A passive student in the classroom 〈ロード〉
『なにやら密計遂行中』からのロード視点
僕とヤシロさんの5月の黒板アートが完成した。
仕上がった早々業村くんが言った。
『おー!出来たじゃん。賽ノ宮さいのみやうめーな。じゃ、早く帰ろうぜ、ヤシロ。』
ヤシロさんと業村くんはいつの間にか一緒に帰る約束をしていたらしい。
しかも既に業村くんはヤシロさんのことを呼び捨てにしている。
これって・・・・・もう彼女じゃないか!
さっきヤシロさんは業村くんと二人で話していた時には、
『ちょっと!あたしは断ったでしょう?やめてよ!そういう言い方。』
確かにそう言った。
それに、業村くんが僕と鷺坂さんにでたらめを言ったとかって口喧嘩してるのが聞こえて来てた。
僕はもしかしたら今まで業村くんが言ってたことは全部嘘かも知れないって、あの噂も全部デタラメなんだって期待し始めていたのに。
やはり業村くんの言っていたことは本当らしい。
「・・・・約束してたんだ?じゃあ後は僕が片付けておくから。いいよ、先に帰っても。」
僕は、二人先に帰るように勧めた。
ははっ、僕はどう見てもお邪魔だよね。
それに僕は聞いた。
掃除の時間に流れてきたヤシロさんと業村くんの噂。
それは業村くんが僕に話したこと以上に尾ひれがついていて・・・・
僕は憂鬱になった。
ヤシロさんはそんなふしだらな女の子じゃない。
こんなことヤシロさんの耳に入ったらと思うと僕の胸が痛んで。
僕は彼女の顔を見るのがちょっと怖くなって。
一緒に協力して描いてるっていうのによそよそしい態度になってしまった。
ヤシロさんが僕の態度に戸惑っているのがわかってるのに、僕ときたら。
僕は二人で先に帰っていいって言ったのに、ヤシロさんは掲示委員の仕事だから僕と片すと言うので、早く帰りたい業村くんと言い争いを始めた。
・・・業村くんはヤシロさんが僕を気遣うことが気に入らないんだ。
そして、僕の心の奥に隠している気持ちにも気づいてる。
今朝、僕が、業村くんに恫喝されて、嘘に背中を押されるままにされて、君を教室に置き去りにしなければこんなことには・・・・
僕の後悔は深い。
ヤシロさんと業村くんが言い争いしていたら、泉ふうらさんと牧野のばらさんがそろって教室に現れた。
教室に入ってきた泉さんと一瞬目が合った。
彼女はもの静かな人にもかかわらず独特の存在感でクラスでは目立つ存在だ。
泉さんは今日の帰りのSHRの後、僕に暗に忠告して来た。
あの噂の真実を見極めよ、と。
でも、僕は既に分かっているんだ。
彼女は業村くんの告白を受け入れたんだ。
だって、ヤシロさんは今朝、業村くんの告白を受け入れてキスまでしたんだろう?
それに、面白おかしく尾ひれがついた中傷的部分については僕は最初から嘘だってわかってるよ。
ヤシロさんが交際をOKしたなんて僕は半信半疑だったけれど、業村くんはヤシロさんを呼び捨てにし始めた以上信じざるを得ないよ。
今、教室では業村くんと牧野さんたちが反目し合ってる。
牧野さんがゲス顔で業村くんに言い放った。
『さっさと帰りなさいよ。そういえば、3年の生徒会長の桃山先輩と甲斐雅秋が業村くんを探していたみたいよ?心当たりはあるのかしら?ふふっ。』
あれ?教室に入ってきた牧野さんにいきなりケンカ売ってた業村くんなのに・・・・・ちょっと動揺してる?
・・・・これって、今度は業村くんが牧野さんに恫喝されてる?
何やらこの二人は業村くんの弱みを握っているみたいだ。
牧野さんの一言によって業村くんは何か辟易ろいで帰って行った。
業村くんと牧野さんはずいぶんと犬猿の仲らしいね。
言葉を交わさなくともお互いに向けて歪んだ低周波を放っているかのようだった。
こんなに自己主張が強い人たちは、ある意味うらやましい。
でも、僕は争いは嫌いだ。
僕が我慢すれば済むことならばそれでいいって思う。
泉さんと牧野さんはヤシロさんに用があるようで、泉さんがヤシロさんに話し始め、僕は片付けを始めた。
片付けをしている僕にも全て話は聞こえている。
なにやら泉さんと牧野さんは髪染めの件のことで暗躍しているらしいけど、僕には関係なさそうだ。
僕はすぐに黒板周りの片付けは終わってしまって、帰った方がいいのか残ってる方がいいのか分からなくてぼやっと突っ立っていた。
二人はヤシロさんに黒板アートを見に来たって言ってたけど、本当の目的は業村くんを先に帰らせる事だった?
結局、要望書のこともヤシロさんにもそれほど関係ない話だったようだ。
ペラペラ二人でしゃべった後は揃って帰って行った。
結局ヤシロさんと僕は一緒に帰ることになった。
ヤシロさんは日中は変だったけど、二人きりになった今は僕に笑顔を見せてくれるようになった。
僕も自然と笑顔になっていた。
ヤシロさんのくちびるを見ると、頭には業村くんの影がちらつくけれど・・・




