#55
ジャズとウェディングは、しょうがなく学校へ行く途中にあるパン屋で朝ごはんを買うことに。
二人とも購入したパンを食べながら登校する。
「こうやってパンをくわえながら歩いていて、誰かとぶつかったりしませんかね?」
「しないでしょ……。なにいってるのよウェディング」
「知らないんですか? 遅刻するトースト少女は、通学中に衝突した少年と恋に落ちるっていう都市伝説」
「あたしがいたストリング帝国にそんな伝説はないわよ」
ジャズは、ウェディングがいうバイオニクス共和国の都市伝説の話を聞いて辟易する。
そんな都合の良い話があってたまるか。
大体どうしてパンをくわえてぶつかっただけで恋に落ちるのだ。
今となっては自国であるストリング帝国よりも科学技術が発達した国だというの、まだそんな子どもが好きそうな迷信が信じられているのかと。
「なにをそんなに怒ってるんですか?」
「あんたが朝からおかしなカッコするからじゃないの。おかげであたしまで同類と思われたじゃない」
「ダイジョブダイジョブ。ジャズ姉さんは私がどうこう関係なく、すでに目立ってますから」
それからウェディングは、なぜジャズが目立っているのかを話し始めた。
まず彼女が現在和平協定中であるストリング帝国から来た留学生ということ。
さらには電磁波放出装置――インストガンやナイフなどの武器を持って教室に来たこと。
そして、服装の規定に違反し、校則で禁止されているスカートの下にスパッツを穿いていて、それを注意されると委員会にスカートの無防備さを訴えたことなど、あげればきりがない。
「だからジャズ姉さんはハザードクラスの私よりもずっと目立ってますよ。イェイッ!」
「うぅ……文化のちがいのせいだ……。あぁッ! あたしは静かに学園生活をおくりたいのにッ!」
嬉しそうに説明したウェディングの横で、ジャズは頭を抱えて叫んだ。
なるべくことを荒立てずに留学生活を過ごしたい彼女なのだが。
バイオニクス共和国とストリング帝国の文化の違い(というよりはジャズのこれまでの生き方)と、おかしいと思ったことには口を出さずにはいられない性格のため、周囲からは奇異の目で見られてしまっている。
さらに学業や運動も上位の成績というのもあって、留学生というだけではなく、むしろ彼女に注目しないほうがおかしいという状態だ。
ただジャズの中ではウェディングの自分に対する接し方や、自分の意見をハッキリと言わない共和国の国民性に問題があると思っていた。
一番の問題は、そんな自分の価値観を隠さないこのサイドテールの少女の人間性なのだが。
彼女がそれに気がつくことはなかった。
「なにをおっしゃるッ! そんなドタバタなジャズ姉さんがステキなんですよッ!」
頭を抱えているジャズの両肩に自分の両手をポンッとのせるウェディング。
そして、呻いている彼女を押して学校へと向かうのだった。
「朝からこんなモヤモヤしているのもあいつのせいよッ! 全部ミックスのせいなんだからッ!」
「はいッ! 悪いことは全部ミックスせんぱいのせいにしちゃいましょう!」




