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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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5/948

#5

ミックスは気持ちを切り替(か)え、銀行(ぎんこう)へと向かう。


昨日(きのう)に折(お)れ曲(ま)がってしまったキャッシュカードを再発行(さいはっこう)してもらうためだ。


ミックスが通(かよ)う学校の帰り道には、そこら中(じゅう)に色々(いろいろ)なショップが並(なら)んでいる。


その店やビルのほとんどに太陽(たいよう)光(こう)発電(はつでん)システム――ソーラーパネルが設置(せっち)されていた。


そして街中には、警備用(けいびよう)、掃除(そうじ)用などドローンがおり、バイオニクス共和国(きょうわこく)の科学(かがく)技術(ぎじゅつ)がいかに進(すす)んでいるのかがわかる。


「えーと、たしかこの辺(へん)だった気が」


普段(ふだん)はあまり銀行など利用(りよう)しないせいか。


ミックスは散々(さんざん)道に迷(まよ)ったが、なんとか辿(たど)り着いた。


だが――。


「えぇぇぇッ!? すぐに再発行してもらえないんですか!?」


彼の目的(もくてき)は果(は)たされなかった。


ミックスは再発行に必要(ひつよう)なものはすべて揃(そろ)えていったのだが、手続(てつづ)きから約(やく)二~三週間後(しゅうかんご)に自宅(じたく)へと郵送(ゆうそう)するため、この場では受け取れないからだった。


受付(うけつけ)をやっていた人工(じんこう)知能(ちのう)――AIが丁寧(ていねい)に説明(せつめい)をしてくれたが。


ミックスはガックリと肩(かた)を落として銀行を出る。


そしてトボトボと重(おも)い足取(あしど)りで歩きながら、着ている学校指定(してい)の作業(さぎょう)用ジャケットからエレクトロフォンという携帯用電話を取り出す。


「残(のこ)りは五千かぁ……」


ミックスは、端末(たんまつ)から浮(う)かび上がって来る映像(えいぞう)を指(ゆび)で操作(そうさ)しながら、大きくため息(いき)をついた。


家にある食材(しょくざい)は昨日使い果(は)たしてしまった。


あと約(やく)二~三週間は、この金額(きんがく)で過(す)ごさねばならない。


元々(もともと)自炊(じすい)しかしていないが、これでミックスの唯一(ゆいいつ)の楽しみである創作料理も、しばらく我慢(がまん)しなくてはいけなくなった。


「まあ、こんなもんだよね……ハハハ……」


そして、いつもの乾(かわ)いた笑(え)みを浮かべるのであった。


ミックスがそんな様子(ようす)で歩いていると――。


見覚(みおぼ)えのあるミリタリールックの少女が、アンティークショップのグラスウィンドウに張(は)り付いていた。


昨日ミックスの家の中を散(ち)らかしたサイドテールの少女――ジャズ·スクワイアだ。


持っていた銃剣(じゅうけん)には布(ぬの)が巻(ま)き付けてあり、見た目ではわからないようにはしているが、明(あき)らかに目立(めだ)っている。


「なんか昨日はずいぶんと深刻(しんこく)な感じだったのに。あんなところでなにしてんだろう?」


ミックスは少しの間(あいだ)悩(なや)んだが、結局(けっきょく)彼女へ声をかけることにする。


「お~いジャズ。なにしてるの?」


「はッ!? お、お前がなんでこんなところにいるんだッ!?」


ミックスの姿(すがた)を見たジャズは驚(おどろ)きのあまり飛びあがった。


そして、顔を真っ赤にしながら、なにやらよくわからないことを喚(わめ)いている。


ミックスはそんなジャズを無視(むし)し、一体何を見ていたのかとグラスウィンドウへ目を向ける。


そこには、豊(ゆた)かな毛(け)に覆(おお)い尽(つ)くされた仔羊(こひつじ)型(がた)のロボットが飾(かざ)られていた。


「ああ、これが欲しいんだね。ちょっと意外(いがい)だな」


「勝手(かって)なことを言うなッ! あ、あたしはただ見ていただけだし……」


ジャスはそういうと、プイっとミックスから顔をそらした。


その仔羊は、電気仕掛(でんきじか)けのニコと呼ばれるロボットだ。


今から七年前に、アフタークロエと呼ばれるバイオニクス共和国とストリング帝国(ていこく)の戦争(せんそう)が起(お)こる少し前――。


コンピューターの暴走(ぼうそう)による世界壊滅(かいめつ)の危機(きき)があった。


そのコンピューターの暴走を止めたのはアン·テネシーグレッチという女性で、電気仕掛けのニコとは彼女が連れていたペットだ。


世界の救世主(きゅせいしゅ)であるアン·テネシーグレッチの人気もあり、彼女にあやかって儲(もうけ)けようとニコシリーズは量産(りょうさん)された。


だが、現在(げんざい)ではすっかり廃棄(はいき)され、おそらくこのアンティークショップにあるものが、現行(げんこう)である最後(さいご)の一体(いったい)といっても過言(かごん)ではないだろう。


ミックスは、顔を真っ赤にしているジャズへ目を向け、次にニコのことも見る。


昔(むかし)に流行(はや)っただけのロボットだというのに――。


ミックスはこの電気仕掛け仔羊の姿に、何故か懐(なつ)かしさを感じていた。


「よかったら買ってあげようか?」


「えッ……? ホ、ホントにッ!?」


「うん。なんだかこの仔羊をこのままにしておけないって、思ったからさ」

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