#71
――黒い戦闘服に身を包み、防弾防刃ベストを着た者たちが集まっている。
彼らは、このバイオニクス共和国の治安を維持する組織――監視員だ。
現在彼らは、突然起こった無差別襲撃を阻止するために行動していた。
しかし、銃火器の使用は上層部から許可が出ず、特殊合金で造られたライオットシールドや発煙弾などで対処するしかないのが現状だ。
「警備ドローンのほうはまだ来ないのかッ!?」
現場を指揮する監視員の隊長、ブラッドが叫んだ。
部下たちが俯いていると、そこへ住民と怪我人の誘導を終わらせた銀髪の女性がやってくる。
「ダメみたい。本部からは避難誘導のみで、鉄の確保をする必要はないっていってるわ」
彼女は監視員の副隊長エヌエー。
ブラッドはエヌエーの言葉を聞くと、自分の坊主頭を掻きながら顔を強張らせる。
エヌエーがいった鉄とは、ブレイク·ベルサウンドのことだ。
ブレイクは共和国からハザードクラスという強力な能力を持つ者に認定されており、国の科学者たちはそんな彼のことを鉄というコードネームで呼んでいる。
「こっちはただでさえ人員が少ないってのにッ!」
ブラッドが今いった通り――。
監視員の人員は、本部にいる者を含めても三十人にも満たない。
それは基本的に警備ドローンなどの機械ロボットに頼っているからだった。
大声をあげるブラッドへ、部下たちが電磁波放出装置ーーオフヴォーカーの使用許可を願い出た。
オフヴォーカーとは、突撃銃のような外観をしたストリング帝国のインストガンとほぼ同じ性能のものだ。
「バカ野郎ッ! いくら相手がハザードクラスだからって、まだ十五、六くらいの子どもだぞッ!」
ブラッドは部下たちに怒鳴り散らし、それを拒否した。
この非常時にそんな甘いことをいっている場合ではないのだが。
「もうっブラッドたら、いちいち大きな声を出さないでよ。みんなだって彼を傷つけたいわけじゃないんだから」
文句を言いつつも、エヌエーはそんなブラッドを見て嬉しそうにしていた。
それは彼女も同じ気持ちだったからだ。
二人を見ていた他の隊員も、エヌエーと同じように笑っている。
「わかってんだよ、んなこぁたな。よし、じゃあこっちはこっちで勝手にやんぞ」
「まさかあの子を止めるつもりッ!?」
「上層部の連中が動かないんなら現場のいる人間がやるしかないだろ。おい、お前らはそのまま住民を避難場所へ誘導してくれ。あとは俺一人でやる」
ブラッドの指示に隊員たちは反対した。
いくらなんでもハザードクラスを相手に、たった一人で止められるはずがない。
ここは全隊員を集めてぶつかるべきだと。
皆が口々にいう。
「それじゃ誰が住民を守るんだよッ! いいから俺の言う通りにしろ!」
再び大声をあげたブラッド。
だが、隊員たちは誰一人としてその場を動こうとはしなかった。
そんな彼らを見たブラッドは、また自分の坊主頭を搔き出す。
「別に鉄と真っ向からやり合おうってわけじゃねえんだ。ヤバくなったらズラかるから安心しろよ」
隊員たちはブラッドが無茶をしないということを理解したのだろう。
その言葉を聞き、ようやく動き出した。
「はぁ……ようやく行ったか」
「みんなブラッドが心配なのよ」
「……って、おいエヌエー。なんでお前が残ってんだよ。さっさとあいつらと一緒に行け」
「人数的に、あれだけいれば問題ないでしょ? あたしもブラッドと一緒に行くからね」
「ったく、お前のそういうとこ……。昔からぜんぜん変わらねえなぁ……」
「それはお互い様よ」
そしてブラッドとエヌエーは、ライオットシールドを持ってブレイクがいるところへと走り出していった。




