My recollection of that day is vivid〈ロード〉
2年生に進級したあの日。
昇降口に張り出されたクラス分け表。
『向岸ヤシロ』
僕は同じクラスに彼女の名前を見つけた。
嘘だろ?
僕は去年の事を思い出していた。
彼女に部室の前で『賽ノ宮ロウド』のことを尋ねられた時のこと。
彼女があの時の僕のこと覚えていたら僕が嘘を言った事がばれてしまう。
そして彼女は僕を見てさぞかしがっかりしてしまうことだろう。
僕は新しい教室に行き、張り出された席順を見た。
嘘だろ?・・・これ2回目。
列の一番後ろの僕の席の前が向岸ヤシロさんだ!
僕は絶体絶命。
後一つ席がずれていれば前と後ろで離れられたのに。
僕は緊張しながら教室に入り自分の席を見つけた。
彼女はまだ来ていない。
向岸さんはいつ来るんだろう?
どうしよう、やばい。どうしよう。
僕が僕だと彼女が知ってしまう。
その時、向岸さんは僕を見てなんて言うだろう?
僕は持ってきた荷物を片付け終わり一番後ろの席に座ってそわそわと落ち着かない。
ぼちぼち人がやって来るけれどまだ半分も登校してきてない。
僕の前の席の机の上にいきなり荷物がドサッと下ろされた。
「おはよう!賽ノ宮くん。」
向岸さんだ!
僕の名前を呼んだっ!なんで?
僕を笑顔で見てる。
僕をからかっているのかもしれない。
落ち着け!僕。とにかく返事だ。
「あっっ、おはよう。えっと、向岸さん。」
僕は彼女の顔を見る。
向岸さんは自分の椅子に横向きに座りながら僕の方を見て言った。
「よろしくね。あたし、このクラスに友達いなかったんだよね。だから仲良くしてね。あたしのことは向岸さんじゃなくてヤシロでいいよ。」
「えっっ!」
嘘だろ?・・・これ今日3回目。
名前で呼んでいいって?
僕が君のことヤシロって呼んでいいの?
それに向岸さん、去年僕が僕じゃないってごまかした僕のこと覚えてなかったみたい?
僕と部室の前で話したと覚えてないんだ?
・・・・・当たり前か。
モブ以下の目立たない男子の僕。
彼女は座席表で僕のこと分かったんだね。
彼女が僕に向ける笑顔におたおたしてる僕はろくろく返事ができなくて・・・・・
向岸さんがせっかく話しかけてくれたのに、僕がキョドってたから・・・・・呆れて前を向いてしまったじゃないか!
僕はなんてお間抜け野郎なんだ!
ダメだ。せっかく彼女から話しかけてくれたのに。
最初が肝心だっていうのに僕はなんという唐変木!
ここで取り返さなければ。今ならばまだ大丈夫だ!
すっかり僕に背中を向けてしまった向岸さんの背中を恐る恐るつんつんした。
僕、向岸さんの背中に触ってしまった!
・・・・シカトされたらショックだな。
彼女は普通に僕に振り向いてくれた。
「あの・・・・・ヤシロさん。じゃ、嫌じゃなかたらボクのことロードでいいよ。」
「・・・・・ふふっ、じゃあロードくん。これからよろしくね。」
「こちらこそ。ヤシロさん。」
ーーーヤシロさんとロードくん。
いやっほう!
ヤシロさん・・・・なんて。今日から彼女をそう呼ぶことになるなんて。
嘘だろ?・・・これ、今日何回目だっけ?
思い出す。
鮮明な記憶のままに。
あの日の僕。
あの始まりの日のこと。
今、目の前に座っている君はほんとは僕の妄想なんじゃないかってちょっぴり疑いながら。
僕なんかには似合わない素敵な君を目の前にしながら。




