妄想のち胸騒ぎ
「もういいよね。あたし戻るから。」
「待てよ。ヤシロさん!」
あたしはもう話すこともないよ。
構わず教室に戻った。
黒板、始めなきゃ。朝のうちにきれいに消しておく予定だったのに。
後ろ黒板を見ると、ロードくんがもう、朝の続きの作業を始めていて、椅子に乗り固く絞った雑巾で黒板のチョークの粉をきれいに拭き取ってくれていた。
「ごめんね、あたしがやってなかったから。」
「ううん、僕が朝出て行っちゃたから。ごめんね、ヤシロさん。」
業村くんがまた来た。
「ちょっと来て、賽ノ宮。」
「業村くん、ロードくんは今からあたしと黒板アートの制作するのよ。後にしてよ。」
また、あたしたちの邪魔する気なの?
「5時間目は男子は剣道だから昼休みの内に用具準備しとかないといけないんだ。人が足りない。仕方がないだろ?授業準備が優先だ。来て手伝ってくれ。」
「・・・・・わかった。業村くん。ごめん、ヤシロさん。残りは放課後に。」
ロードくんは椅子から降りた。
「うん、あたしが続ききれいに拭いておくから。」
ごめんね、ロードくん。あたしが朝出来なかったから。
今日は本当になにもかも上手くいかない日だわ。
あるよね、ついてないこういう日って。
あたしはひとりで黒板をきれいにして、定規で計ってメモリをつけてみたり多少は描き始めとこうと思ったけれど、ロードくんがいないとやっぱ不安で描き出せない。
やっぱり続きは放課後だわね。
あたしは未だ何も描かれていない黒板を見つめて落ち込んだ。
くちびるを人差し指でなぞってみる。
ああ、人生でたった一度のあたしの・・・・・
ああーん!神様ー!あれはなかったことにして!
あんなの全然違うから!
シチュエーションが、雰囲気が、肝心の王子様が違うでしょ!
せめてあれが、違う人だったらよかったのに。
ロードくんとか。
はぃやっ?
あ、あたし何考えてんのよ?
ロードくんとあたしが・・・・!
ロードくんのあの繊細な指があたしのほほに触れてそれから・・・・?
あ〰️〰️ばかばかっ!いやーっ。恥ずかしいってば!やめてー!
誰かあたしを止めてぇー!
「・・・・・ヤシロ、大丈夫?昼に変なもの食べたんじゃない?」
「・・・・・しっ、黙って見ていろ、リア。この百面相は面白い。」
いつの間にかあたしの左右で、リアとふうらちゃんがあたしの様子をじっーっと見ていた。
いやーん!あたしは超恥ずいじゃないのよ!
何とか違う話題を振って誤魔化さなくては!
「あー、5時間目の準備しなきゃねー。えーっと体操服はっと・・・・」
「・・・・・マジ大丈夫?5時間目は男女とも教室で保健だよ。体操服はいらないわよ。」
リアが残念そうにあたしを見た。
「・・・・・・うそ。」
あたし今日は考え事ばかりしてうすぼんやりしていて・・・・・
じゃあ、さっき業村くんとロードくんは何しに行ったの?
業村くんの勘違い?ロードくんも揃って?そんなのまさかだよね。
業村くん嘘ついた?
ロードくん、騙されてついてった?
それとも・・・・・わざと?
今、二人はいったい何をしているの?
あたしの胸がざわめく。




