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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第1章 トラップのゴシップでスリップ
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作為的漏洩

 あたしは廊下に出てうろうろと落ち着かずにいた。


 階段から廊下に曲がってこっちへ向かってくるロードくんと業村くんが見えた。


 待ち構えていたあたし!


「業村くん、5限目は保健よ!剣道なんて無いじゃない。ロードくんとどこに行っていたのよ?」


 戻ってきた業村くんに詰め寄るあたし!


「ヤシロさん、ごめん、僕の勘違いだった。それは、来週の予定だったんだ。賽ノ宮(さいのみや)、悪かったな。無駄足させて。」


 手を合わせてロードくんに謝っている。



「・・・・・・・別に。」


 ロードくんはひとこと言うと後ろ扉から教室に入って行った。



「ヤシロさん、今日描くんだろ?放課後は僕も残るから。」


 業村くんは余計な親切ながら言ってくれた。


「いいよ、鷺坂さんに頼んであるの。きょうから中間テストの部活自粛期間だから残ってもいいって言ってくれたから。」


 ふふん、あたしその辺はちゃんと手配済みよ。



「ふーん?いいのかな?僕にそんなこと言って。」


 首を傾げてあたしをにこりと見た。


「どういうこと?」


「僕に残ってって頼んでよ。そうしないと、僕とヤシロがキスしたことクラス公開しちゃおうかなー?」


「なっっ、何言い出してるの?」


 こんな所でそんな話をするなんて!


 あたしは息だけで声を出した。


「冗談さ。ただし賽ノ宮(さいのみや)には教えちゃったけどね。」


 業村くんはてへぺろ状態。



 嘘でしょう?やめてよ!ひどいよ、業村くん。


「・・・・・・何でそんなこと。」


「だって事実ベランダで僕とキスしたじゃん。」


「ちょっ、何言ってるの?こんな所でおかしなこと言わないでよ!」



 あたしの後ろから来た通りすがりのクラスの男子二人が『マジかよ?』って呟いて顔を見合わせてからこちらを振り向いた。


 いったい業村くんは何を考えているのよ!


 吉田くんと渡辺くんに聞かれてしまったじゃない!


 いくらほんとのことだって、言ってもいいわけじゃないのよ?


 そんなことあたしは否定しとくわ。


 こーゆー嘘は悪くないもん!あたしはあたしを護る権利があるの。



「う、嘘言わないでよっ!」


「いいじゃん、ばれたって。俺たちのこと。」


「嘘よっ!そんなの!」


 むきになって反論するあたしをよそに、


「放課後は僕が残る。鷺坂さんには言っとくから。」


 業村くんはあたしに構うことはやめて教室に入って行った。



 この事態に愕然としながら業村くんの後ろ姿を目で追った。



 何でこんなこと言うの?


 あの男子たち、絶対誰かに言うよ?


 そしたらあたしと業村くんの間違った噂が流されるのは必至だよ?


 業村くん、どういうつもりなの?


 あたしが交際を断った腹いせなの?


 だからって、ひどいよ・・・・・こんなの。





 あたしは黒板に下絵の目印をちょんちょんつけているロードくんの所に行った。


「あの・・・業村くんに何言われたの?」


「・・・あっ、その・・・そういうことはヤシロさんの気持ち次第だろうから僕は・・・・・」


 ちらりとあたしを見てすぐ目をそらした。


 ロードくん、何のこと言ってるの?そういうことって何?


 本当に業村くんはキスのことロードくんに言っちゃったの?



 もう、怖くて聞けないよ!



「今はここまでかな・・・・後は放課後だね。」


 ロードくんは椅子から降りて、いつもと変わらない態度であたしに言った。


「・・・あ、うん。ありがとう。」



 わかった。


 ロードくんはあたしと業村くんのことなんて自分に関係ないと思ってるんだ。どうでもいいんだ。


 だから変わらないんだ。


 ならあたしも普通に振る舞えばいい。今までと同じように。


 そうすれば今まで通り二人で絵が描ける・・・・・


 それはあたしの大切な時間・・・・・




 放課後、帰りの挨拶が終わった直後、鷺坂さんがあたしの所に来た。



向岸(こうぎし)さん、業村くんから聞いたよ。そういうことなら早く言ってよ。私意外でびっくりしたわ。じゃ、お言葉に甘えて私、帰るね。出来上がり楽しみにしてるから。じゃ、また明日。」


「ちょっ、まっ、意外って・・・・・?」



 あたしが言う前にささっと行ってしまった。



 何か嫌な予感。



 業村くんがまたあたしのおかしな噂を鷺坂さんに話したんじゃないかって。


 まだ教室には人がほとんど残ってる。


 みんないなくなったところでびしっと問い質してやるんだから!


 これ以上あたしの噂をリアルで流されたらたまらないもん!


 あたしは『みんな、早く、帰れ、帰れ』と心でじゅもんを唱えながら帰り支度をした。


 荷物をリュックにまとめ終わると後ろの席のロードくんに振り返った。



「ロードく・・・・」


 あれっ、いない。帰り支度終えたリュックが机の上に乗っている。



 あっ、ロードくんは既にひとりで黒板に描き始めてる。



 ーーー胸がきゅっと苦しくなった。



 始める前にあたしにひとこと声かけてくれたって。



 こんなちょっとのことなのに、



 あたしの目に、涙がにじんできた。



 あたしはぎゅっとこらえた。








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