You've been quite cute 〈ロード〉
戸締まりをして、二人そろって2ー2の教室を後にした。
廊下に出るとヤシロさんは言った。
「あのね、ロードくん。ドーナツ屋さんであたしがした質問覚えてる?」
・・・・・もちろん覚えてる。
君が僕の名前をずっと前から知っていた理由でしょ?
君は僕が知らないと思ってる。
ーーーヤシロさん、僕は知っているんだよ。君は既に1年前から僕の心に住み着いているんだ。
声を出して言えたならどんなに・・・・
「うん、覚えてる・・・・・あ、ヤシロさん、後ろ歩きは危ないよ。」
「あたしがロードくんの名前を去年から知っていたわけ。」
ちょっと得意げに権高な顔をして、ヤシロさんは後ろ歩きをやめようとはしない。どうやら僕が答えに窮するのを期待してる顔。
・・・・・すごくキュートな君が僕を見てる。
「それはね、あたしが・・・・・きゃーっ!」
あっ!蜂がヤシロさんの口許に向かって!
くちびるを花と勘違いしたのかっ?
ヤシロさんは驚いて避けようとして・・・・・後ろによろめいて・・・・・
「危ないっ!ヤシロさんっ!」
僕はとっさにヤシロさんを横向きから抱き止める。
君の柔らかい体の感触。
僕の胸に押さえつけ力を込めて抱え込む。
そんな刹那、君からふわっと女の子の香りに包まれた。
そのまま一緒に倒れた。
もちろんヤシロさんを上にして、僕はクッションに。
一瞬がスローモーションのような感覚。
「・・・・・・痛ってって。」
リュックを背負っていたからわりと助かった?
頭をちょっとと体の左側の腰と肩を打った。
僕は痛くて痛くてすぐには起き上がることは出来ない。
マジ、ちょっと響いてる。
「あっ、あたし・・・・ごめんなさい。大丈夫?ロードくん。」
ヤシロさんは大丈夫そう。
「あ・・・・うん・・・いてっ・・・大丈夫。」
僕は痛くてまともに答える余裕がない。
「あの・・・・」
ヤシロさんの髪が僕の顔をくすぐっている。
彼女の息を僕の首筋に感じた。
あ・・・・?
ヤシロさんが僕の腕の中で身を硬くしてる!
やばいっ!
僕は力を込めてヤシロさんを抱き止めたまま・・・・
慌てて腕を解放した。
「ご、ごめん。」
「あたしこそごめんねっ。ロードくん。あたしの不注意で。」
ヤシロさんは僕から降りると僕の顔を覗き込み今度は僕の頭を抱えて膝に乗せた。
うっ・・・・!
こんな所で女の子に膝枕されても・・・・しかもヤシロさんに!
「いやっ、ぼっ僕はだっだっだっ・・・・・」
僕は焦りまくって、いろんな雑念が押し寄せてきてこの状況を上手く対処できない。
僕のキョドった態度でヤシロさんは僕が重傷だと勘違いしてしまった。
「だっ、大丈夫っ?救急車をっ!」
せっぱつまった君の声。
違うんだ!
僕は、その・・・・この格好は恥ずかしいすぎるだろ?
ここは学校の廊下の真ん中。
どうせなら僕の部屋だったらよかったのに。
ばっ、僕は何を妄想してるんだ!
「あっ、だっ、いやっ、・・・僕は・・・大丈夫だから・・・・」
声が、上手くコントロール出来ない。
落ち着け!僕。
「いやっ!死んじゃダメっ!ロードくん何型なのっ?あたしO型だから!オールマイティーだからっ!もしもの時はあたしの血半分あげるからっ。」
僕のせいでヤシロさんがますますパニクってる!
動揺して僕の肩を揺するヤシロさん。
ふと、
顔を覆っていた僕の手の甲に何かが落ちた。
僕は指の間から君の顔をそっと見る。
それは、
・・・・・ヤシロさんの涙だった。
僕の邪念がふっと静まった。
ごめんね。ヤシロさん。
僕はそんなつもりは無かったんだ。
僕のために君を泣かせるつもりなんて。
「ヤシロさん・・・・・落ち着いて。僕は何ともないから。」
君のほほを伝う涙を僕の指で消し去る。
僕は彼女の膝から起き上がった。
廊下に座り込んでる君と僕。
君の潤んだ瞳が僕を見てる。
「ロードくん・・・・ほんとう?」
「うん、ほんと。だから泣かないで。」
僕は君を知ったあの時から、実際の君を知った今は更に君のことを好きになっている。
僕にはそんな資格はないのに。
2度も君を置き去りにした僕になんて。
「どうかしたのか?君たち。」
ふと、聞き覚えのある声がした。




