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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
83/948

#81

それから行きつけのファミリーレストランで食事(しょくじ)を終えたミックスたちは、また宿題(しゅくだい)の続きをやりに図書館(としょかん)へと向かっていた。


前を歩くジャズとニコの(うし)ろで、ミックスはニヤニヤとエレクトロフォンの画面(がめん)(なが)めている。


「よし、これでなんとか調理(ちょうり)器具(きぐ)が買えるぞ」


ミックスはずっと購入(こうにゅう)しようとしていた調理器具があったのだが、いろいろあって何ヶ月も買えないでいた。


しかし、なんとか出費(しゅっぴ)(おさ)えることに成功(せいこう)し、今月こそ手に入れられると一人ほくそ笑む。


そんな不気味(ぶきみ)に笑っている彼を見て、ジャズとニコは少し引き気味(ぎみ)だ。


「そんなに必要(ひつよう)なものなのかしらね。もう十分(じゅうぶん)そろっていると思うけど」


ジャズがいうようにミックスの住む(りょう)の部屋には、普通(ふつう)料理(りょうり)をするぶんには何の問題(もんだい)ないくらいの調理器具がそろっている。


包丁(ほうちょう)、まな板、ボウルにザル。


さらに(なべ)、フライパン、やかん、フライ返し、ヘラ、ピーラー((かわ)むき器)、缶切(かんき)り、計量(けいりょう)カップと、高校生の一人()らしには使う必要のなさそうなものまであるのだ。


ニコもジャズの言葉にコクコクと(うなづ)いていると、ミックスが彼女たちの後ろから声を張り上げてきた。


ジャズたちは全然(ぜんぜん)わかっていない。


たとえば包丁一つとったっていろいろと種類(しゅるい)がある。


魚をさばくときは出刃(でば)包丁で、刺身(さしみ)を切り分けるときは(やなぎ)刃包丁と、ミックスは材料(ざいりょう)によって用途(ようと)(ちが)うことを力説(りきせつ)(はじ)めた。


ジャズとニコはそんな彼を見てウンザリした顔をしている。


ミックスは料理のことになると話が長いのだ。


「そりゃ三徳(さんとく)包丁は便利(べんり)だけどさ。より美味(おいし)しいものを作るには、同じ包丁で妥協(だきょう)してちゃダメなわけよ」


「うわ~メンドクサ……」


ジャズが(つぶや)くようにいうと、ニコも同意(どうい)するようにメェーと()いた。


その後もミックスの調理器具への(ねつ)のこもった話は続いていたが、ジャズたちはほとんど相手をせずに図書館へ歩いていった。


そして、図書館までの道の途中(とちゅう)公園(こうえん)があり、ミックスたちは自動(じどう)販売機(はんばいき)で飲み物を購入しようと立ち()ることに。


「だいたい鍋だってさ」


「いやもういいから……。あんたのその情熱(じょうねつ)をさ。少しは勉強(べんきょう)のほうに(まわ)せないの?」


「俺としては同じくらい努力(どりょく)しているつもりなんだけど……」


「人には向き不向きがあるってホントね……」


ガクっと(かた)を落としたミックス。


たしかにこいつは真面目(まじめ)にやっていると思ったジャズは、(はげ)まそうにも何も言葉が出てこなかった。


彼女がいい加減(かげん)話題(わだい)を変えようとしていると、公園の花壇(かだん)の中で誰かが(よこ)になっているのが目に入る。


今日は風が気持ちいいので、どこかの誰かが昼寝(ひるね)でもしているのかと(ちか)づいてみると――。


「あれは……女の子?」


黒髪(くろかみ)幼女(ようじょ)(ねむ)っていることに気が付く。


ジャズはミックスとニコに言い、すぐに幼女を花壇から出して(そば)にあったベンチへと寝かせた。


「この子、迷子(まいご)かな?」


「それにしては(ふく)(かみ)もボロボロだけど」


幼女の身に付けていた服は、安っぽい布切(ぬのき)れを羽織(はお)っているだけで、髪は()ばしっぱなしで前髪で目まで(かく)れてしまっており、なんだか育児(いくじ)放棄(ほうき)された子のような風貌(ふうぼう)だった。


ベンチに寝かされた衝撃(しょうげき)で気が付いたのか。


幼女はゆっくりと体を起こす。


「あッ目を()ましたよ。ねえどうしてこんなところで寝てたの? お母さんは一緒(いっしょ)じゃないの?」


ジャズは目を覚ました幼女にいろいろと(たず)ねたが、彼女は(ふる)えながらその身を(ちぢ)めている。


だがそれでもジャズは質問(じつもん)を続け、幼女の名前、年齢(ねんれい)、家の場所、(かよ)っている学校はあるかなどを()いたが、(おび)えて何も(こた)えてはくれない。


(こま)りきったジャズに退()くようにいったミックスは、(おだ)やかな笑みを浮かべながら幼女の前に(かが)んだ。


なんでも彼が兄や姉に教えてもらった話によると、小さな子と会話(かいわ)をするときは、ちゃんと目線(めせん)を合わせないとダメなんだそうだ。


「俺はね、ミックスっていうんだ。キミは? 名前いえるかな?」


幼女はミックスを見るともう震えが止まっていた。


どうやら彼の兄と姉の話は本当だったようだ。


だが、もう怯えている様子(ようす)はなかったが、それでも困ったような顔をして答えられないでいる。


そのとき、ジャズが幼女の羽織っている布切れに、何か名札(なふだ)のようなものが付いていることに気が付いた。


「ねえミックス。これがこの子の名前なんじゃない?」


「そっかまだ名札を付けるような年齢なんだね」


二人が幼女の名札に目を向けていると、幼女はニコのほうをボーと(なが)めていた。


何か気になっているようだ。


そして、名札にはこう書かれてあった。


「この子の名前は……サービス?」

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