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愛、シテ、る  作者: トキン
8/12

11月

「好きな人がいるんだ」

 毎月のようにこの言葉を言っている気がする。

「結果は?」

 友人の問いに、黙って笑う。

 それだけで、俺の意図が伝わったようだった。





 い、く、じ、な、し。と口の動きがそう言っている。まだ何も言っていないのに、一か月経っても告白ができていないことがバレたようだ。以心伝心というのも考えものだな。

「言い訳をさせてくれ」

「いいだろう」

「タイミングがなかったんだ」

「…………」バシッ

 無言のままにチョップされた。いつも通り本から目を離さないくせに、とても正確だった。

「痛いな、叩くことはないだろ」

「言い訳にもなっていないようなことを言ってたからだ」

 まあ、確かに。




「タイミングなんて、最初からないんだよ。自分から作らなくちゃ……」

 説教が始まった。かなり長い。

「ちなみに、最近何の本を読んだ?」

 気になったから聞いてみた。

「いまいちな恋愛小説」

 鬱憤を俺で晴らそうとしてる?

「そんなことよりもな……」

 まだ続きそうだった。







「あ、もう夕焼けが見えるぞ」

 窓から見える、空の奥の方がオレンジになっていた。最近は日が暮れるのが早いから。

「ああ、もうそんな時間か」

 いつも変えるより少し早い時間だけど、帰り支度を始めた。こいつにしても、説教のやめ時を見失っていたんだろう。

「帰るか」

 二人とも、無駄に疲れていた。


 本当は、やろうと思えばすぐにできた。負け惜しみとかじゃなくて、本当に。

 でも、俺の気持ちを優先するより、変わりたくないという思いの方が強かった。まだ、もう少しだけ。

 先に教室から出て行った友人の背中に、黙って語り掛ける。心配しなくても、やり遂げてみせるさ。と。

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