#781
――ブレイクがラムブリオンに追い詰められているとき。
いつまでも戻らない彼に、ソウルミューは苛立ちを隠せないでいた。
「おい、いくらなんでも遅すぎないか?」
薄暗い空間をウロウロしていたソウルミューが、ブライダルとギブバースに声をかけた。
だが、ブライダルはあくびをしながら問題ないだろうと答える。
「心配し過ぎだって、大丈夫だよ。なんたってブレイク君は私に勝った男なんだから。つーか~、むしろクソ兄貴が試練を乗り越えられたほうが奇跡だよ~」
「お前は……いちいちオレをイラつかせないと気が済まねぇのかよ」
プルプルと身を震わせて拳を強く握るソウルミューを見て、ブライダルは二ヒヒとまるで小馬鹿にするように笑う。
一方ギブバースのほうは、そのまだ幼い顔を強張らせていた。
「どうやら大丈夫ではなさそうじゃぞ……」
「えッなんで? ギブバースちゃんにはブレイク君がどうなっているのか見えてんの?」
もはやブライダルの態度に慣れたのか諦めたのか。
ギブバースは“ちゃん”付けのことなど気にせずに返事をする。
「ブー坊の魂が酷く弱っておるのじゃ。このままでは神具に飲み込まれてしまう……」
そう言ったギブバースは説明を始めた。
ブレイクが今どういう状況なのかはわからないが、その魂の輝きが急速に失われている。
今のペースで弱っていくと、ブレイクの魂は神具の一部にされ、二度と意識は戻らなくなってしまう。
「いくらクリアの息子といえどまだ十代の少年……。触れられたくない傷をえぐられれば当然こうなるかのぉ……」
「歳は関係ないって。だって私、ブレイク君よりも年下だよ」
「お主は別じゃ。これまで話していてわかったが、お主の魂は外部の干渉を受けても変化がないのじゃからのぉ」
ギブバースがそう言うと、ソウルミューが口を挟む。
「ようは頭がおかしいんだろ、こいつは」
「おいッそこは褒めろよッ! 強靭な精神を持った者とかなんとか言ってさッ!」
声を張り上げたブライダルだったが、すぐに機嫌を直してギブバースに声をかける。
「それよりもさ。そのブー坊って可愛いね。私も呼んじゃおっかな~」
「やめとけ。ブレイクのヤツにものすげぇ~イヤ顔をされるだけだ」
「それ、いいね。面白そう」
「性格わるッ! それよりも大丈夫なのかよ?」
ソウルミューがギブバースに訊くと、彼女はムムムと呻いていた。
「……ブー坊を信じるしかない。わしらにできることは何もないのじゃからな……」
「なんもしてやれねぇのかよ……」
ソウルミューが力なく呟くように言うと、ブライダルが彼に言う。
「なに急にお兄さんぶってんだよ。これまでずっとゾンビみたいに呆けて我関せずだったくせに~。今さらお兄さんポジション狙ってんなら無駄だよ~。あんたは元々そんなキャラじゃないしね」
「うっせぇッ! そんなじゃねぇよッ! ただ……」
ブレイクはゴクッと息を飲んで言葉を続ける。
「ここでブレイクが失敗したら……もう二度と大災害もエレメント·ガーディアンも止められねぇだろ……」
ソウルミューがそう言うと、ギブバースはさらに顔を強張らせた。
だがブライダルのほうは、変わらずにヘラヘラと笑っていたままだった。




