#730
サーベイランスは黙って聞いている皆に話を続けた。
前回の戦いで、マシ―ナリーウイルスの適合者、奇跡人、呪いの儘らで数人で挑んでも倒せなかったイード·レイヴェンスクロフトを、現在の戦力でどうにかできると思っているのか。
エレクトロハーモニー社――ラムズヘッドから多少の武装は手に入れたものの、そのときでも敵わなかったというのに、この人数でイードと戦うのには自殺行為だと。
彼の言葉を聞き、ジャズが口を開く。
「でも、イード·レイヴェンスクロフトを放って置けない」
「オレもジャズに賛成だ」
ブレイクがジャズに続くと、サーベイランスは呆れた様子で返事をする。
「両目の視力を失い、神具もないお前が戦えるのか? オルゴー王国にいたろくに戦闘経験のない兵隊とはモノが違うんだぞ?」
「ちょい待ち。あんた、私がいることを忘れてない?」
「俺もいるぞ」
サーベイランスに、ブライダルとラヴヘイトが口をそろえて言うと、彼はその小さな三本指の両手を上げてため息をつくような仕草をする。
首を左右に振っていかにも呆れている様子だ。
「お前たちが強いのは十分にわかっているが、相手はイード·レイヴェンスクロフトだぞ? せめてアン·テネシーグレッチが来るまでは動かないほうがいい」
「サーベイランス。あんたの言い分はわかるけど、ここは譲れないよ」
「譲れないだと? 感情で動くんじゃないといつも言っているだろうがッ!? 確実に敵を倒せる判断ができないうちは手を出すべきじゃないッ!」
ジャズの返答に、サーベイランスはめずらしく声を張り上げた。
だが、ジャズは引かない。
「もう時間ないんだよ……。帝国とオルタナティブ·オーダーの本格的な戦闘が始まっちゃうんでしょ? 今ここでイード·レイヴェンスクロフトを倒しておかないと、その機会を失っちゃう」
「わかっていて勝率の低い戦いをするのは愚か者がすることだぞッ! 戦うことは認めるにしても、せめてアン·テネシーグレッチが来るまで待てッ!」
「だから時間がないんだよッ! わかってサーベイランスッ!」
「いいかッ! 私はお前と世界の混乱を収めると決めたんだ! それをこんなことで終わらせてたまるかッ!」
激しい言い合いが始まる。
ジャズもサーベイランスも自分の意見を引っ込めるつもりない。
だが、次のブレイクの発した言葉によって、二人の空気が変わった。
「おい、言い争っている時間もねぇんじゃねぇか? サーベイランスの言っていることもわかるが……大丈夫だぜ。何故なら奇跡人、呪いの儘がそうなように、奴も再起不能になっているからな」
「再起不能だと? では、イード·レイヴェンスクロフトも何かしら失っているのか?」
訊ねてくるサーベイランスに、ブレイクは答える。
「あぁ、イード·レイヴェンスクロフトは両腕を失っている」




