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まだ未完、だから夢中に迷妄中  作者: メイズ
第1章 トラップのゴシップでスリップ
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意外なつながり

 次の日の朝、永井の代わりに副担の佐藤先生が来た。


 みんなざわざわ。


「永井先生は他の仕事があるので朝だけ僕が代わりをします。」


 まるでお兄さんみたいな先生。ちょっと人気タレントの誰かさんに似てるかも。


 あーあ、担任こっちだったら良かったのに。


 リアもおんなじ気持ちだったらしい。ちょっと振り向いてあたしに口パクで『やったねー!』と言った。


 あの矢筒の恨みは健在だ。


 でも、永井っち、いったいどうしたんだろう?


 そういえば牧野さんもまだ来ていないけれど・・・・



 佐藤先生は出席を確認すると、今日の連絡事項を読み上げた。


 朝のSHRはあっという間に終わった。


 時間余ってる。



 さっそく佐藤先生の回りに数人の女子生徒が集まった。


「先生ー!永井はどうしたのぉ?」


「こらこら、永井先生だろ?」


「だってぇー、いいじゃん。佐藤先生がこのままずーっと担任になってぇー。」



 教室前方は楽しげに盛り上がっている。



 今までここにはなかった光景だね。


 あたしはその間に昨日の放課後の出来事をリアとロードくんに教えてあげた。


 リアが牧野さんの荷物のない空いてる机を見る。


「ふーん、そんなことあったんだ。牧野さんもいないとなると永井っちはその事で遅れているのかもね。」


 同じく、ざわめきの中にひとつだけ取り残された席に視線を向けたロードくん。


「そんなことが・・・・。僕は去年は牧野さんと同じクラスだったんだ。毎日見てたけど彼女のは地毛だよ。間違いない。同じクラスだった人はみんな知ってるし、去年の担任の先生だってそれは認めていたのに・・・」


 へぇ。ロードくんと牧野さんはおんなじクラスだったんだ。



 SHR終了のチャイムが鳴った。


 佐藤先生は数人の女子生徒に惜しまれつつ教室を後にした。


 すれ違いに佐藤先生に会釈して牧野さんが登場した。



 彼女の髪は黒くはなっていない。



 そりゃそうよね。彼女が永井っちに屈して黒く染めるなんてありえないよ。


 牧野さんは廊下側隅の列の自分の席に荷物を置くと窓際前から2番目のふうらちゃんの席まで行った。



 牧野さんとふうらちゃん。


 どういう関係なの?


 去年は違うクラスだったはず。リアが言ってた。




 牧野さんの横顔には微笑みが浮かんでる。


 牧野さんて、とてもキレイ。


 あたし、笑った顔、初めて見たかも。


 彼女はクラスでは大抵はひとりでいるけれどもひとりなのにいつもとても忙しそうなの。


 ケータイをいつもいじっているし、お昼休みなどはささっと教室からいなくなってギリギリに教室に戻ってくる。いったいどこで何をしてるのやら謎。


 噂では彼氏と二人きりで過ごしてるとか、素敵なスタイルを保つためランチは食べないでひとり隠れてピラティスしてるらしいとか。便所飯してるという噂まであるけど、それは心無い人のデマだと思う。


 お昼休み終了時には余裕ぶって澄ました顔で席に戻ってくるけど直前までダッシュで戻ってきてることみんな知ってるよ。


 まあ、そんなところがかわいいって評判だし、近寄り難き人ながらも彼女が陰では人気を獲ている秘密かもね。



 お昼の時間になった。


 ロードくんは黒板アートがきっかけでお友だちが増えたみたい。


 今日は男子4人グループになってお弁当食べるのね。


 あたしはリアとふうらちゃんと3人で。


 あたしとリアの机をくっつけてその横に椅子を持ってふうらちゃんが来る。


 あたし、今朝のことふうらちゃんが次第知ってるんじゃないかって気がしてる。


 さりげなく聞いてみちゃおうかな?


