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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
82/948

#80

強い陽射(ひざ)しにもかかわらず、(すず)しげな風が街の中に()いていた。


そんな街を歩く日傘(ひがさ)をさす女性や、白衣(はくい)姿(すがた)研究員(けんきゅういん)たちも、吹く風を感じて(みな)気持ちよさそうにしている。


風が(つめ)たくなってきたということは、夏もすでに終わりかけていることを意味(いみ)する。


秋が(ちか)づく景色(けしき)の中、ミックスはぐったりとした表情(ひょうじょう)で歩いていた。


「はぁ~やっとお昼休憩(きゅうけい)だ……」


その男子高校生が手には学校指定(してい)(かばん)があり、パンパンに(ふく)れている。


「あんたが悪いんだよ。もう夏休みも終わるってのに、ほとんど手をつけていないんだから」


ミックスの(となり)には(べつ)の学校に(かよ)う女子高生――ジャズ·スクワイアがいた。


どうやらミックスが夏休みの宿題を終わらせておらず、彼女が手伝っていたようだ。


「うぅ、ジャズも一緒(いっしょ)にやってくれれば早く終わるのに……」


「それじゃ意味がないでしょ。あんたの宿題はあんたが()いてこそ意味があるんだから。それともなに? せっかくわかんないとこ(おし)えてあげているのに、あたしなんていらないと?」


「いえ、ひじょ~に助かってます……。ジャズさんがいないと終わりそうにありません……」


「わかればよろしい」


そんな二人の後をついて行く電気(でんき)仕掛(じか)仔羊(こひつじ)ニコは、(おこ)られているミックスを見て(たの)しそうに()いている。


ミックスたちは、こないだの事件(じけん)半壊(はんかい)した図書館が直ったことを聞き、宿題をやりにいっていた。


今はちょうどお昼時(ひるどき)となったので、休憩(きゅうけい)がてら昼食(ちゅうしょく)()ませようと外へ出ている。


そして、もちろん勉強(べんきょう)を教わっているミックスは、立場的(たちばてき)にジャズとニコの(ぶん)もおごることになっていた。


「あッ、ここカフェなんてできてたんだ。ねえ、ここにしない?」


ジャズが声を(はず)ませていった。


彼女はストリング帝国(ていこく)から来ている留学生(りゅうがくせい)だ。


帝国にはカフェというか外食(がいしょく)するような文化(ぶんか)がない。


それが当たり前だった彼女だったが、このところ後輩(こうはい)のウェディングやクリーンといろいろな店へと行っているのもあって、すっかりオシャレなカフェが好きになっていた。


だがミックスは、カフェの前にあるメニュー(ひょう)を見てからエレクトロフォンを出し、手持ちのお金――残高(ざんだか)確認(かくにん)する。


(なんだよこの店は!? コーヒー一杯(いっぱい)(おれ)が作る料理(りょうり)三食分の値段(ねだん)もするじゃないかッ!)


ミックスは、(こころ)の中で(さけ)びながらエレクトロフォンをポケットへとしまうと、顔を引きつらせてたまにはカフェ以外(いがい)もいいんじゃないといった。


彼は、ジャズがウェディングやクリーン二人と散々(さんざん)カフェにいっていることを知っていた。


だからこういっておけば、けして店の料金が高いから(いや)だという本音(ほんね)には気付かれないと考えたのだ。


「それもそうね」


「う、うん(よかった……)」


「うん? なんかニコがここが()いっていってるよ」


ニコが手を()ばしている(さき)には、ゴージャスな外観(がいかん)をした気品(きひん)のあるレストランが()っていた。


誰がどう見ても高校生が入るような店ではない高級(こうきゅう)店だ。


どうやらニコは、その店のメニュー表にある旬野菜(しゅんやさい)のコースが気になっているようだ。


ミックスはそんなはしゃいでいるニコをガッチリと(つか)み、ジャズに聞こえないように耳打(みみう)ちする。


「ねえニコ。俺は別にロボットだからとか食えなくてもいいとは言わないけど……。いくらお前が(めす)だからって、こういう店のチョイスはどうかな~」


ニコはミックスの鬼気(きき)(せま)る顔を見て、(なみだ)ながらに高級店を(あきら)めることを承諾(しょうだく)した。


「どうしたの? (きゅう)にニコを()きしめて?」


「い、いや~、ニコがやっぱりこういう店はやめようってさ。そうそうファミレスがいいって! いつもいくとこがやっぱ落ち着くみたいだよ。なあ、ニコ」


ジャズからは見えないように(にら)まれたニコは、(ふる)えながら(うなづ)くしかなかった。


そんなミックスとニコを不思議そうに見ていたジャズ。


だが彼女は、ニコがそういうならと言い、いつも学校帰りに寄るファミリーレストランへ行くことに決定(けってい)した。


ミックスはホッと(むね)をなで下ろし、ニコを抱いたまま意気(いき)揚々(ようよう)と歩き始めた。


「さて、ではニコが行きたがっているファミレスへ行きましょうかッ!」


ジャズはなんだか元気がなくなってしまったニコと、(きゅう)にハキハキとし出したミックスを見てまた不思議そうにしていたが、気にせずに彼の後について行く。


「いや~俺はどこでもよかったんだけどね~。ニコがそういうならしょうがないよね~」


「でもさ、いつものファミレスならそんなにカフェとメニュ―変わらなくない? 別にさっきの店でもいいんじゃ……」


「いやいやそこはニコの(のぞ)みを(かな)えてあげなきゃッ! さあ、(まよ)わずファミレスへ直行(ちょっこう)だ!」


「あッ! ちょっと待ちなさい⁉ もう、急に走るなッ!」


そして、結果はミックスの望み通りとなり、彼のおごる金額(きんがく)はなんとか(おさ)えられたのだった。

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