕は笑顔で二人を見送った。
「僕らは赤色灯装備なのさ。」
神谷くんがアデューして階段へと曲がって消えて行った。
煌くんがあははと笑いながら後に続いて見えなくなった。
ヤシロさんは・・・・見えなくなった神谷くんに視線を奪われたまま。
優等生でクールなのに軽いノリもさらりとこなす神谷くん。
やっぱり女の子が惹かれるのは神谷くんとか煌くん、業村くんみたいなイケメンだよね・・・・・
次期生徒会長雪村煌と副会長神谷神露。
もう、これは選挙などしなくても周知の事実と言える。
男の僕だって憧れてしまう理系代表、文系代表カリスマペア。
「ロードくんて雪村くんとお友だちだったの?すごく親しそう。」
ヤシロさんが驚いてる。
煌くんは僕の大好きな自慢の友だちだ。
「1年の時同じクラスだったんだ。牧野さんもね。」
「ふうん。」
煌くんと知り合えたのは僕の幸運ひとつ。そして、ヤシロさんと知り合えたことも・・・・
ヤシロさん・・・・・目がまだちょっとだけ充血残ってる。
僕はヤシロさんに謝らなければならない。
無駄に涙を流させてしまったこと。
ヤシロさんと階段を降りながら切り出すセリフを考えた。
幸い、誰も昇降口にいなかった。
今日からは部活自粛期間だし、もう5時過ぎてる。学校に残っている生徒はわずかだろう。
僕は靴箱からローファーを出しながら、なるべくさりげなく言った。
「あの・・・ごめんね。僕のせいで泣かせてしまって。」
「・・・・ううん。今ね、あたし気持ちが不安定なの。だからきっとそのせい。」
なんか物憂げだな。
まさか、あのヤシロさんと業村くんの心無い噂が流れてること知ってるのかな・・・・?
あんなのヤシロさんは知らない方がいい。
「・・・・・何があったの?」
僕は君が傷つくことが心配だよ。
ヤシロさんはちょっと躊躇してから僕に聞いてきた。
「ロードくん、今からちょっとだけ時間ないかな?秘密で相談したいことがあるの。」
「・・・・僕に?」
「うん。今はロードくんだけにしか聞けないの。」
僕にだけって・・・・?
泉さんやリアさんに聞けないのに僕に相談って・・・・・
それって・・・・それはどうみても業村くんのことだよね・・・・?
もしかして業村くんが機嫌悪くするから僕とは今までの通りの友だちではいられないとか?
それとも、あの僕たちの指切りげんまんは反古にしたいとか?
嫌だ。
そんなの。聞きたくないよ。
君と僕の関係が消えていく様なんて・・・・・
「・・・・ごめん。」
僕は履き替えるために下に出した靴を見たまま、うつ向いたまま、答えた。
僕のこんな情けない顔を君に見られたくなくて。
「・・・・ううん、急にごめんね。あたしったら。」
ヤシロさんの妙に明るく振る舞った声が、他に誰もいない昇降口に響いた。
「・・・・ロードくん、ごめんね。あたし今日、寄るとこがあったんだった。お先。」
ヤシロさんは慌てて靴に履き替えると走って昇降口から飛び出して行った。
「ヤッ、ヤシロさんっ!待って。」
ヤシロさん!そんなベタなこと言って嘘ばればれじゃないか。
僕、今の断ったらだめパターンだったの?
君の相談って業村くんに関することだよね?
僕は今、君を傷つけたの?
僕は慌てて君の後を追ったのだけど・・・・・
君は絶対的に僕を拒否するかのように見事な加速ぶりで走り去って行って、その後ろ姿を目の当たりにした僕は・・・・・
僕は・・・・自分で自分が嫌になってしまって、情けなくなってしまって、涙がにじんできてしまって、地面とにらめっこしてしまって、足が動かなくなってしまって。
君を、それ以上追えなくなってしまったんだ・・・・・・
明日で第1章終わります
(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノィェーィ!




