I felt regret that I couldn't refuse the asking
君が僕に話しかけてくれないままに4限目が終わり、昼食の時間。
たいていの生徒は仲のよい友だちと数人集まって持参したお弁当を歓談しながら食べる。
黒板アートのお陰で僕にも話しかけてくれる人が結構いて、僕にも新しい友だちが出来た。
最初の頃は一人で取っていたランチだったけど、最近は気の合う友だちと4人で食べるようになった。
これもヤシロさんが僕を掲示委員に誘ってくれたから。
ヤシロさんはいつものようにリアさんと泉さんと3人で食べている。
いつもはもっときゃっきゃと騒いで目立ってるヤシロさんとリアさんだけど、今日はいつものようには賑やかじゃない。
ヤシロさんと業村くんは本当はどうなったんだ?
僕は今朝業村くんの言いなりになって教室を出て行ってしまったことをすごく後悔している。
どうしてあの時勇気を出して断れなかったんだろう。
僕が気弱で自分に自信も勇気もなくて。
だからこんなことに。
ヤシロさんが食べ終わったのを見計らって業村くんが彼女に話しかけている。
僕の胸にズンと鈍い痛みが響く。
二人は揃ってベランダに出て、教室からもグラウンドからも見えないようにかがんだ。
ベランダは本当は立ち入り禁止ゾーンってことになっている。
『ヤシロは彼女同然』
業村くんがさっき言ったことは本当に思えてきた。
ヤシロさんと業村くん。
誰もが認める美男美女のカップルだろうね・・・・・
僕は・・・僕に出来ることはこれからも君との約束を守るだけ。
二人で指切りげんまんしたあの二人の約束。
僕はまだ汚れが残っている後ろ黒板を見る。
・・・・・やらなきゃ。
僕は椅子を持ってきて上に乗り雑巾で黒板を拭き始めた。
「ごめんね、あたしがやってなかったから。」
ふいに僕にかけられた声。
ヤシロさんだ!
ベランダから戻って来てたんだ。
やっと僕に話しかけてくれた。
「ううん、僕が朝出て行っちゃたから。ごめんね、ヤシロさん。」
僕は椅子の上からヤシロさんを見下ろしてる。
ヤシロさんを二度も置き去りにしてしまった僕。
こんなふがいない僕でも、まだ友だちでいてくれる?
業村くんがヤシロさんの横に来た。
「ちょっと来て、賽ノ宮。」
ずいぶん尖った言い方。
僕に何の用だろう?
「業村くん、ロードくんは今からあたしと黒板アートの制作するのよ。後にしてよ。」
ヤシロさんもすごく尖った口調で言い返した。
いったいベランダで何を話していたんだろう?
ヤシロさんは本当に業村くんと付き合うことにしたの?
はっきりとは読み取れない二人の仲。
「5時間目は男子は剣道だから昼休みの内に用具準備しとかないといけないんだ。人が足りない。仕方がないだろ?授業準備が優先だ。来て手伝ってくれ。」
業村くんは僕にもっともらしく語る。
・・・・・また、君の口からはいとも容易く嘘がこぼれるんだね。
次の授業は保健だ。もし変更だとしたら体育委員の亀井くんと鶴巻くんは今夢中でスマホをいじっていることなんてないだろ?
僕と二人きりで話がしたいんだ。今すぐに。
ヤシロさんのことで。
「・・・・・わかった。業村くん。ごめん、ヤシロさん。残りは放課後に。」
僕は椅子から降りた。
「うん、あたしが続ききれいに拭いておくから。」
ヤシロさんはらしくない気弱な笑みを浮かべてに僕を見た。
ごめんね、ヤシロさん。僕は行ってくる。
4Fの5月の意外と強い日差しと風にさらされた渡り通路の端っこで、僕は顔から怒りがにじみ出てる業村くんと向かい合っている。
「おまえ、ほんとはヤシロのことどう思ってんの?」
眉間にシワを寄せ僕に詰め寄る業村くん。
「どうって・・・・言われても。」
「・・・・おまえ、好きなんだろ?ヤシロのこと。」
「・・・・・」
「はっきりしろよ!ったく。ぐずぐずしやがって。俺は最初っからおまえみたいなまだるっこいカスは目障りだったんだ。」
「・・・・ずいぶんひどい言い方だね。」
業村くんが僕のこと気に入らないのは初日から分かっていたさ。
「ごまかすな。どうなんだよ?」
「業村くんに話す事じゃない。」
「ふーん・・・・ふふっ。言わなくたってわかってるぜ?でも無駄だぜ。ヤシロだって賽ノ宮のこと単なる友だちっていってたしな。ヤシロは絶対俺のモノだから。」
「・・・・・・」
「俺とヤシロ、今朝キスしたんだぜ。おまえ、ヤシロとしたことねーだろ?」
僕を見下すように、あざけるように、ニヤっと嗤った。
今朝そんなことが・・・・・
最初の儀式を済ませたって・・・このことだったんだ。
僕がヤシロさんを置き去りにしてしまったあの間に・・・・・
君が昨日リアさんたちに話していた、まだ見ぬ王子様とのファーストキスファンタジー。
リアルの相手は業村くんだった。
君は業村くんを選んだの・・・・・?
ヤシロさん・・・・・業村くんの言っていることはほんとなの?
君に直接確かめるなんて・・・・・僕には出来やしない。




