News travels first
3、2、1、行くよ?せーのーで、
「ロードくん。もう始めてたんだ?」
ロードくんの後ろ姿に声をかけるだけなのになぜか逡巡するあたしがいた。
怯む気持ちをぎゅーっと押さえ込んで、カウントダウンで弾みをつけてロードくんに声をかけた。
目に涙が浮かばないように、声がうるうるしないように気をつけながら。
振り向いたロードくんの様子はいつも通りだった。
「あ、ヤシロさん。うん、ほんとは昼休みにはもう描き始めてる予定だったでしょ?その分急いでたんだ。」
ロードくんは付け加えた。
「・・・・だって僕たち約束したから。学年最後まで最高のアートを二人で作るって。ヤシロさんの描くイメージを僕がリアルで表現する、でしょ?」
にこりと控えめな微笑みで、立った椅子の上からあたしを見下ろすロードくん。
ロードくん・・・・。
やっぱりロードくんはロードくんよ。
あたしのさっき感じたおいてけぼり感はすっーと消え去った。
「うん・・・・!」
あたしはさっきとは違う意味でまた涙がにじんできた。
あたし、どうしちゃったんだろう?
いつからこんな泣き虫に?
今のあたしはちょっと変。
「ヤシロ。」
無機質な声で呼ばれた。
振り向くとふうらちゃんがあたしの後ろで無表情で立っている。
「ボクもここに残ってあげたかったのだが。」
あたしは部活に入っていないふうらちゃんに今日放課後残れないか尋ねていた。
「のばらのことで、ちょっと用が出来て。のばらと生徒会室に行ってくる。」
生徒会?ふうらちゃんと牧野さんと生徒会って何つながりなのかしら?
「不思議そうな顔してるな。ヤシロ。」
「だって生徒会なんてあたしたちにほぼ関係ないじゃない。」
「まあそうだな。でも、来期生徒会長確実で現会長補佐の雪村煌はのばらと懇意でね。まあ・・・あっちから一方的にだが。早速利用させてもらう。生徒会にはそれなりの権利が付与されているんだ。」
「よくわかんないけど、とにかく用があるのね?いいよ。ダメ元で聞いただけだもん。急にだったし。」
「ボクも校内には居るわけだから、何かあったらメッセージをくれ。いいね?」
「うん、大丈夫だよ。ロードくんがいるもん。」
「・・・・・そうか。」
ふうらちゃんはかくっと首を動かしロードくんを見た。
「賽ノ宮くん。」
「何?泉さん。」
「例のことは君の耳に入ったのか?この事は君にどう見えていくのか。いいか?誰かに意図的に刷り込まれた先入観に囚われるな。作為的な言葉のあやに嵌められるな。伝言ゲームには虚妄に帰す。ボクは君の澄んだ心の目に期待する。ボクは行く。ここは君に頼む。では。」
「・・・・・・・」
ロードくんは無言でふうらちゃんを見送った。
なあに?例のことって?
ロードくんを見た。
目をそらされた。
ふうらちゃんはロードくんに何のこと言ったのかしら?
やっぱりふうらちゃんは不思議少女。
神秘不可解謎めきパーソン。
教室には後、業村くんプラス2グループ5人ほど残っている。
ああー、もう!早くどっか行けっ!帰れっ!
イライラするわ。
みんな帰ったら業村くんにガシッと指を突きつけて糾弾してやるんだから!
業村くんは一人でケータイ見てる。
あたしとロードくんは作業に取りかかった。
ロードくん主導のもと、順調に進み出した。
「じゃーねー、さいならー!業村、向岸さん、賽ノ宮。これから修羅場かよ?頑張れよっ!くくくっ・・・」
最後に残っていた亀井くんと鶴巻くんがやっと教室を出て行った。
修羅場って?一体何を言っていたのかしら?
まあいいわ。
・・・・よっしゃー!
ようやく時が来た!
あたしはロードくんにちょっと席を外すお断りを入れてからスマホを見てる業村くんの席まで行き声をかけた。
「ねぇ、ちょっといい?」
業村くんはディスプレイから顔を上げるとにこりと微笑んだ。
うふふ、顔だけ見てたらイケメン芸能人ね。
あたしもにこりと微笑み返し。
「ヤシロ、ごめんね。おまえのことほっといて。」
「なっ!業村くん?」
何なの?いきなり呼び捨て?おまえって?
まるであたし、業村くんの彼女みたいじゃない!
「ちょっと!あたしは断ったでしょう?やめてよ!そういう言い方。」
「賽ノ宮はもう、俺たちのこと知ってるから、隠さなくたっていいんだぜ、ヤシロ。」
「知ってるって・・・ロードくんに何て言ったのよ?でたらめを言わないでよ!それに鷺坂さんにも何か吹き込んだでしょう?」
「でたらめなんて人聞き悪いなぁ。俺賽ノ宮には事実しか言ってないぜ?俺とヤシロの・・・・のこと。」
自分のくちびるを親指先でとんとんしながら悪びれる様子もなく、怒ってるあたしの方がおかしいかの如く余裕顔。
あたしはロードくんの方を見ると、ロードくんは何も聞こえていないかのようにチョークを走らせている。
・・・・そう、ロードくんはあたしと業村くんのことなんてどうでもいいんだった。
聞こえていても知らんぷり。
「なぁ?ちょい、ベランダに来いよ、ヤシロ。いいこと教えてやっから。」
「嫌。」
「来ないとおまえも俺もヤバいことになるんだぜ?」
立ち上がりあたしの耳元でささやいた。
「・・・・・・・どういうことなの?」
「俺の意図してることを教えるから。」
勝手に手を繋がれ、あたしはベランダに連れていかれた。