 だってあたしは昨日の事件を目撃してた生き証人の一人だもん。


 結末だって気になるよ。



 ふうらちゃんがお弁当箱を開けるとあたしとリアに差し出した。


「僕のウインナベーコン、一個づつリアとヤシロにあげる。取って。」


「わーい!じゃあ、あたしのおかず、好きなのあげる。取っていいよ。」


 ふうらちゃんは冷凍食品を温めただけのオムレツを選んだ。


 リアはいつも御用達のパンを見せた。


「あたしは買ってきたパンだからな、じゃあこの中に入ってるデコキャラシールをあげよう!さて、今日は何がでるかなー?」


「・・・それに二言(にごん)は無いだろうな?リア。」


くノ一(くのいち)に二言は無しっ!」


 リアはさっそくパンの袋を開けてシールを取り出す。


 手にしたとたん顔色が変わった。


「こっこれは・・・・・!私のお気にのイーブイ!しかも幻のラッキーシールバージョン・・・・」


「悪いな、リア。」


 さっとふうらちゃんに奪われた。


「くぅっ!運のいいやつめっ!ここで運を使い果たすがいい。」


 リアが悔しそうに言う。


 普段は表情筋をほぼ動かさないふうらちゃんだけど、今回はちょっと口角上がってる。


 ご機嫌良さそうな今、聞くチャンスかも。


「ねぇ、ふうらちゃん。永井っちと牧野さんって結局どうなったか知ってる?」


「・・・ああ、今朝のことか。気になるなら話してもいいけど。」


 ふうらちゃんはベランダを見た。


 あたしとリアは顔を見合わせた。


 秘密の話はベランダで。他の人には聞かれないように。




 昼食を食べ終わったあたしたちはさっそく3人でベランダに出た。


「まあ、結局は牧野家は地元の有数の名家ってことだ。この落花生(おかき)市に多大な影響力を持っている一族でね。のばらはボクの小学校の時からの知り合いだ。」


「そうだったの?友だちだったの?私知らなかったわ!」


 リアが驚いてる。


「ボクものばらもいわば一匹狼だ。ベタベタ付き合うことはない。友だちというより知り合いだ。」


 そうね、二人が教室で話してるの見たの今日が初めてかも。


「のばらの家は裕福で一族で公益社団法人やNPOも数々運営している。じいさんの代から地元での社会福祉活動や慈善事業も積極的に行って来た。地元で権力と信用を得る近道だから。そして今がある。」


 ふうん、現実でチートになるのは地道な努力と対価と時間がいるのね。


 ふふっ、リアルは厳しいね。


「地元の文化財保護と子どもたちの教育のためにとこの落花生(おかき)市にも多大な寄付金を出していると聞いている。さすれば牧野家に忖度(そんたく)も働く。その牧野家の娘に一介の嘱託教師が太刀打ちできるとでも?」


「ふーん、結局牧野さんはお嬢様だったってわけね?」


「今朝は彼女のじーさん、一族のボスの大鏡(だいきょう)氏までここに訪れて校長に会ったらしい。彼も髪が赤い。白髪と赤い髪が細かく入り交じり混在している。あの二色の混在具合を薬剤で作り出すのはほぼ不可能だ。残りわずかな面積だが確認はできる。」



 牧野さんの髪色は遺伝で地毛だっていう生き証人だね。しかもラスボス。


 それで永井っちと牧野さん朝いなかったんだ・・・・




「だからといってこの件はここでは終わらない。のばらはしつこいから。それにのばらのじーちゃんまで出てきてしまったからには・・・・・」


 ふうらちゃんは小さな声でつぶやいた。



 どういうことなのかしら?




 帰りのSHRでは永井っちも牧野さんも何事もお互い無かったのような態度。


 お互いシカト?


 まあとにかく収まってよかったってことかな。










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